【コラム】利用価値がある愚か者たち
民主労働党は先月29日の声明で、「北朝鮮の後継体制について、国民の目線で理解しにくい点があったとしても、北朝鮮問題は北朝鮮が解決すべき問題と見るべきだ」と指摘した。韓国社会については、ほとんどすべての事柄に文句を付ける政党の声明だった。民主労働党の政策研究所はさらに、今月1日に「都合が悪いことが誤ったことだと直接結び付けられては困る。われわれにとって都合が悪いと認識されることが、彼ら(北朝鮮)にはともすると当然のこととして受け入れられることもあり得る点を認識すべきだ」と主張した。民主労働党が韓国と北朝鮮をダブルスタンダードで見てきたのは今に始まったことではないが、あんまりだと言わざるを得ない。
民主労働党が万一、「北朝鮮はもともとそんな体制なのだから、何をしても理解できる」と言うならば、その論理は専制政治を擁護する道へと進むしかない。それならば、党名から「民主」という文字を削除すべきだ。そんな政党を大韓民国憲法が保護すべきかどうか分からない。
今月7日、民主労働党セセサン(新しい世)研究所のパク・ギョンスン副所長は、「金正恩氏は幼くない」とまで発言した。パク副所長は「金正日(キム・ジョンイル)委員長が26歳のときに甲山派事件(反主流派閥粛清)で活躍して以降、党内で政治組織活動を展開した点からみて、現時点(27歳)で金正恩氏が若いとは言えない」とした。パク副所長は「真のリベラルは、容認できないイデオロギーまで包容できる寛容さを持たなければならない」とも語った。同党の蔚山市支部は、「民主労働党はなぜ三代世襲を批判できないのか」と書いたある新聞に購読拒否を通告した。
1990年代初め、金正日世襲体制が固まった際、北朝鮮に近い主思派(主体思想派)の運動家は「金正日氏の血統よりは、その能力を見るべきだ」との論理で、動揺する学生たちを説得した。彼らは94年に金日成(キム・イルソン)主席が死去すると、「昨日は星が沈んだ」などと当時の流行歌の歌詞を吟じた。歌詞の「星」は金日成主席を意味する。現在の民主労働党幹部は、「血統よりも人物」という、20年前と全く同じ論理を三代世襲にも適用している。
このように、北朝鮮の三代世襲は、韓国でリベラルという看板を掲げている人々の正体を示してくれた。彼らの反応は「沈黙」「混乱」「詭弁」「中途半端な批判」に分かれた。
1944年に米国の東洋学者、オーウェン・ラティモアは、ソ連のシベリア政治犯収容所の人権状況に関する実態調査の団長を務めた。あらかじめ準備された脚本通りに動く収容所を見て回ったラティモア氏は、「収容所の官吏(かんり)たちは趣味が洗練されており、収容者の生活は良好だった」と結論づけた。アンドレイ・ランコフ国民大教授は、もともと親ソ知識人だったラティモア氏はスターリンにとって、「利用価値がある愚か者」だったと評価した。当時、米国には「利用価値がある愚か者」が多く存在した。しかし、その「愚か者」たちは、真実が露見した瞬間、その利用価値さえ失った。
鄭佑相(チョン・ウサン)政治部外交チーム長