医学博士 井上晴豪

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■活動内容
 予防医学を専門とし、栄養・運動・休養・コミュニケーション
 東洋医学を組み合わせた理論で幅広い活動を行っている。

楽しい食事から予防医学につなげる時代

1985年に旧厚生省が発表した「1日30品目食べよう」というスローガンは、今では私たちの生活に深く浸透してしまいました。しかし、2000年に改訂された新しい食生活指針では「30という数字を絶対化して食べ過ぎてしまう例もあり、誤解を招かないように数字はやめた」として「1日30品目」は削除されていたのを皆さんはご存知でしたか?かわりに掲げられた指針には「食事を楽しみましょう」「食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も」などがあります。これは、孤食など食育問題に心の栄養補給や、異文化のメニューを取り入れることで摂取できる食品品目が増えることを狙っていると思われます。
調味料を大きく変えてみると言うことは、新鮮な味付けを楽しめるだけでなく、食材や摂取栄養素のバリエーションを増やすことのできる、最も手っ取り早い方法かもしれませんね。私たちの予防医学に繋がるちょっとした工夫と言ったところでしょうか・・・。
赤唐辛子で予防医学
カプサイシンの健康効果
タイ美人の秘密

赤唐辛子の予防医学

唐辛子の鮮やかな赤色はカロテンが多いためで、乾燥した実にはニンジンの約2倍も多く、その他、ビタミンCやビタミンB1・B2、ナイアシン、カリウム、リンなども含まれています。また、唐辛子(辛味種)特有の辛味成分には、食欲を高めてエネルギー代謝を促し、ダイエット効果も期待できます。

栄養成分表(とうがらし[果実・乾燥]100gあたり)・・・五訂日本食品標準成分表より
エネルギー 345kcal  カリウム 2800mg  カロテン 17000μg
水分 8.8g  カルシウム 74mg  レチノール当量 2900μg
たんぱく質 14.7g  マグネシウム 190mg  ビタミンB1 0.5mg
脂質 12.0g  リン 260mg  ビタミンB2 1.4mg
炭水化物 58.4g  鉄 6.8mg  ビタミンC 1mg
ナトリウム 17mg  ナイアシン 14.0mg  食物繊維 46.4g

カプサイシンの健康効果

カプサイシンは少量でも効力を発揮しますので、唐辛子は薬味や香辛料として日常的に少量ずつ活用してください。
耳かき1杯程度が目安です。(摂り過ぎると胃を荒らすので注意が必要です。)

・肥満予防
 体内に入ったカプサイシンは中枢神経を刺激して、副腎皮質からアドレナリン(脂肪の分解と燃焼を促すホルモン)などのホルモン分泌を促す為、エネルギー代謝が盛んになり、体内の貯蔵脂肪の分解が進みます。
 唐辛子を食べた後、体が熱くなったり、汗をかいたりするのはこのためで、運動したときと同じように熱エネルギーとなって体外に放散されます。
 近年の研究でも、カプサイシンは体内の脂肪を燃焼する効果があることが明らかになっています。
・食欲増進
 辛味は舌や胃を刺激して食欲の増進を促します。
 食欲が増進するのに肥満防止になるのかという疑問がわきますが、ラット(ネズミの一種)実験で唐辛子入りのえさを食べたグループの方が、唐辛子なしのえさを食べたグループより体重が少ないという経過が観察されているようです。
・減塩効果
 カプサイシンには食塩の嗜好を下げる働きがありますので、少ない塩分でも十分に満足できるようになります。
 つまり、唐辛子をスパイス調味料として上手に利用すれば、塩分の摂りすぎを防ぎ、高血圧予防にも役立ちます。
 (塩分の摂りすぎは腎臓病や高血圧につながります。)
・ボケ防止
 最近の研究によると、カプサイシンを摂ると脳によい影響があるということがわかってきました。
 カプサイシンには脳の中の情報を伝達する神経細胞の老化を抑え、活性化させる働きがあるので、ボケ防止に効果的だと考えられています。
・免疫力アップ
 細菌やウイルスから体を守る好中球(白血球)という有細胞の働きを活性化することが発見されています。
 (免疫力が最もアップするのは摂取してから12時間後。)
・発汗による美肌効果
 カプサイシンを摂取すると汗をかくとともに、冬に形成されにくい皮脂膜(角質層の乾燥を防ぐ働きがある)を作り出してくれます。
 その結果、水分の蒸発を防ぎ、角質層の水分量も上昇して肌に潤いが出てきます。

タイ美人の秘密

タイ女性ってどんなイメージでしょうか?
「綺麗な人が多い?」「背が高い?」「スタイルがいい?」・・・
正解は「日本人好みの美人が多くて細身で姿勢が良くて美脚でスタイル抜群!!日本のいまどきなオシャレをしている。」です。
日本の街中でハッと目を引くような女性がゴロゴロ歩いています。
その理由は2つあります。
1つ目は、タイの民族に関係があります。
タイ民族は日本のように単一民族ではなくて、「韓国顔の北部の部族」と「インド、フィリピン系顔の南部部族」の大きく2つに分かれます。
その民族が今では普通に入り混じっているので、ハーフ顔の美人が当たり前に増えているそうです。
2つ目は、タイ社会の現状が大きく関わっていました。
タイには加入すれば特殊治療を除いては全て医療費が無料になる保険制度(日本の国民健康保険)があります。
しかし、タイは貧富の差が大きい為、全人口のおよそ50%の国民はこの制度に加入できていないのが現状です。
もし保険証なしで受診すると、平均8,000バーツ(約30,000円)もかかってしまいます。
これはレストランで働くウェイトレスの月給の60〜70%にも及ぶ額です。
ですから病気にならないように、日頃の食生活などに普通に予防医学の知恵を盛り込んでいるのです。
唐辛子をたくさん食べるのもそうで、日本人では考えられない程の量を食べています。
唐辛子には『カプサイシンの健康効果』に挙げた他にも、身体の中の余分な水毒(東洋医学では痰という)を出す働きもあるんです。
タイの人々にとって唐辛子は健康に暮らす為にはなくてはならないスパイスなのです。
タイに美しい人が多い背景にはこういった理由があったのですね。
日本と違い、健康を維持するためにスパイスの効いた食生活を精力的にこなすタイの人々。
屋台などヘルシーで無添加の手作り健康食を食べることで得られる、内面から湧き出る健康的な美しさ、それがタイ美人の美しさの秘密ではないでしょうか。
私達はメイクやファッション・エステなど外面の美しさばかりを求めがちですが、インスタント食品やファーストフードばかり食べているようでは内面からの美しさは望めません。
私達が本当の美しさを手に入れるためには、改めて日々の食生活を見直す必要がありそうです。
赤唐辛子で予防医学
カプサイシンの健康効果
タイ美人の秘密