中国の習近平国家副主席が中国共産党中央軍事委員会副主席に選出されたことについて、日本政府は「ステップが一つ上がっただけで、実権を握るのは2年後だ」(当局者)とし、権力構造の変化を注視していく構えだ。
習氏は、日本企業が数多く進出する上海市や浙江省での勤務経験があり、日中経済協力の重要性を熟知している。昨年12月に来日した際、天皇陛下との会見日程の調整をめぐって鳩山由紀夫首相(当時)の「特例的な扱い」が目立ったが、習氏には対日重視の立場をアピールする狙いがあったとされる。同時期に来日した妻で国民的歌手の彭麗媛さんは公演で「四季の歌」を日本語で熱唱し、日本への親近感を前面に押し出していた。
対日強硬派の江沢民前国家主席の後押しを受けるため日本側に警戒感もあるが、こうした経緯から「ポスト胡錦濤」への権力基盤固めを進めても、戦略的互恵関係を推進する基本方針に大きな変化はないとの見方がある。
日中関係は、9月の沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で亀裂が入ったが、ブリュッセルでの菅直人首相と温家宝中国首相の会談で戦略的互恵関係の原点に戻ることを確認した後は関係改善ムードが出てきた。
中国各地での反日デモには日中双方とも抑制的な対応だ。菅首相は18日の参院決算委員会で中国側に「遺憾の意」を伝えたことを明らかにする一方、仙谷由人官房長官は会見で「冷静な対処が重要」と指摘した。
首相は18日夜、「次期国家主席がはっきり決まったとは思っていない」と確定的な表現は避けたが、「どなたがなるにしても、戦略的互恵関係を進める努力が必要」と強調、良好な日中関係への期待を示した。【犬飼直幸】
毎日新聞 2010年10月18日 21時57分(最終更新 10月19日 0時38分)