行き場のないフラストレーションが甲子園で爆発した。2連敗、しかも大逆転での終戦。悲鳴とため息、そして怒声。メガホンやペットボトルなどが投げ込まれ、フェンスによじ登って叫ぶファンや真弓監督やフロントへ説明を求めてスタンドに居座るファンも。そんな喧噪の中、ベンチ裏で指揮官がナインを集めた。
「1年間、ごくろうさん。来年に向けて、リベンジや」
短い言葉で選手へ訴えかけた。3年目となる来季も続投は決定済みで、試合後にも改めて「続投意志? 変わらんよ」とキッパリ。さらに1軍スタッフも全員が留任する方向だ。レギュラーシーズン終了後には木戸ヘッド、岡野手チーフコーチがV逸の責任をとって“進退伺い”も行ったもようだが、球団側はコーチ陣を強く信頼する将の意向を尊重し、慰留。改めてテコ入れなしの方針を固めた。
一方で、2軍では平田監督の更迭が明らかになった。就任から4年“星野イズム”を引き継ぐ厳しい指導で大和、上本、秋山、西村らを1軍に輩出してきたが、その方針には賛否両論あった。皮肉にも、V逸した1軍の指揮官が続投となり、対照的に4年ぶりのウエスタン優勝に導いた指揮官は退団となる見通し。後任には吉竹育成部課長が就任予定で、新体制で動き出すことになった。
託されるリベンジ。それだけ真弓阪神に来季課せられる責任は大きい。「今シーズンを象徴するような試合。勝ち切れないし、勝負弱い」と南球団社長が表情を曇らせたように、大事な試合を落とし続けて僅差で優勝を逃したペナント同様、CSでも再び、ファンを裏切る終焉だった。
背水の2戦目。六回まで4点リードしながら、久保田、藤川の必勝リレーで逆転を喫した。継投失敗での敗戦は今季、何度も目にしてきたシーンだ。初の甲子園で宿敵の巨人戦。盛り上がった分だけ虚しさが募った。勝負所で必ず勝てなかったこと、ベンチが勝たせられなかったこと。これだけ重なればもう、“たまたま”ではすまされない。
「短期決戦に弱い、ここ一番に弱いところが、消化できなかった。来年に向け、いい課題になったんじゃないか」と真弓監督。さらに「野手は球際に強くなってほしい。打つ方は選球眼、ストライク、ボールの見極め。投手も、もうひとつ攻めていく気持ち。そういうところを、一つずつ強くなっていかないといけない」と改革を掲げた。
山積の課題を抱えながら、同じ体制、同じ布陣で戦う来季は、よりベンチの手腕が問われる。もう同じ失敗は許されない。(堀 啓介)