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2010年10月18日06時51分
ドイツのメルケル首相が、「多文化主義社会は失敗した」と言ったそうである。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-11559451
すごいことになったなあ、と思った。一国の首相が思い切ってよく言ったものである。
BBCの記事によれば、メルケル首相はいわゆる「多文化主義」の概念―互いに隣同士に幸せに生きるーは機能してないし、移民たちはドイツ社会に融合するために、もっと努力をするべき(例えばドイツ語を学ぶなど)、と言ったそうである。
ドイツで反移民感情が高まっているそうで、記事の中で紹介されているシンクタンクの調査によれば、30%のドイツ国民が、自分の国が「外国人によって制圧されている」と感じている。また、移民の一部がドイツの社会保障目当てにやってきた、と思っているのだそうだ。
ドイツは1960年代に労働者を外国から呼び、「今その人たちはドイツに住んでいる」とメルケル氏。「私たちは自分たちをしばらくの間、だましてきた。移民たちは長くは滞在しないだろう、いつかはいなくなると」(しかし、そうはならなかった、と言いたいのであろう)。「もちろん、多文化(社会)は失敗したのだ。完全に失敗した」と続けている。
メルケル首相は移民がドイツに来ることをとめようとしているわけではない。「歓迎する」と述べている。しかし、彼女が問題にしているのは、融合がうまく行っていない、ということなのだろう。
先週には、別のドイツの政治家が、「トルコやアラブ諸国など別の文化からやってきた移民」は、ドイツ社会への融合に関して、(他の文化を持つ人に比べて)「より困難であるのは明瞭だ」と述べていた。「多文化主義は死んだ」と。
トルコには今、1600万人の移民がいて、250万人はトルコ出身者である。トルコの国民はほぼ全員がイスラム教徒である。
8月には、ドイツ中央銀行の幹部が、イスラム諸国からの移民が最も強く社会福祉の申請や犯罪に結びついていると発言して、辞職する羽目になった。言ってはいけないことを言ってしまったのである。
キリスト教をベースにした欧州諸国は、イスラム系移民の取り扱いに苦労しているように見える。
私はオランダ(映画監督がイスラム系住民に殺害された)やデンマーク(ムハンマドの風刺画事件)を取材したことがあって、欧州とイスラム、あるいはムスリム(イスラム教徒)の問題の意味合いを、折に触れ、考えてきた。
イスラム教徒がどう考えるか、あるいは価値観がどうだ・こうだというよりも、イスラム教徒を国民・隣人として内包する西欧の国に住む人々の、イスラム教徒に対する見方が気になる。
一方、フランスでは、公的場所でイスラム女性が体を覆うイスラム教の装束を着てはいけないことになった。この問題に関しては、産経・山口さんの鋭い考察がある。ブルカ禁止法は宗教弾圧や少数民族迫害とはかけ離れた話で、フランスのアイデンティティーの問題―とある。
【緯度経度】パリ・山口昌子 ブルカ禁止法は宗教弾圧なのか
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100925/erp1009250811001-n1.htm
共同通信:フランスでブルカ禁止法が成立 欧州初 イスラム諸国反発も
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100915/erp1009150831003-n1.htm
フランスの話からはずれるかもしれないが、オランダ(そういえば、イスラム教批判の議員が率いる自由党が、6月の下院選挙で票をかなり集め、閣外協力をしているはずである)やデンマーク風刺画の事件などを見ていて、私が思うのは、多文化主義といったときに(つまるところ、フランスは多文化主義方式を取らず、フランス式を取る、ということなのだろうけれど)、一体どこまで、互いに譲り合えるのだろう、か、と。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-11559451
すごいことになったなあ、と思った。一国の首相が思い切ってよく言ったものである。
BBCの記事によれば、メルケル首相はいわゆる「多文化主義」の概念―互いに隣同士に幸せに生きるーは機能してないし、移民たちはドイツ社会に融合するために、もっと努力をするべき(例えばドイツ語を学ぶなど)、と言ったそうである。
ドイツで反移民感情が高まっているそうで、記事の中で紹介されているシンクタンクの調査によれば、30%のドイツ国民が、自分の国が「外国人によって制圧されている」と感じている。また、移民の一部がドイツの社会保障目当てにやってきた、と思っているのだそうだ。
ドイツは1960年代に労働者を外国から呼び、「今その人たちはドイツに住んでいる」とメルケル氏。「私たちは自分たちをしばらくの間、だましてきた。移民たちは長くは滞在しないだろう、いつかはいなくなると」(しかし、そうはならなかった、と言いたいのであろう)。「もちろん、多文化(社会)は失敗したのだ。完全に失敗した」と続けている。
メルケル首相は移民がドイツに来ることをとめようとしているわけではない。「歓迎する」と述べている。しかし、彼女が問題にしているのは、融合がうまく行っていない、ということなのだろう。
先週には、別のドイツの政治家が、「トルコやアラブ諸国など別の文化からやってきた移民」は、ドイツ社会への融合に関して、(他の文化を持つ人に比べて)「より困難であるのは明瞭だ」と述べていた。「多文化主義は死んだ」と。
トルコには今、1600万人の移民がいて、250万人はトルコ出身者である。トルコの国民はほぼ全員がイスラム教徒である。
8月には、ドイツ中央銀行の幹部が、イスラム諸国からの移民が最も強く社会福祉の申請や犯罪に結びついていると発言して、辞職する羽目になった。言ってはいけないことを言ってしまったのである。
キリスト教をベースにした欧州諸国は、イスラム系移民の取り扱いに苦労しているように見える。
私はオランダ(映画監督がイスラム系住民に殺害された)やデンマーク(ムハンマドの風刺画事件)を取材したことがあって、欧州とイスラム、あるいはムスリム(イスラム教徒)の問題の意味合いを、折に触れ、考えてきた。
イスラム教徒がどう考えるか、あるいは価値観がどうだ・こうだというよりも、イスラム教徒を国民・隣人として内包する西欧の国に住む人々の、イスラム教徒に対する見方が気になる。
一方、フランスでは、公的場所でイスラム女性が体を覆うイスラム教の装束を着てはいけないことになった。この問題に関しては、産経・山口さんの鋭い考察がある。ブルカ禁止法は宗教弾圧や少数民族迫害とはかけ離れた話で、フランスのアイデンティティーの問題―とある。
【緯度経度】パリ・山口昌子 ブルカ禁止法は宗教弾圧なのか
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100925/erp1009250811001-n1.htm
共同通信:フランスでブルカ禁止法が成立 欧州初 イスラム諸国反発も
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100915/erp1009150831003-n1.htm
フランスの話からはずれるかもしれないが、オランダ(そういえば、イスラム教批判の議員が率いる自由党が、6月の下院選挙で票をかなり集め、閣外協力をしているはずである)やデンマーク風刺画の事件などを見ていて、私が思うのは、多文化主義といったときに(つまるところ、フランスは多文化主義方式を取らず、フランス式を取る、ということなのだろうけれど)、一体どこまで、互いに譲り合えるのだろう、か、と。
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在英ジャーナリスト。オンライン「ベリタ」、新聞業界紙、在英邦字紙「英国ニュースダイジェスト」「月刊グローバル経営」、朝日新聞「ジャーナリズム」、「月刊GALAC」などに連載。
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