トヨタ自動車の豊田章男社長は18日、名古屋市内で記者団の質問に応じ「日本でのものづくりにこだわりたい」と語り、急激な円高など厳しい経営環境でも安易に生産を海外移転せず、国内の雇用維持に全力を挙げる考えを示した。
豊田社長は、8月ごろからの急激な円高や主要国より高い法人税率、CO2排出量の削減義務などを踏まえ「理屈で考えたら日本で生産することはありえない。(韓国や中国メーカーなどと)競争相手にならない」と経営環境の厳しさを強調した。
そのうえで「(国内の生産縮小を)トヨタがやったら、この国はどうなってしまうんだという危機感がある。よほどのことがない限り、海外に持っていくことはしない」と語った。ただ具体的な対応策については「秘策はない」と述べた。政府に対しては「自動車産業を成長戦略の軸に持ってきてほしい」と注文を付けた。
トヨタ自動車は国内生産300万台強のうち、半分以上を輸出している。為替相場が15年ぶりに82円台に突入した9月中旬、グループ主要企業の社長会で、仮に100万台の生産が減るとグループで約12万人の雇用が失われるとの試算を示している。【鈴木泰広】
毎日新聞 2010年10月18日 19時47分