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[22477] 【習作】東方龍球伝(東方×DB/タイトル変更)
Name: フクウ◆9afd6316 ID:117f5b5f
Date: 2010/10/17 02:33
【諸注意】
この作品は「東方project」と「ドラゴンボール」をクロスオーバーした二次創作です。
処女作なので、所々問題があるかもしれませんが、その時は遠慮なく指摘しちゃってくださいっ!

変更点
10/17 タイトル変更





プロローグ


――――宇宙を救った英雄、孫悟空は自らの役目を終えると神龍(シェンロン)と共に天界へと向かっていた。

「わわっ!? なんだこりゃあ~~~!!」

しかし、その途中…空間に底の見えない穴を見つける、目を凝らしながらその内部を覗き込んでみれば、
何処までも恐怖さえ覚えるほどの暗黒だけが広がっていた。そして周りには目と表現できる物体が多数、目視できる。

ありえない光景だけが広がっている穴は、瞳が自分達をまるで見ているような気配を感じさせられる。
だが突然、その真っ暗闇な穴は周辺にいる物体を手当たり次第に吸収し始める。それは近くにいた悟空も例外ではない。

「吸い込まれる…!! ん…ぎぎぎ…っ!!」

突拍子もなく非現実的な動作が悟空に襲い掛かる――。が、悟空も黙ってそのまま飲み込まれるわけにもいかないと踏ん張り続ける。
しかし吸引力は確実に強くなっている事を悟空は肌で感じていた、ただ無作為に吸収しようとする穴を睨みつけていたが。

―――だが悟空はふとその目の前の穴を見て思い浮かぶ。“この物体は自分を呼んでいるのではないか”という事に、
何故そう思ったかは恐らく悟空自身はわからなかった、直感に等しいのだ。そしてそれが一瞬の隙を生み出す事になってしまった。

「ぎぎぎ…っ、うわあああああぁぁぁぁーーーっっ!!!」

『悟空…! まさかあの空間は……』

もはや目の前の物体はブラックホールだった。神龍の声は空しく、悟空はその中へと落ちていく―――。
そしてまた新しい冒険が、はじまろうとしていた―――果たしてこれから先、悟空を待ち受けているものとは…。



[22477] 其の壱 「フランドールと孫悟空」
Name: フクウ◆9afd6316 ID:117f5b5f
Date: 2010/10/17 02:36
―――其処にはある洋館があった。紅に彩られた館の前には真っ赤な絨毯が引かれた道。その先には一つの立派な建物があった。
この一つの建物は人々から「紅魔館」と呼ばれていた。その名前に相応しく、まるで館を象徴しているかのような紅色の館であった。

だが此処に住む主は人の血を食す事で生き長らえる吸血鬼が住んでいる。吸血鬼はその種族の特性上、太陽の光を肌に浴びると気化してしまう。
だからこそ館の内部はとても暗く、外の光は殆ど入ってきていなかった。窓から射しとおす日光で丁度良い暗さが保たれていたのだ。


「…つまらない。どの玩具もすぐに壊れちゃう…もっと頑丈な玩具がほしいなぁ…。」


薄い黄色の髪が肩につくほどの長さとこの館の紅のような色を持った赤い瞳を持った少女は紅茶のような色の床を見下ろしていた。


「前の玩具はなんだったかな…人間だったかしら。久しぶりの人間だったからあの紅白や黒白みたいに遊べると思ったのに。
 あっという間に勝負がついちゃうなんて…はあ、今日の玩具もすぐに壊れちゃったし。…ついてないなぁ……。」


独り言のような言葉を小さな声でぶつぶつと並べる。それらすべての独り言は玩具に対しての不満だった。
退屈そうに何か他の玩具を探しているのか辺りに視線を向けるが、物と呼べる物体は少女にいる部屋内には存在していなかった。
あるとするのならベッド。真っ赤な掛け布団がかけられたベッドのみ。更に言うなら蝋燭につけられた火が部屋を照らしているだけだ。


「……お姉様、どうして私を地下室から出してくれないのかしら…わたしがキライなのかな…パチュリーや、咲夜も最近は……。
 そういえば咲夜はお姉様ばかり味方になって全然私の話なんて聞いてくれないし、パチュリーはお姉様の親友だからお姉様ばかり…。
 小悪魔なんて、私が近寄るだけで睨んでくるし…ううん、あれはなんていうか、異物でも見ているような…妖精なんかも…。」


一度思い詰めれば悪い事ばかりが飛び出してしまっていた、そして暫く言葉を紡いでいる途中で少女は気がつく―――。
「自分には仲間がいない」という事実に気づいたのだ。何時だって自分の知っている者は他の誰かの味方なのだ。
少なくてもこの少女が知る範囲内ではそうだった、自分の話を聞き、自分を仲間として扱ってくれる者がいない。

改めて今自身は孤独であるという事に悟れば、薄っすらと目に涙がたまりはじめていた。


「――――神様、私にお友達をください。」


ゆっくりと目を閉じて、叶えてほしい願い事は一つ。その思いを金髪の幼い少女が口にした。
沈黙と静寂が部屋を包み込む。少女が喋らなくなったからこそ起きる不気味なほどの静けさだった。

だが突如、黙っていた口が突然、言葉を再び紡ぎだした、それは恐らく目の前の物に対してだ。


「…!! あれって…なにあれっ!? 穴が…あいてる…?」


何かの力が集中している事に気がつく、禍々しく強大で思わず恐怖を感じてしまうほどのプレッシャーを放っているような力の塊。
閉じていた目を開けば眼前を見れば認識する――。空間に穴でも空けたような、その場には不適切な物体。真っ黒な闇の渦。
浮かんでいるとも形容できるが、その可笑しな黒い物体は浮遊しているというより場所という名の空間自体を引き裂いている物だ。


「あれって、目…? 変だよ!こんな所に目があるなんて…なにかしら、こっち見てるみたい…気味が悪い……なんなの…?」


目を凝らして闇に浮かぶ瞳を見つめる、不気味に感じたのか軽く身震いをしながらも視線を決して離さなかった。

――瞬間、ずっと見通していた少女は違和感を覚えた。何か声が聞こえたのだ、この非現実的な物体から、叫び声が、
聞こえてくる物は子供っぽく男の子のような悲鳴、更にそれがどんどん大きくなっている、まるでこちらに近づいているような。


「うわああああああああああぁぁぁぁぁ~~~~っっ!!!」


漆黒だけが続く空間の中で一人の四方八方に分かれた黒髪の少年が、はっきりと少女の瞳に写った、その少年は間違いなくこちらへ落下している事に気づく。
驚く暇もなく少女はその場から避難をするように離れる、奇妙な空間の穴から叫び声はどんどん大きくなりながら―――突如、激突する衝撃音が響き渡った。






        其の一「フランドールと孫悟空」





「いっちちち…おーいちー……。いってえ何が起きたんだ?」


顔面から床に衝突させ、なんと床下に顔面が塗りこんでいた。通常じゃ起こりえない自体を引き起こした少年は顔を上げて軽く辺りを見回す。
殺風景…というより少し寂しさを感じさせられる何もない空間、赤い絨毯が床にひかれ、家具と呼べる物は一切何もない暗い部屋にいると認識する。
ただ蝋燭の火が唯一の空間内を照らす光となり、やっと周りが見える状況。外の光は入ってこない、まるで外とは切り離されているような場所だ。


「あり? ここはどこだ? ……確かオラ神龍に乗ってて…そうだ! そしたら変な穴があってそれに吸い込まれちまったんだ!」

「…人の部屋に勝手に入ってくるなんて、それって不法侵入って呼ぶんだよ。 それに…あなた、誰?」


幼い声を耳で聞き取れば黄色い髪をした10歳にも満たない少女が自分の前の前にいる事にはじめて気がつく。

―――そもそもこの空間内ではこの少年の存在は明らかに異質な存在であり、別次元の生き物だ。それは少女にとっても未知の塊だった。
見た事も聞いた事もない謎の生命体。猿のような尻尾を生やし、形は人間とまったく同じ…尻尾だけを除けば人間と区別がつかないだろう。

だがそれは逆に悟空からすれば同じ事だった。まるで別世界とでも呼ぶべき場所に黄色い髪をした真っ赤な瞳を持ち、真っ赤な衣装を身に纏う少女。
そして背中に生える特徴的な形状を持つ翼のような物体、更に赤、橙、黄、緑、青――虹を連想させるように並ぶ羽は美しいとも表現できる。


「オラか? オラは悟空…孫悟空だ! おめえこそだれなんだ?」

「私はフランドールよ、悟空さん。フランドール・スカーレット…レミリアお姉様の妹なのよ。」


ふふん、と何処か胸を張って誇らしげに語る少女。レミリアと呼ばれる人物は恐らくこのフランと名乗る少女の自慢の姉にあたるのだろう。


「フランドールだな。後、オラの事は悟空でいいぞ。」


悟空は相手の名前をしっかりと覚えたように子供らしい人懐っこい笑みを浮かべていた、だがその態度にフランは内心では驚いていた。
この紅魔館では彼女に親しく話しかける者などいなかった、姉にあたるレミリアも自分の相手など中々してくれないのだ、暇があっても、
それなのにも関わらず自分の姉を誇っているのは少女にとっては自分の事を好きでいてくれる姉がいると信じきっているからに過ぎない。

だがそれはあくまで少女の妄想が入っているのだ。現実はまったく相手にされていない。だが今の現実は少女の目の前にいる少年が相手にしている。
自分の姉でもなく、身内でもなく、ついさっき出会ったばかりのまだ相手の事を知りもしない、名前だけ交わした初対面の相手に、唯一相手にされた。


「…じゃあ悟空って呼ぶね。 私の事も、フランって呼んで。皆もそう呼んでるから。」

「わかった! なら、フランって呼ばせてもらうな!」

「うん…それでいいよ。…ねえ、知ってる?此処では遊ぶ事が挨拶なのよ。」


悟空とのやり取りは自然とフランを笑顔にさせていた。悟空が唯一、まともに自分の相手をしてくれるからこその嬉しさを込めた笑顔だ。
フランは無邪気な笑顔を浮かべながら口を動かす。――が、その言葉が繋いでいく本質とも呼ぶべき内容は悟空には理解できないだろう。


「―――だから私と一緒に遊んでよ。あなたはコンティニューできないの。」


刹那、禍々しく強烈な力がフランを中心として幾つも集中しているのを悟空はすぐに感じ取れた。
集中した力が具現化されたように、数え切れないほど空中を浮遊するは無数の赤い光弾、邪悪な輝きを見せる真っ赤な煌きは、
敵をただ一方的に攻撃する為の道具の一つ。超常現象とも呼ぶべき恐ろしい数の紅の弾は遥か上空から眩しい赤い雨が降り注ぐ。


だが悟空は赤い雨を次々と避けていく、圧倒的な数で攻められようとも素早い身のこなしで回避し続ける。
直前で当たりそうになる紅の弾は回避できないと判断した上で次々と両手を使い、手の甲に当てながら弾き返していく。


「フラン!! おめぇいきなりなにす――。」


「あはははっ。すごいすごいっ!まるであの時の紅白や黒白みたい!!なつかしいなぁ、黒白も貴方みたいにのらりくらりと避けてたんだよ?
 でもどうやってさっきみたいに弾き返したの? こう、手を使ってたわよね、そんな風に避けちゃうの貴方がはじめてだよ、紅白や黒白も、
 さすがにそんな事やってなかったなぁ…。…じゃあ、一番最初はこれにしようかなぁ…簡単に壊れちゃやだよ…?」

避け続ける悟空を楽しそうに見れば、陰のある気味の悪い笑みを浮かべる、そして片手を天高く掲げれば凄まじい魔力が収束し始める。
それはその場にいるだけで何かの威圧感に襲われる程、悟空からすればそれは異質その物。渦を巻いて収束する魔力はやがて巨大な剣の形状となる。




「―――― “ 禁 忌 「 レ ー ヴ ァ テ イ ン 」 ” …… !!! 」




レーヴァテイン、それは北欧神話に登場する幻想武器の一つである。武器の形は杖や剣や定かではないが「災いの杖」とも称される程の一品だ。
その威力は世界を丸ごと焼き尽くし、そして滅ぼしてしまう究極の武器の一つ。その計り知れない巨大な破壊力を秘めた魔剣を体現する少女。
小さな身体とは相反するように巨大な紅い刃を片手で天高く掲げるように持つ、赤き刃が輝く光は滅びの光でありながら美しい光でもある。

―――悟空はこの邪悪な煌きを放つ全てを滅ぼそうとする刃にどう立ち向かうだろうか…。



[22477] 其の弐 「対決!悟空VSフラン」
Name: フクウ◆9afd6316 ID:117f5b5f
Date: 2010/10/17 02:36
―――神話に登場する武器を体現しようとする少女、一方では遊びと称したよくわからない決闘に付き合わされる孫悟空。

だが少女の持つレーヴァテインは世界を丸ごと焼き尽くすほどの威力を秘めているわけではないのだ、あくまで“体現しようとしている”。
美しく輝く紅の炎は決して本当に世界を滅ぼすほどの破壊力は秘めていない。故に、実際は“見かけ倒し”が一番に強く表現されているだけに過ぎない。
しかし、例え見かけ倒しだとしてもその眩い紅い光景を目の当たりにした人間は恐怖を覚えると同時に感動すら覚えるだろう。それ程のプレッシャーも同時に放っているのだ。

もはや見た目は常識的な“遊び”だとはとても形容できない風景である、まったく知らない他人から見れば悟空を殺そうとしているのではないかと勘違いしてしまうほどだ。


「―――はああぁぁぁっ!!!」


部屋中に響き渡る掛け声と共に巨大な刃を両手に持ち、その鋭い先端を真っ直ぐに悟空へと向ける、すると突如、悟空を囲むように周辺に巨大な火炎が具現化されていく。

それは悟空の逃げ道を失う結果となっていた、右を向いても左を向いても炎が包み込んでいる。そして全てを滅ぼそうとする火炎は部屋中の温度を上昇させていく。
もはや逃げ場を失い、ターゲットにされてしまった悟空は無言でただ真っ赤に燃え盛る獄炎の先にいるフランへ真っ直ぐと目線を向けているだけだった。
綺麗とも言えるような真っ赤な空間の中、―――上空にも、紅色に燃え盛る火炎が姿を現していた。それは360度から、逃げ場のない包囲された攻撃である。

このまま直撃すればただじゃすまない事を起こしてしまうだろう、つまりはフランの勝利。彼女の勝利はもう一歩手前の所まで来ている、掴みかけている。
今フランはその勝利を掴み取ろうとした刹那、勝利は少女の前から逃げた。


「あれ、は…!…太陽の光…!? ……違う、太陽の光なんかじゃなくて―――。」


全てを滅ぼそうとする炎の海はフランの視点からすれば悟空は炎に包み込まれているように見えていた、だが決して包み込まれているわけではない事にようやく気がついたのだ。
突然の不自然な突風、この地下室は構造上、風が侵入する隙はない、にも関わらず悟空を中心として強烈な風が巻き起こっている、もし地下室に家具が置いてあれば、
その家具は問答無用で吹き飛ばされ粉々に叩き付けられていただろう、それほどの威力は持っている、その奇妙な風は悟空を囲んでいた火炎を簡単に消し飛ばしてしまう。

フランの先に見えたのは光り輝く黄金の炎に包まれ、重力に逆らうように逆立った金色の髪をした悟空だった、身に纏う炎のせいで地下室の暗闇を一瞬で消し飛ばしていた。
そう、この暗黒に包まれた地下室という名の空間内では明らかに悟空は異端者、黄金の光が地下室全体を照らし出し、今まで見えてこなかった物が煌く光によって見えてくる。



「フラン…おめえ、遊びにしてはやりすぎだぞ……。」




        其の弐 「対決! 悟空VSフラン」






真っ直ぐに、ただ真っ直ぐに目の前にいる紅の衣装を身に纏うフランへと目線を向ける、その表情、姿は威厳に満ち溢れており、子供っぽい外見であるが故にあまりにもギャップが激しい。
フランはその姿と力に違和感を覚える、先程までの力とは全然違うのだ。つまり見かけ倒しとはまったく違う、白黒はっきりつけたような本物の力が今、目の前にちゃんとある。


「…何を言ってるの?これは常識なの、まだこの程度…遊びに入ってるか微妙な所なんだよ。…それにしても、悟空ってそんな事もできるんだ。
 すごいなぁ……さっきの奴もどんどん弾き返しちゃうし、更に私の炎を消し飛ばしちゃうなんて。本当にすごいよ、うん、すごいっ!」


改めてすごい、と認める、そう、確かに目の前の少年、孫悟空はフランが思った以上のパワーを秘めている、予想以上のパワーに対して、フランは無邪気な笑顔を見せる。
それは嬉しいという意思表示でもある、ここまで強くて頑丈で中々壊れない、それでいて自分が予想以上の力を持つ相手と遊ぶ事ができるという自体に対してへの嬉しさ。
強引に勝負を仕掛けたフランではあるがやはり、“勝負を仕掛けて正解だった”。そう思わせてくれるような相手に凄いという感情でさえも覚える、だからこそもっと本気でやるという事。


「私も少し本気を出すから、ちゃんとついてきてね、悟空!」


突然、赤い複雑な魔方陣が空間に出現する。それも複数、悟空の周辺に配置しながらもその魔方陣は金色の炎を身に纏う悟空を中心として展開しているのだ。
悟空からは距離があるものの、魔方陣は彼を中心として円を描くように回り続けている、2個、3個、合計で4個ぐらいはあるだろう。恐らく次の攻撃の合図である。


「はあああああああああぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」


魔方陣から紅の巨大な光弾が次々と発射、その大きさは悟空を容易に越えるほどのサイズだ。真っ赤に輝く弾は魔方陣が悟空を囲むように動いているという性質上、
取り囲むように射出している、横に並んでいる攻撃はあまりにも綺麗に整っている、それによって悟空の視点からすれば正に赤い壁とも呼ぶべき巨大な障壁が迫り来る光景だ。
その光景は、逃げ場がないと判断させてしまうような避ける事が困難な攻撃、いや避けられないのかもしれない一撃。そしてフランは問答無用に忌々しき刃を悟空の真上から振り下ろす。

そしてこれらの攻撃という名の動作にかかった時間は恐らくさほど時間をかけていないであろう。それは吸血鬼という脅威的な身体能力があるからこそ実現できた至難の業だ。

だが一方、悟空は自身の持つ黄金の光がより一層強く輝きだす、只でさえ先程から強烈な光を発しているにも関わらずその光は更に増すばかり、暗闇に包まれた地下室はもはや、
悟空の持つ黄金の光によって全てが照らし出されるかのように輝いているのだ。その凄まじいパワーは悟空に近づく真っ赤な障壁を消し飛ばす、悟空を包み込む光によって。


「―――見えてるぞ!」


だがその身体能力を活かしてでも悟空の目は完全に相手の動きを全て捉えている。それはフランが地下室に幽閉され、普段から日常的に身体を動かしていないからという理由は、
もちろん入るが恐らくそれだけではない、悟空自身の純粋な強さがあるからだろう。

振り下ろされる災いの杖を体現したような真っ赤な刃を悟空は片手を開く、そして上空へと手を伸ばすようにその刃を受け止めてしまう、苦々しい表情を浮かべる事もなく、
一切表情の変化しない悟空の顔を見ながらフランは更に両手に握り締める刃の力が増していく、そのまま悟空を押し返そうと刃はより強力な輝きを見せるがその前に悟空は一歩早く動く。


「だあああああああぁぁぁりゃああああぁぁぁっ!!!」

「っ…!? くうぅ…ッ!!」


恐ろしい腕力で握り締めていた刃をそのままフランごと投げ飛ばそうとそのまま思いっきり遠くへと投げようとする、それに抵抗するようにフラン自身もブレーキをかけようとするが、
結果的に通用する事はなく、地下室の壁に向かって勢いよく吹き飛ばされるように空中を浮く―――。フランの視界は回転していた、目に見える物は床や天井、そして悟空に赤い刃。

すぐに空中で体制を立て直して、次の攻撃の準備をする必要のあるフランは空中で回転する、投げ飛ばされる衝撃にただ突き動かされながら壁に激突する事だけは避けなければならない事態である。
――――だがその一瞬で思いついた考えに従うように、身体を動かそうとするが奇妙な感覚を覚える。思うように動作する事ができないのだ、足が動かない、羽が動かない、空中で上手く回転する事ができない、行動ができない。

身体が凍り付いているような、固まってしまっている。いや、正確には動かす事はできる、だがその動作があまりにも遅すぎる。遅すぎて動かす事ができないような錯覚に襲われているのだとフランは気づく。


「…あ、れ……ど、うな…って…。…まさ、か…。」


身体全体の動作が遅すぎる。口を動かすという名の行動でさえ遅い、上手く喋る事もできない。だからこそフランは自身の身体全体に気持ち悪さも同時に覚えていた。
だが、このおかしな違和感は前にも味わった事がある、それは遥か昔だったか、昨日の事だったか、まるで自分の体内という名の時間が遅くなっているような。

時間が遅くなっている、まるでスローモーション。時間を操作している、時間を操る事ができる、時間を、時間を――。もうこの時点で誰の仕業なのか大体は察しついていた。
恐らく、地下室の異常とも言える力の集中、遊んでいるにしては派手に暴れまわっている事に気になって様子を見に来たのだろう。確かに気がつけば自身と悟空との戦いは、
確実にどんどんヒートアップしている、まだ本気じゃないにしても少しやりすぎたのかな、とフランは自身の頭の中で勝手に結論付けていたのだ。


「……妹様、お怪我はありませんか?」

「咲夜…? …なんで咲夜が入ってくるのよ、私と悟空は遊んでいるんだから邪魔しないでっ!」


暖かい感触、凛とした女性の声、銀色の髪、赤い瞳、咲夜と呼ばれたメイド服のような衣装に身を包んだ女性は丁度、フラン自身を抱きしめるように受け止めていたのだ。
それはまるで主従関係を表しているかのようにフランを様付けしていた。何処か知的で大人っぽく、クールな印象を受けるメイドに子供、絵に描いたような人物達だ。

しかし、一方では女性の登場に悟空はまったくついていけなかった。というのも悟空はこの場所に到達した時点で地下室の外から複数の気を感じており、誰かがいる事に気づいていたのだ。
気というのは存在している生き物であるのなら誰にでも発しているもの、気配であると同時に力のような物だ。その気がこの部屋以外からも感じていた。その人物達がフランと、
知り合いであるかどうかはさすがに知る事はできなかったが。だが今の悟空は素直に驚いていた、確かに部屋の外に誰かがいる事に気がついてはいたがこの部屋に誰かが侵入している、
という事にはまったく気がついていなかったのだ。本来なら気づく事ができる自体を気づいていない自体へと変えたフランを今も抱きかかえている美しい銀髪の女性は只者ではない。


「だ、誰だおめえ…気配をまったく感じなかったぞ…。」


「――それはこっちの台詞よ、貴方こそ何処から入ってきたわけ? いくら門番が寝ているからって、妖精が気づく筈…。」

「ちょっと咲夜!! 私の方を無視しないでよ。それに悟空は急に変な穴みたいなのができて、私の部屋に入ってきただけ!」

「変な穴…? それは一体どういう事なのですか、いもうとさ…。」

「いいから離して、はやくっ! みんな遊んでくれないから悟空と遊んでいただけよ、別にいいじゃんっ!」

「い、妹様…。申し訳ございません、ですが…。」

「これは咲夜が独断で行動したの?それともお姉様の命令なの?」

「レミリアお嬢様の命です…。話は戻りますが、妹様の部屋に入ってきたというのは…。」

「突然、変な空間の穴みたいなのが出来て、それで悟空が降ってきたのよ。それより私達はまだ遊ぶのっ!」

「空間の穴…? 妹様、レミリアお嬢様が遊んでいたら止めさせろと命が入っておりますので、申し訳ございませんが…。」


フランは内心で秘めた怒りを露にしていた、というのも無理はなかった。そもそも遊びたい以外に願った事は自分と仲良く遊んでくれたり話をしてくれたりする人物が来て欲しい事だったのだから。
なんとか遊びを止めようとメイドは必死に言葉を選んでフランを落ち着かせようとするが、逆効果。どんどん暴走していき微妙に会話のコミュニケーションが取れていない自体になっている。



『ぐうぅぅぅぎゅるるるるる……!!』

「な、なに…? なんの声なの…?」

「!!…さっきの声は、妹様、隠れてくださ――。」


「ははは、わりいわりい、今のはオラのハラの音だ。」


突然停止させたのは輪に入っていなかった悟空であった。音の正体である本人は途方にくれた様子で苦笑いを浮かべ、唖然としている二人に改めて視線が合う。
フランは唐突な展開にもうついていけなくなったのか、遊ぶやる気も失せたように悟空を見ていた。というのも無理はない、突然少年が出てきて突然遊びを邪魔されて咲夜と口論。
おまけに悟空を纏っていた金色の光は消え去っていたのだ。そのせいか、異様に明るかった地下室は本来の暗闇を取り戻し、穏やかとも言える闇が包み込んでいた。

一方、咲夜は疲れた表情を見せていた、まったく見ず知らずの少年と遊んでいるという事実でさえ彼女にとっては驚くべき自体、フランとの口論もあったせいで「はあ」とため息を漏らす。


「あれからなんも食ってなかったからオラ、ハラ減っちまって…。」

「そういえば咲夜、私もお腹がすいたわ。そろそろ食事の時間じゃなかったっけ。」


「……そうですわね、そろそろお食事の時間にしましょう。貴方も、その時に事情を聞かせて頂戴。」

「えっ!?メシ食えんのかっ! やったー!!」

それでこそ、子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。更にはメシメシメシと連呼する始末。咲夜からすれば人様の家に上がりこみ、食事までご馳走になろうとする少年の態度は、
あまりにも図々しい印象を受けてしまうのだ。よってあまり良い印象ではないのだ。しかしこの場で一番に纏まる話題と場所は恐らく“食事”であろう、もしかしたらフランも、
お腹がすいているせいで機嫌が悪いのかもしれないのだから。どちらにしても自分の目でしっかりと監視できるので、悟空の逃げ場がないのは確実であろう、と考えていた。

フランとしては一緒に遊ぶ事ができ、それでいて自分の話を聞いてくれた悟空に対してはとても印象が良かった。だからこそ気に入っているのだ。
これから食事の時間を共に楽しむ事ができるという事実はフランから見ればかなり稀な時間。それでこそ、友達との食事は恐らく生まれて初めてであろう。

黒髪の少年と金髪の少女、そして銀髪の女性は共に地下室を後にするのだった―――。



[22477] 其の三 「紅魔館の偉い人」
Name: フクウ◆9afd6316 ID:117f5b5f
Date: 2010/10/17 03:04
「…咲夜、そこの餓鬼は一体何かし――。」


「オラ、ガキじゃねぇぞ。孫悟空だ! おめぇこそ誰なんだ?」


相手の言葉を遮るように口を挟む。悟空としてはたまたま自分の事だと思って反応したつもりだったのだが、当の本人である目の前の少女は悟空を睨みつけているのだった。

薄い青色の髪、長いと表現できるほどの長さでもなく、肩につく程度。鋭い真っ赤な瞳は揺らぐことなく真正面にいる黒髪の少年――孫悟空に向けられていた。
紅のリボンがつけられ何処か洒落た真っ白な服に口元から見える尖った八重歯、殺傷能力がありそうな鋭い小さな翼…しかし、小さいからといって油断させるほどの甘さは持っていない。

見た目こそは只の西洋的な少女ではあるものの、その雰囲気や存在は明らかに異なっている。それはフランと名乗る金髪の少女とまったく似た存在であると言う事。
だがその少女とは何処か明らかに違う。威厳に満ち溢れており、その様子から其処に存在するだけで異様なプレッシャーを感じさせてしまうのだ、それは先程フランドールと悟空が、
遊んでいた時の雰囲気とよく似ている。フランドールのレーヴァテインが発動した時はその紅色の光景に恐怖と精神的な威圧感を覚えるのと、このフランと似た少女の放つ雰囲気は、
まったく類似した物である。

そんな明らかに異質な存在であり、何処か邪悪に満ち溢れている異形の生物を目の前にしながらも悟空は平然としている、何より淡白に言い返した辺りがその証拠である。
本来ならまったく見知らぬ土地にいる事と未知の生命体に囲まれている時点で恐怖に怯えてもいい場面である、いや寧ろそれは“普通”であり仕方がないといえば仕方がない事だ。

戸惑いや困惑、押し寄せてくる感情に怯えてもきっと可笑しくはないのだろう。にも関わらず悟空は特に何も感じている様子でもなくただ平然としていた。


「レミリア!レミリアお姉様よ、私の姉。」

「へ? じゃあコイツがさっき言ってたおめえの姉ちゃんなんだな。確かにフランと似てんなあ~。」

「でもアイツと性格は全然似てないんだから。あんまり一緒にはしないでね。」


食事をする前に、と咲夜は部屋に案内をする前に提案を述べてきたのが事の発端。此処の館の主に挨拶をしておいた方がいい、それが案の内容だったのだ。
咲夜は挨拶もなしに見ず知らずの人間のような子供と共に食事をするなどレミリアが許してくれるのかどうかが疑問に感じていたのだ。妹であるフランは気に食わないが、
悟空に懐いている以上はもう何もする必要がないにしてもだ、全ての主導権を握っているレミリア・スカーレットにだけは少しでも声をかけておいた方がいいと踏んだ上での考えだ。

それは咲夜が長年、レミリア・スカーレットに仕えていたという名のメイドとしての経験から出てくる案でもある。あっさりと二人は飲んでくれたので今、彼女から許しを請い、部屋にいるのだが…。


「こら、姉に向かってアイツと呼ばない。……で、悟空はどうやって地下室に侵入したのかしら?
 我が館に入るのなら門番が目をつけるはず。仮に寝ていたとしても咲夜や妖精メイドが気づくと思うんだけど。」


それでこそまるで不審者に対する目を悟空に向けていた。だが無理もない、何の前兆もなしに突然、地下室にいた。不法侵入もいいところなのだ。
最初はフランもそういう目で見ていたが遊びを通して決して悪い人ではないという事、そして只者じゃないという事ぐらいは見抜いていた、だからこそフランはそういう目で見るのを止めたが。
悟空に問いかけた質問を彼自身が答えようと口が動く前に、隣の少女が先に答える。


「なんかねー、おっきくて真っ暗な空間の隙間みたいなのが出来てね、其処から落ちてきたんだよ。」

「…空間の隙間? それは事実なのかしら?」

「神龍に乗って移動してる時に、いきなしでっけえ穴が表れてそれを覗き込んでたら吸い込まれちまってよ…。」

「は…? 神龍?そこにその隙間が出てきたって事か…。」


顎に手を沿え考え始める、威圧感に満ち溢れている青髪の少女ではあるがその幼さにより半分削られているようにも感じる。それと同時にやはりギャップも激しい。


「ああ。神龍ってのは…『ぐうぅぅぅぎゅるるるるる……!!』…わりい、その前にメシ食わせてくれ。」

「………。咲夜、食事の準備に取り掛かりなさい。私も何か食べたいわ。」

「はっ、かしこまりました…。では食事へご案内します。妹様も来てくださいね。」


そうして一時的に解散、レミリアの部屋から悟空と咲夜とフランは部屋を後にするとそのまま食事が用意されているであろう場所へと向かっていく、その通路を歩く途中――。
何やらフランが全員に聞こえるような声で突然語りだす、内容は自分の姉に対してだ。フランから見れば姉はかなり動揺しているのだとか、なんだとか。
悟空の腹の音に一瞬だけではあるが、呆然とした顔を浮かべている事に。そして悟空のマイペースぶりに少し動揺していた事に。何より自分の姉は館の主という事もあって、
他の勢力に舐められないように威厳を保っているのだとかなんだとか、というのもこの世界では自分達も一つの勢力であり、自分達以外にも沢山の勢力が存在しているという事。

これらすべての話は実際に見た訳ではないが、そういう話を聞いたからなのだと言う。何より自分達は他の勢力と比べて“主があまりにも若すぎる”。それが特徴的なのだとか。
だからこそ他の勢力から舐められる傾向にあるのだという。だからこそ、こういう緊急事態には何よりも威厳を保っておかなければならないのではないかとかなんだとか。

悟空を交えて咲夜も入ってきて、部屋に行くまでの話は姉の事や幻想郷の事などの話題だった。話す内容があまりにも長すぎる故に悟空は部屋につくまでの間、つまり、
通路を歩くまでの間は短く感じていた。




       其の三 「紅魔館の偉い人」




部屋を支配する効果音――いや、食事をする一方的な音。それが今、部屋を制圧している。そして全員から視線を向けられているのは謎の少年、孫悟空。
巨大なテーブルの左側の位置で椅子に座っているのはフラン、そして隣に紫色の髪をした少女、反対側に位置して座るのは孫悟空、そして近くには咲夜と赤髪の女性が立っていた。
更にこれらの境界として位置するように椅子に座るは紅魔館の主…なのだが、全員が悟空を覗いて、今現在食事中の彼へと視線を向けていた。


ガツガツガツガツガツ、ガツガツガツ…バリバリバリバリバリ……。


いや、周りを囲んでいる妖精メイド達もそうだ、一人残らず、呆れたような目線、驚いたような目視、唖然とするような表情、様々な反応が飛び交う中で、


もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…ガツガツガツガツガツガツ…バリバリバリ…。


ただ食事をする彼はきっと微笑ましい光景なのは間違いないのだが、


ズズズズズズズ……。


テーブルに置かれた数え切れないほどの沢山の銀色の皿が乗せられており、


「―――おかわりーっ!!」

「……もう貴方に出す食事なんてないわ。」


咄嗟に咲夜は反応する。きっともっと言いたい事は沢山あるのだろう、とフランは察していた。無理もない、数え切れないほどテーブルをスペース的意味で侵略するが如く、
お皿は大量に配置されていたのだから、それを赤い髪の女性は指を折って数えていたが途中で挫折。不貞腐れたようにその食べる様子を眺めていた。


「…これで、一体何皿でしょうかね。」


赤い髪の女はとうとう口を開いた。それは女にとって悟空が食べ始めた頃から疑問にしていた事だ。


「これで100皿ね。おかわり含めたら101皿だよ。」

「(このままだと紅魔館の食料が食べ尽くされる…!)……それくらいにしておけ、お前の分はもうないわ。」

「そっか、なら仕方ねぇな。腹八分目っていうしな。」

「「「――――まだ食べれるの!?」」」


レミリア、フラン、咲夜、紅魔館でもっとも危険視されている人物の声が重なる。食事を共にしていた二人は出していないが驚いた表情を浮かべているのだった。
あちこちでなにやら妖精メイドが騒ぎ立てる声が聞こえ始める、もはや悟空は未知の存在としての位置を確立させつつある、突然姿を現した事もあるがここまでの大食いっぷりに、
妖精達も何か思い始めているようだった。当の本人である悟空は大して気にしていない様子ではあるものの、がやがやと少し慌しくなっていたのでレミリアはその雰囲気を察して、
話題を変えようと口を開こうとした途端――。


「フラン、口にソースがついてるぞ。」

「…ふえ? ええっと…あれ?……んん。」


それは気に入らない光景。メイド長である咲夜にとっては正に今の現状だ。フランはすぐに近くの布巾を探し始めるが見つからず、すると不意に悟空が布巾を片手にソースを拭いていた。
悟空としては過去に似たような事があったため、その時に行ったやり方を今ついやってしまっただけに過ぎないのだが、咲夜とレミリアは複雑な感情を抱きながらその様子を見る、無意識の内に嫉妬にも似た感情を抱いている事を彼は知らずに。


「ん? どうしたんだおめぇ達? もしかしてオラが食いすぎちまった事を怒ってんのか?」


きょとん、とした顔で咲夜とレミリアの顔を見つめる、本当に無意識にやっている事で悪気はないのだ、二人はその感情を押さえ込みつつも何事もなかったかのように、


「…怒ってなどないわ。で、話は変わるけどお前は一体これからどうするつもりだい?」


改めて話題は変える事に成功、――したのだが話の中心部分となるものはあまりにもごく単純。そして問いは至ってシンプル。紅色の瞳が悟空の姿を写しながら問いかけている。
いくら見た目は幼い子供であるかといって、その瞬間だけは本物の悪魔としての存在感、館の主として偉大なる者、それは明らかにこの場所では目立つ存在でありまた見方を変えれば、
異端である存在。鋭い翼が“恐ろしい何か”であるという事を物語るようにそこには存在している、悟空は投げられた質問に対して返答をする。


「どうするって…そりゃ元のトコに帰りてえんだけど、さっきから神龍を呼んでも返事がねえんだ。」

「神龍? …さっきからお前は神龍って言葉を使うけど、意味がわからない。」


つまりその言葉の意味を教えろ、という事だ。呼んでも、などと言っている辺り、乗り物などという物ではなく人物という意味が含んでいるのではないかとレミリアは予想をしていた。


「神龍はドラゴンボールを7つ集めると現れんだ。そんでどんな願いでも叶えてくれる。」


つまり、彼が言うにはドラゴンボールと呼ばれる物を七つ揃えばどんな願いでも叶えられるという事。そして実際に叶えるという名の行動を起こすの神龍であるという事。
どんな願い事でも叶う、それは幻想のような話。故におとぎ話だ。少年の語る話はまるでおとぎ話でも語るかのようだった、何処かの昔話にでもありそうな、内容。


「けど、願いを使いすぎた所為でドラゴンボールにマイナスエネルギーが溢れて邪悪龍っちゅう悪い龍が現れて地球をめちゃくちゃにしようとしたんだ。
 なんとかそいつらを倒す事はできたけど、そん時に神龍と約束してて、オラは下界にはもう戻れねえんだ。」


何やら話がどんどん飛躍していく事をフラン以外のメンバーは感じていた。他の妖精メイド達はもう話についていけなくなってしまっている様子だ、未だに妖精同士で小声で話したり、
首を傾げたりと反応は様々。フラン自身はただ無邪気に話を聞いているだけ、珍しいおとぎ話にでも耳を傾けるように、だが無理もない。この世界にとって悟空の話はとても興味深い物である。


「……つまりお前は元の世界に戻りたいってこと?」

「ああ!別に急いではねえけどな。」

「だったら此処に一緒に住もうよ!お姉様も咲夜も、美鈴もパチュリーもいいでしょ!?」


会話の途中から少し強引に今まで黙っていたフランが入ってくる、あまりにも唐突で問題視されかねない発言内容、今まで黙っていたパチュリーや美鈴も思わず目が丸くなるのだった。
レミリアも咲夜も口を入れたくなるほどの内容ではあったが何より一番驚いているのは――。


「へ…? 住むってオラが此処にか? う~~ん、神龍がいいってんならオラは構わねえぞ。」

「いっ、妹様…!さすがにそれはどうかと思いますが…っ。」

「…でも部屋ならまだ沢山あるんでしょう?妖精メイドだってそこまで多いわけじゃないし。問題ないんじゃない?」


分厚い本を膝に置いた薄い紫色の衣装を身に纏う少女がついに口を出す。


「パチュリー様、食費という問題を見過ごさないでください……。」

「でも確かに食費だけはかかりますよね。」


パチュリーと呼ばれる少女に続いて、赤髪の女性までもが口を挟み。


「まあそれはあいつに動物でも狩らせて勝手に食べておけば…。」

「お、お嬢様まで…得体の知れない者をこの紅魔館に置いておくわけには…!」

「やたらと突っかかってくるけど、咲夜はどうかしたのかしら?」


パチュリーと呼ばれる少女は咲夜と何やら揉め始める、咲夜という立場はこの紅魔館を守らなければいけないという使命がある故にそのような事を言うのだろうとレミリアは思っていた。
またもや妖精メイド達は悟空がこの館に住むという話の方向性へ定まってきている事に驚きを隠せずに話を始めてしまう始末である。暫くするとその空気を切るように、レミリアは立ち上がって――。


「―――元の世界に戻るまでなら別に構わない。」


それは、新たな予想もつかない運命が待ち受けていそうな言葉。そして今少女が口にした内容はそれを象徴するかのような物だった。これはきっと、紅魔館の中での大きな事件。
事例のない前代未聞の事態、それはきっとこの世界、幻想郷全体に響かせるような現象。しかし今の彼等はその先に待ち受けている未来をまだ知らない―――。


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