【特集】『円高』を徹底検証!今後を占う
2010年10月16日

【視線】「米国の財政状況は本当に苦しいのか?」米国の金保有額は世界一!?

視線 先月、米財政収支米財務省が発表した8月の財政収支は905億3000万ドルの赤字となった。前年同月の1035億6000万ドルの赤字から縮小したものの、赤字は23カ月連続と過去最長を更新した。これにより、今年度累計赤字は1兆2596億ドルとなった。米国の財政状況は確かに苦しい。しかし米国は本当に金がないのだろうか。

 面白い数字がある。2010年5月の世界の金保有額によるとによると米国の金保有額は、8965.7トンとダントツで第1位である。第2位はドイツ3754.3トン、第3位はIMF3318.8トン、第4位イタリア2701.9トン、第5位フランス2683.8トンである。ちなみに日本は第8位の843.4トンである。

 戦前の金兌換制度の時点では、ドル紙幣の発行の裏づけとなる同額の金を保有しており、米国では、金1オンスが35ドルで固定されていた。しかし1971年のベトナム戦争で財政悪化となった米国はついに金とドルの兌換を停止(ニクソン・ショック)し、ドルは高いボラティリティを持つ通貨となった。金兌換停止から40年余を経て、ドルは1ドル=360円から1ドル=80円台に大幅に下落となった。

 逆に、金は1トロイオンス=35ドルから、なんと1300ドル台に上昇している。とくに、アメリカ合衆国の金保有量の膨大さは、改めて、認識すべきである。なぜなら日本は843.3トンと世界では8番目であるが、財政黒字である日本が持っている資産の多くの部分はドル紙幣(米国債)にほかならない。結局、米国は日本に大きく減価が予想される大量のドル紙幣を握らせ、己はしっかりと、最高値を更新し続けている金をせっせと貯めているのだ。

 金価格は日本では対ドルで円高のため影が薄いように見えるものの、じりじり値を上げている。要するに相対的に主要国の通貨価値の目減りを懸念してのものと思われる。また、通貨・財政危機が投資家や国レベルでの不安感をかきたて、金に対する需要をさらに高めているともいえる。米国は世界の基軸通貨であるドルの凋落を東洋の忠実な同盟国に肩代わりさせようとしか見えない。


提供 日本インタビュ新聞社 Media-IR at 12:33 | コラム