雨中の行進
(文=取材ディレクター・細見明日子)
9月23日。日本で初めてのリカバリー・パレードが、東京・新宿で行われました。
前日までの猛暑とはうって変わり、当日は秋雨前線の南下であいにくの雨。取材班が集合場所の新宿中央公園に到着した午前10時には、雨粒が道路をたたきつけ、頭上で雷鳴が轟いていました。
パレードはいったいどうなるのだろう・・・そんな心配をよそに、準備委員会のメンバーが、一人、また一人と集まってきます。「この天気は、神様が自分たちの本気を試しているんだ!」と意気込むメンバーたち。雨なら雨を楽しもうと、ビニール製のカッパに直接メッセージを書いて着る人の姿も見られます。そんな彼らの熱意が伝わったのか、パレード開始前にかけて、雨は小降りに。
集合時間の12時を過ぎると、参加者が続々と集まってきました。呼びかけに応じた当事者たち、家族や友人、支援者・・・ 準備委員会では、どのくらいの人が集まってくれるのか心配していましたが、フタを開けてみるとその数なんと350人! 当初の予想200人をはるかに上回るものでした。
午後1時、いよいよパレード開始。東京都庁前を出発し、甲州街道に出た隊列は、新宿駅南口を通過し、明治通りから歌舞伎町という、まさに新宿の中心部を1時間かけて行進していきます。琉球太鼓、コーラス、ベリーダンスなどで道行く人々にアピール。心を一つにし、「回復の喜び」を体中で表現しました。
これまで依存症や心の病の当事者が姿を見せる機会の少なかった日本で、その首都・東京、それも祝日の人出でにぎわう新宿の街中を、回復者たちが堂々と歩いていく――― 「治らない病気」と誤解されていた彼らが、大きな一歩を踏み出した歴史的瞬間です。社会の偏見を取り除き、同じ苦しみを持つ人たちに希望を与えたい。そんな彼らの勇気ある姿に、私は改めて心を打たれました。
パレード終盤は再び雨が強まり、コーラスの歌声もかき消すほどのどしゃ降りに。そんな中、メンバーたちは声が枯れるまで歌い続け、午後2時過ぎ無事ゴールしました。委員長・笹井健次さんの絶叫に近い挨拶、沸き起こるあたたかい拍手。この日パレードに参加した一人一人の想いが、雨に滲んで心にしみこんでくるような感動的なフィナーレでした。
※ パレードのようすは、10月19日(火)放送の「福祉ネットワーク」でお伝えします。ぜひご覧ください!
福祉ネットワーク わたしたちの"回復" -日本初 リカバリー・パレード-
「リカバリー・パレード」の経緯については前回のコラムをご参照ください。