民主党の小沢一郎元代表を強制起訴すべきだとした東京第5検察審査会の起訴議決(4日公表)に対し小沢氏は15日、議決取り消しなどを求めて行政訴訟を起こしたが、法曹関係者からは小沢氏側の手法を疑問視する声が出ている。「刑事司法手続き上の判断の是非を行政訴訟で争うこと自体が不適切」との理由からだ。これに対し、小沢氏の弁護団は「裁判所の判断を仰ぐのは当然の権利だ」と強調している。
行政訴訟は、国や自治体といった行政機関の処分の適法性などを争う裁判。強制起訴手続きを巡る行政訴訟は過去に例がない。
東京地裁は既に、検察官役の弁護士(指定弁護士)の候補者を推薦するよう第二東京弁護士会に依頼しているが、小沢氏側は判決までの間、手続きの執行停止や弁護士指定の「仮差し止め」も申し立てた。
小沢氏は資金管理団体「陸山会」が04年に取得した土地の購入費約3億4000万円を、04年分ではなく05年分の政治資金収支報告書に記載した政治資金規正法違反容疑で告発され、容疑不十分で不起訴となった。
第5審査会は、第2段階の審査で土地購入の原資となった小沢氏の手持ち資金4億円の記載がないことを「犯罪事実」に追加して起訴議決をした。
小沢氏側は「4億円の問題は2回の議決を経ていない」として議決全体を違法と主張。検察審査会法に不服申し立ての規定がないため行政訴訟を起こした。検察審査会の議決については、行政訴訟の対象とならないとした最高裁判例(66年)があるが、小沢氏側は「強制起訴制度導入前の判例であり、適用外だ」としている。
だが、法曹関係者の間には「刑事司法手続き上の判断の是非を行政訴訟で争うこと自体が不適切」との声が多く、東京地裁が議決の違法性を検討せずに小沢氏側の訴えを「門前払い」する可能性もあるとの見方もある。
小沢氏側は行政訴訟で敗訴した場合でも、強制起訴後の刑事裁判で、起訴までの手続きの違法性を主張するとみられ、複数の法曹関係者は「議決通り起訴されれば、刑事裁判で一つの争点になるだろう」と指摘した。【和田武士、山本将克】
毎日新聞 2010年10月16日 0時16分(最終更新 10月16日 0時38分)