中国 反日デモ 保守派主導の可能性
【北京=矢板明夫】中国各地で16、17の両日に起きた一連の反日デモは、発生時期や場所などから自然発生的なものではなく、当局による「官製デモ」だった形跡がいくつもうかがえる。胡錦濤指導部が最近、見せ始めた日中関係の修復の動きとも矛盾しており、対日強硬姿勢を求める保守勢力がデモを主導した可能性もある。
今回の反日デモで最も腑(ふ)に落ちないのは、沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の周辺で起きた中国漁船衝突事件で、日本側に勾留(こうりゅう)された中国人船長が釈放、帰国してから約3週間が経過し、全体の空気としては事態が“終息”に向かっている中で行われたという点だ。
船長が9月25日に帰国したことを受け、中国メディアによる日本批判のトーンは徐々に弱まり、インターネットの反日の書き込みも減少する傾向にあった。しかし、デモの参加者は、最も反日感情が激しい時期だった9月18日の北京におけるデモの約200人に比べ、今回は数万人に膨らんだ。
さらに、これまでに中国で発生した反日デモは、北京や香港在住の「保釣(釣魚島を守る意味)人士」と呼ばれる反日活動家らがかかわっていたことがほとんどだ。しかし、彼らは今回、今月16日にデモが行われることを「事前には知らなかった」と、産経新聞に答えている。
また、中国共産党の第17期中央委員会第5回総会(5中総会)が開会中で、会期中は全国で警戒態勢が強化されるのが通例であり、この時期にデモを実施することは当局の黙認がなければ難しい。
一方、デモが発生した場所は、日本大使館がある北京や、日本も出展している万博が開かれている上海などではなく、日本人や日本企業が圧倒的に少ない内陸部の四川省成都市、河南省鄭州市などだったことも、不可解だ。これらの都市の経済発展は沿海部に比べ遅れており、大学卒業者の就職難が最も深刻な地域でもある。現地の指導者は若者の不満をガス抜きさせるために、今回の反日デモを組織、あるいは黙認した可能性もある。
ある中国筋は、反日デモが起きた省の主要指導者のほとんどが保守派であることに注目する。そして「軍をはじめとする保守勢力は、(改革派の)温家宝首相が主導する現在の対日政策を『弱腰だ』と批判しており、5中総会の開会中を狙って大学生にデモを行わせ、政権に圧力を加えようとしているのではないか」と分析する。
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