患者の免疫を活発にしてがんを攻撃させ、治療する「がんワクチン」の臨床試験で、東京大学医科学研究所が、投与した患者に出血があり、有害な事象と判定したのに、同じワクチンを使っているほかの病院には伝えていなかったことがわかりました。
東京大学医科学研究所が開発を進めている「がんワクチン」は、全国の50以上の病院で薬剤としての安全性や効果を確かめる臨床試験が行われています。研究所の清木元治所長らによりますと、おととし、研究所の付属病院でワクチンを投与したすい臓がんの患者で以前の手術の傷あと近くから出血があり、入院が予定よりも1週間延びたということです。病院では「ワクチンとの因果関係が否定できない有害な事象」と判定し、これ以降、臨床試験の対象から出血しやすい病状の患者を外す対応を取ったとしています。しかし、同じワクチンを使って臨床試験を行っているほかの病院にはこの情報を伝えていなかったことがわかりました。これについて清木所長は「これ以前にほかの病院で起きた同じような出血は会合や論文で報告し、情報は共有していた。あらためて報告すべき内容ではなかったと考えている」と話しました。