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【国際】

成都デモ 「同じ中国人なのにやめて」

2010年10月18日 朝刊

 中国四川省成都市の大規模反日デモから一夜明けた17日、営業を再開したイトーヨーカ堂春熙(しゅんき)店周辺には、特殊警察官や武装警察官1000人以上が配備され、週末の歩行者天国は異様な雰囲気に包まれた。襲撃を受けた小さな飲食店にもデモのつめ跡が残された。

 「同じ中国人じゃないの! お願いだからやめて!」。妊娠4カ月の楊芳さん(29)は16日、副社長を務める日本料理店「北海道」の前で、デモ隊に向かって両手を広げ、泣きながら懇願した。しかし「日本料理店なんか壊してしまえ!」と叫びながら、なだれのように押し寄せてきたデモ隊の波から逃げるのがやっと。なすすべがなかった。

 一夜明けた17日、こん棒や投石で割られたガラス戸は鋭くむきだしのまま。冷蔵庫なども動かない。一升瓶は50本以上割られ、店内には日本酒のにおいが漂った。

 12年前、縫製の技術研修生として愛知県一宮市に3年間暮らした際に日本語を覚えた。帰国後「故郷の人たちに日本の食文化を紹介できれば」と、兄が立ち上げた日本料理店を手伝うことに。「中国人はみな、愛国心は持っている。でも、あそこまで暴徒化するなんて…」と、同胞の暴走が信じられない。

 前日にデモ隊が集結したイトーヨーカ堂周辺の広場は封鎖され、警察官らが隊列を組んで目を光らせる。記者がカメラを向けると「大衆を刺激するから撮るな」と警察官に阻止された。

 近くにある日本料理店「八千代」では、ガラスや冷蔵庫などが破壊され、破片が足の踏み場もないほどに散乱。同店の中国人関係者は「おれたちが何の悪いことをしたっていうんだ」とぼうぜんと話した。(成都・朝田憲祐)

 

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