【パリ福原直樹】パリなどフランス各地で16日、サルコジ政権の年金改革に反発する労働者ら、約300万人(労組発表)が参加する大規模なデモが行われた。12日に続き、9月以降5回目で、国民の政権への不満の高まりを示している。労組は19日にもデモを行い政府に圧力をかける構えだが、今回は多数の高校生がデモに参加し、過激化しているのが特徴だ。
フランスの「全国高校生同盟」によると、15日には全国約4300校のうち900校で授業ボイコットや学校封鎖があり、高校生のデモを警備していた警官が投石で負傷。16日のデモにも多くの高校生が参加した。サルコジ政権は警察に対し、高校生への公権力行使を極力、控えるよう要請したが、思わぬ高校生の過激化に手を焼いている状況だ。
15日午前、パリ市南部にあるビュッフォン中学・高校(生徒数約2000人)の正門前に、生徒に授業ボイコットを求める約50人の高校生が集結していた。「授業は平常通り続いているが、生徒の多くが出席していない」。「活動家」という女子生徒(16)が話す。近くで数十人の警官隊が目を光らせていた。
女子生徒によるとボイコット開始は12日。この日は全仏で350万人(労組発表)が参加するストも行われた。仏政権は、赤字解消のため年金の支払期間延長を主張しているが、女子生徒は「このままでは若者の年金負担が増大する」「政府は高校生の声を聞くべきだ。来週もボイコットを続け、デモにも参加する」と話した。
仏紙によると、高校生の活動は主に全国高校生同盟が組織。13日にいったん収まったが14日には再び活発化し、同盟によると約1000の高校で授業ボイコットなどが行われた。15日にも全土でデモが行われ、警官隊と対立。100人以上の高校生が拘束されたり、パリで警官約10人が負傷したとの情報もある。
仏政府は15日、「高校生にも表現の自由がある。彼らの疑問に答える用意がある」とする一方、「ボイコットは行うべきではない」と呼びかけている。与党「国民運動連合」幹部は15日、「親や教師が責任を持つべきだ」とも話した。
政権の年金改革に反対する動きでは16日、ストで高速鉄道(TGV)が最高で約7割運休するなど交通網も乱れている。全国の石油精製所のストも5日目に入り、閉店するガソリンスタンドも出始めた。またトラック運転手の組合もスト参加を決定。物流などにも大きな影響が出る可能性が高まっている。一方、ストによる燃料給油管の閉鎖でシャルル・ドゴール空港の燃料備蓄枯渇が懸念されていたが、16日に供給が再開された。
サルコジ政権は今年、退職年齢を60歳から62歳へ延長するなどの年金改革法案を提出。法案の主要部分はすでに議会を通過しており、政権側はあくまでストに対抗する姿勢を示している。
毎日新聞 2010年10月17日 20時07分(最終更新 10月17日 22時00分)