2010年10月18日7時0分
土葬されたイスラム教徒たちが眠る墓地で祈る日本ムスリム協会名誉会長の樋口美作さん=山梨県甲州市塩山牛奥の文殊院
山中にある墓地建設予定地の手前に立つ建設反対の看板=栃木県足利市板倉町
日本に住むイスラム教徒の間で墓地不足が深刻だ。土葬のため、地域住民から理解を得られず、行政の許可がなかなか下りない。土葬に嫌悪感を抱く人が増えたのと、2001年の9・11テロの影響でイスラム教徒への偏見が強まったためという。外国人が約10万人、日本人が約1万人と推計される国内イスラム教徒の多くが日本で永眠の地を求めている。
「新墓地建設 絶対反対!」。栃木県足利市板倉町の小高い山の入り口を看板が囲む。200メートルほど入った所に、東京都豊島区南大塚にモスク(イスラム礼拝所)を置く宗教法人日本イスラーム文化センターが墓地を作ろうとしている。
同センターは2008年春、板倉町の住民に墓地建設について説明した。約990平方メートルに75区画を作る計画だ。遺体はイスラム教の教えに従って土葬する。
住民は反発した。説明から10日ほどで72人分の反対署名を集め、足利市と同センターに提出した。理由として挙げたのは、土葬であること、イスラム教であること、自然を壊すこと。住民の一人は話す。「この地域は閉鎖的な考えの住民も多く、異宗教に理解が浅い。住民の心の中を乱さないでほしい」
近くの女性(87)は「宗教のことはよくわからないけど土葬が嫌だ」という。一方で、建設予定地の近くに先祖の墓がある男性(62)は「日本人も外国に移住し、墓を作っている人はたくさんいる。反対はできない」と話す。
足利市環境政策課には、住民663人から建設反対の署名が届き、同センターからは建設を求める約600人分の嘆願書が届いた。同課は昨秋と今夏の2回、同センターに「許可するためには地元の理解が不可欠」と伝えた。