きょうの社説 2010年10月18日

◎おしゃれメッセ 高めたい産業デザイン力
 ファッション産業都市金沢をアピールする「おしゃれメッセ2010“かなざわごのみ ”」が金沢21世紀美術館などで開かれ、生活工芸やアパレルを中心に最新デザインの商品、ファッションの紹介と商談が行われてきた。これを機に、工芸や繊維関係だけでなく、デザイン力によって地域のものづくり産業の競争力を高める取り組みを強めたい。

 商品の魅力アップのため、企業が産業デザインを重視するようになって久しいが、最近 の動きとして、地域の中小製造企業の優れた技術にデザイン力を付加して企業競争力を向上させる活動に一段と力を入れる自治体が目立つ。

 高度成長期のような大量消費がもはや望めない上、中国など新興国から大量に入る商品 の品質も向上しているためであり、経済産業省も「感性価値の創造」という新しい概念を用いて製造業の競争力を強化する方針を打ち出すようになった。従来の価値基準の機能や性能、価格だけでなく、消費者の感性に訴えて感動や共感を呼ぶ魅力(感性価値)のある製品づくりを推進する狙いである。

 経産省は2008年度から3年間を「感性価値創造イヤー」と位置づけて、各種活動を 展開している。おしゃれメッセの協賛事業である「感性価値デザイン展」はその一環であり、ものづくりにおいてデザイン力がますます重要なことを示している。

 石川県は産業デザインの振興にいち早く取り組んできた自治体の一つであり、県デザイ ンセンターは企業経営者を対象にデザインの戦略的活用を指導する「デザイン経営塾」や、デザイン面からのクラフト産業支援、金沢美大生らが地元企業の製品のデザインを提案する事業なども行っている。

 デザイナー任せではなく、経営幹部がデザインに関して意識改革を図り、販売・ブラン ド戦略として推進する必要性が認識されてきており、富山県は富大芸術文化学部との連携活動としてデザイン経営塾を開設している。

 企業間、地域間の競争が今後、一段と激しくなると認識して、デザイン力を高める官民 の取り組みを強化してもらいたい。

◎イラン油田撤退 資源戦略の立て直し急務
 政府系企業の国際石油開発帝石が、イランのアザデガン油田開発から完全撤退すること を正式に発表した。イランの核開発阻止のため経済制裁措置を強化する米国に配慮せざるを得なかったためだが、長い交渉の末に獲得した石油権益が国際政治力学によって奪われた形でもあり、たいへん残念である。

 日本企業はイラクの油田開発でも、欧米メジャーや中国企業に挟まれて苦戦を強いられ ている。石油・天然ガスの自主開発比率を現在の20%から40%に引き上げることをめざす資源安保戦略を早急に立て直す必要がある。

 イランにとって日本は長年、最大の貿易相手国であり、2004年にアザデガン油田の 75%の権益を日本が獲得した。しかし、イランの核開発に強硬姿勢をとる米国の「圧力」を受けて、06年に自ら権益を10%に縮小した。

 イランの核問題は深刻化するばかりで、今年6月の国連の追加制裁決議を受けて米国は 、金融・エネルギー部門でイランと取引のある企業に制裁を加える措置を打ち出した。日本は独自の追加制裁措置からエネルギー取引は除外し、アザデガン油田の権益を確保したい考えだったが、国際帝石が米国の制裁対象に指定される恐れがあり、撤退を決めたという。

 核開発防止のため国連決議を順守し、日米同盟も重視しなければならない日本として、 やむを得ない判断とはいえ、日本独自の資源外交を展開できないことに歯がみする思いも禁じ得ない。

 米国の制裁措置に伴って欧州の石油大手4社もイランへの投資を中止しており、同国で の油田開発は中国の「独壇場」という状況である。中国は国連決議に賛成しながらも追加制裁は控え、イランとの関係を維持している。

 日本政府、企業は石油の中東依存を改めるため、アジア、アフリカや米国、オーストラ リアなど自主開発地の分散化をめざしているが、国際的な資源獲得競争は激化の一方である。資金力の弱さをどうカバーして「日の丸油田」を確保していくか、戦略の練り直しを急いでもらいたい。