早期退職で漂う閉塞感
再度のリストラも検討
それだけではない。決算の「数字づくり」(関係者)にも必死だ。
10年6月期決算は、09年6月期の16億6400万円の赤字から一転、約3億円の黒字に持ち込んだ。といっても収益が改善したわけではなく、むしろ募集した社員を含む早期退職者の割増退職金などで特別損失12億円が計上されるとあって、今回も赤字は必至と見られていた。
だが、2期連続の赤字となれば、監査法人は地方公共団体といった公共部門の監査を引き受けられなくなる。この部門は特にクライアント全体に占める割合が高く、「これを失うことだけはなんとしても避けたかった」(新日本関係者)。
そこで手始めに、年に2回支払う職員の賞与を一律25万円カット。それでも足りず、最後には今年4~6月の社員の給料を減らし、「収支がほぼゼロになるまで調整した」(関係者)。
さらに複数の関係者によれば、提携先である英監査法人大手アーンスト・アンド・ヤングに毎年支払う看板使用料まで一時的に未払いとなっている模様。金額は「売り上げの7%」(関係者)というから、わずか70億円すら支払えない状況ともいえる。
9月後半には約400人の早期退職者を再度募集。むろん今回も割増退職金が支給されるはずだが、「残ってほしい職員には割増提示していない」(関係者)との声も漏れ伝わってくる。人事が辞めさせたがっているのは誰なのか、憶測は人間関係をギスギスさせ、社内には閉塞感が漂う。今期中には再度、「社員のリストラも数十人規模で行う」(新日本関係者)ことまで検討されている。
この12月、監査法人は今年の試験合格者を採用する。すでにこうした新日本の事情を察知した合格者たちは、あずさ、トーマツに殺到しており、「新日本を選ぶ受験生が極端に減っている」(大手監査法人の採用担当者)。皮肉にも新日本が望むとおりに、今年の採用数は減ることになりそうなのだ。
だが新日本には、最大手として会計士の適正な増員を図る責務がある。それが企業、ひいては投資家に対する務めでもあるはずだ。それを果たさずして自らの都合ばかりを優先させるのなら、業界はおろか経済界からの信頼をも失いかねない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)