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時評コラム

猪瀬直樹の「眼からウロコ」

戦略なきODAを早急に考え直すべきだ

日本のODAのほとんどが外国企業に流れてしまっている

吉村氏 日本はODAで、水と衛生にかんしては全世界の40%の資金を拠出してやっています。ところが、出し手が日本のお金でも、実際に現地で工事をやっているのは水メジャーなどの欧米の会社がほとんどです。日本が国策として世界の水ビジネスで貢献するためには、日本の会社の実績をつくらなければいけない。ODAには「タイド」と「アンタイド」という2種類があります。「タイド」というのはいわゆる「ひも付き」のことですが、こういうかたちをつかって日本の民間企業が海外でいちど事業をやらなければいけません。つまり受注は日本の会社にかぎります、ということです。

 タイド、アンタイドについてもう少し説明を加えたい。

 タイドODAとは、調達先が援助国に限定されている有償資金協力と贈与(無償資金協力・技術協力)のことだ。日本のODAの場合は、援助国である日本の企業が調達先として事業を受注する。

 アンタイドODAとは、調達先が援助国以外の国にも開かれている有償資金協力と贈与(無償資金協力・技術協力)のことだ。

 日本は、タイドODAを活用したらよい。しかし、現状では、日本のタイド率(ODAに占めるタイドODAの割合)はきわめて低い。

吉村氏 日本のODAのタイド率は3%です。のこり97%は、海外の会社に流れているということです。

猪瀬 どうしてそうなっているんですか。

吉村氏 1989〜1992年にかけて、世界中から「日本はタイドがあまりにも多すぎる」という批判があり、外務省がどんどん開放してしまったのです。そのころは日本の国内も景気がよかったので、国内メーカーは日本で仕事をしていればよかった。それがいままでずっとつづいてきてしまっています。ところが、海外に出られないということは、国際的な競争力がつかないということです。

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