バブル時代の「ひも付きODA批判」の後遺症を引きずる
バブル時代のころ、「ひも付きODA批判」が盛んに行われた。ODAを海外でやると、日本の会社がみんなもっていってしまう、ということが言われた。また、資金が環流して、さまざまな不正が横行するではないかという論調があった。日本企業が独占的に受注するタイドODAは、援助になっていない「喜ばれない援助」とも言われた。
しかし、現在の世界の趨勢は変わってきている。
吉村氏 アメリカはいまだにアンタイド率は28%と低いんです。のこり7割はいつも「ひも付き」なんです。中国はアフリカでものすごいODAをやっていますが、1万人くらい連れて行ってしまいます。
猪瀬 「連れて行ってしまう」?
吉村氏 (工事に必要な)モノとヒトを連れて行って……。
猪瀬 要するに中国人が工事の作業員まで引き受けるから、現地にノウハウもお金も落ちない、というわけですね。
吉村氏 現地には一切お金が落ちないかたちのODAになっています。それを中国は国益と考えているんですね。
日本のアンタイドODAは、他の国が受注してもっていってしまう。他国のODAはタイドが多いから、日本が参加することはできない。日本は国際入札における受注が減り、実績をあげられないから、ますます国際入札に参加できなくなる。悪循環が起きているのだ。
タイドODAを積極的に活用して、日本企業が実績を積んでいくことが重要だ。バブルのころの「ひも付きODA批判」のまま思考停止状態でいると、日本は国際入札から取り残されてしまうのではないか。