しーた
2010年10月09日

私と絵(3) -自由気ままが「薬」-(本文)

テーマ:あすぺさんの生育過程

昨日の4コマ漫画のつづきの本文です。


昨日の4コマ漫画はコチラ→■Click!


☆いままでのお話はコチラ↓

■私と絵(1) -なんで怒るの?!-

■私と絵(2) -何を描いたらいいの?-


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さて、小学校へあがってから、私は学校では絵が描けなくなってしまいました。そして、母は大きく動揺していました。


おそらく、そのことを父方の祖母に(母の姑)に相談したのでしょう。


小学校2年生の後半だったと思います。

祖母が開いていた絵の教室に通うことになりました。


実は、私の祖母は元小学校の先生で、退職後は、自宅で週末に子供向けの絵の教室をひらいていたのです。とは言っても、祖母自身は絵はほとんど描けない人でした(!)が、夫(私の祖父)が画家だったので、そのネームバリュー?で絵画教室を開いていたのです。小学生以下の子供の絵画教室を祖母が、中学生以上の大人向けの油絵教室を祖父が受け持っていました。(祖父の絵画教室は本格的な美術の指導をしていたようです。)


祖母は、小学校の先生だった経験を生かして、子供たちがのびのびと楽しく絵を描けるように自由気ままな絵画教室を開いていました。


母から、「おばあちゃんの絵の教室行くか?ちょっと遠いとこやけど。」といわれたとき、嬉しくて仕方がありませんでした。私は、この祖母のことが誰よりも大好きだったのです。


そのとき、母がこう言っていたのを覚えています。

「おばあちゃんの絵の教室には、登校拒否(※注)の子や自閉症の子も通っているらしい。自閉症の子もとてもよくなったらしい。」

※注:当時は不登校のことを登校拒否と表現していました。


このときにも、「自閉症」という言葉が出てきたのです。

以前の記事にも書きましたが、母はことあるごとに私にたいして「自閉症の子みたいやから、○○するのはやめなさい!」と叱ることがよくありました。このときも、「自閉症」の言葉がでてきたので非常に印象に残っていました。

「自閉症の子もよくなったぐらいやから、あんたもよくなるやろ。」そんな含みを感じました。


祖母は、元小学校の先生だったこともあって、小さな子供の扱いがとても上手かったのです。家では怒られてばかり、否定的な言葉ばかりでしたが、祖母は違いました。


よいことをすれば「しーたちゃんはええ子やなぁ。」と誉めてくれるし、よくないことをすれば、きちんと説明して注意をしてくれました。頭ごなしに叱ることも叩かれることもありませんでした。


ですから、祖母の言うことは、とてもよくわかるので、祖母の前ではいつも穏やかでいられました。他の同年代のいとこと比べることもなく、私という1人の人間をきちんと見てくれて、尊重してくれている…そんな事を子供ながらに肌で感じていました。



そんなわけで、祖母の絵画教室へいくことになりました。

そのときに、私は2つ条件を出しました。


・私がおばあちゃんの孫だということは他の子には言わないでほしい。

 孫だから特別扱いされていると思われたくないから。


・孫だからといって、特別扱いはしないでほしい。

 他の子と同じように扱ってほしい。


母は、そんな硬いこと言わんと…みたいな雰囲気でしたが、

祖母は「そうか。しーたちゃんがそういうんやったら、そうしよう。えらいなぁ。」と快諾してくれました。


ですから、絵の教室では、祖母のことを「先生」と呼ぶことにしました。祖母も約束をきちんと守ってくれました。(もちろん、教室が終わったあとは、「おばあちゃんと孫」に戻りました。)


私の家から、電車を乗り継いで30分+徒歩15分ぐらいの祖母の家へ通いました。最初の2回は母も一緒でしたが、それ以降は1人で通いました。


知らない子供ばかりでとても緊張しましたが、どの子もリラックスして、おのおのに好きなように絵を描いていました。友達同士グループで固まってひそひそ話しをするようなことも全くありませんでした。他の子のことを気にせず、絵を描くことに集中できました。


絵の教室では、毎回、お題が出されます。そのお題で描きたいものを描きたいように描けばよいのです。クレヨンを使おうが絵の具を使おうが自由です。お題を聞いて、自分が描きたいと思ったものなら、ちょっとお題から外れていてもいいのです。どうしても思い浮かばなければ、好きなものを描いてよいのです。


たとえば、ある日のお題は「虫」でした。

私は普段から虫取りが大好きで、昆虫をよく知っていました。ですから、嬉しくて描きまくりました。

そのときに、横の子が昆虫の足の本数がわからないと言っていたので、教えてあげました。

「セミは6本やで。クモは8本やねん。」たったこれだけの会話でしたが、その子が「へー!よう知ってんなぁ!」と感心してくれてとても嬉しかったのを覚えています。


そして、このときに描いた絵は、学校で描いた絵とは別人の絵のように、すばらしい作品ができたのです。周りの子も、母も祖母もびっくりして、ものすごく誉めてもらえました。


特に、黒で縁取った虫たちの中で、1つだけ大きなきれいな蝶だけは、白で縁取ったのです。

私としても、それが最高に気に入りました。蝶がとても美しく繊細な感じになって、他の虫よりも目立つ存在となったのです。

「うわー!めっちゃきれいになったーーーーー!」


それが、当時の人の感覚では驚くような感性だったようです。(今じゃ普通のことですが。)

母「あんた…。これ、白で縁取って…。なんで、白で縁取ったん??」

私「黒で縁取ってばかりやとなんか…うーん、なんとなく、白で縁取ったらええような気がしたから…」

母・祖母「抜群の感性や!!」


この絵を絵の教室の展覧会にも出してもらうと、訪れた他のこの保護者も、「あの絵すごいなぁ!へー」と言っているのが聞こえました。


なによりも、この作品を描くのが楽しくて楽しくてどんどんとアイデアが広がって自分でも「最高!」と思える作品を描けたことで、私は自分自身に大きな自信を取り戻せたのです。


こうして、祖母の絵の教室でのびのびと絵を描くことで、私は少しずつ自信を取り戻していきました。


学校では、相変わらずダメダメ劣等生でしたが、週1回の祖母の絵の教室と祖母のおかげで、私が自分自身を認めてもらえる安心できる場所ができたのでした。


祖母は、子供達を比べることは絶対にしませんでした。

絵の教室では、子供の邪魔にならないように見回りながら、困っている子には心をほぐすようなひと言をかけ、みんなにそれぞれのよいところを誉める言葉をかけて回っていました。

技術的な指導は全くなかったけれど、みんなリラックスしていい絵を描いていました。子供が絵を描くために一番大切なのは、上手くかけないことを恐れずに、思いっきり描ける心なのだと思います。


祖母は、なによりも、誉めるタイミングが上手いのです。

わざとらしくないのです。


自己否定感が強くなっていると、誉められても素直に喜べないのです。

「そんなの誉められるほどのことでもないのに、大げさに誉めて、わざとらしい」

「なんでも誉めたら喜んでやると思ってるのか?その手に乗るもんか!」

そんな風に感じてしまうのです。


けれど、祖母の誉め方は、違っていました。

よい事をした瞬間に誉めてくれました。

そして、他の人と違ったのは、「なぜ、それが誉められるほどよいことなのか」ということが納得できる説明がついていたのです。ですから、誉められたことに納得ができたことで自分の自信へとつながったのです。


最近、「誉めて育てる」ということが強調されています。

けれど、なんでもかんでも誉め言葉をかければそれでよい、というものではありません。

自己否定感の強い人の場合、本人が何故誉められたのかを納得できていなければ、逆効果になることもあるのです。


私自身も、塾の講師の時代に、誉めるとひねくれた態度で、逆に不信感を表現する生徒に何人も出会いました。そんなときには、必ず、最近のその子の行動を具体例に挙げて、「誉められるべき根拠」について説明をしました。そうすることで、やっと「誉められた」ことに納得をして、「誉められた」ことを受け入れ、本当の自信へとつながったのです。


こうしたことに気がつくことができたのも、祖母との関係があったからだったと思います。

私が、後に塾の講師になったとき(すでに他界していました)、私の心の中には常にこの祖母の行動を規範としていたように思います。


少し話が逸れました。

そんなわけで、私は祖母が大好きで、とても尊敬していました。


この祖母が、私の人生をよい方向へと導いてくれた最初の人だったのです。

そして、この祖母から吸収したことが、今も私を間違った道へと踏み外さないように守ってくれているように思います。


大好きな祖母の話なので、つい、いろいろと書き連ねてしまいました。

記事を書きながら、祖母とのいろいろな思い出を辿れてとても幸せな気分ですニコニコ



ひとりひとりの子供の意思を尊重すること


それだけで、大人自身の考え方や行動の全てが自然に変わる。

その結果として、その子供が変わるのです。


子供が変わらないのは、大人が変わらないからなのです。

子供を変えたければ、大人が変わること。


私自身は、そんな風に考えています。


大人が変わらなければ

子供は変わらない

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