私と絵(4) -なんだか運が悪い-(本文)
テーマ:あすぺさんの生育過程
今までのお話はコチラ↓
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昨日の記事『私と絵(4) -なんだか運が悪い-』 の続きです。
前回までの記事に書いたように、私は小学校へ入ってから、萎縮してしまい
のびのびとして絵が描けなくなっていました。そして、祖母の絵の教室で、のびのびと絵を描けるようになり、周りからも再び絵を誉めてもらえるようになったことで、すこしずつ自信を取り戻しはじめました。
そして、小学校3年生になり、クラスがえで担任も変わりました。
今度の担任の先生は、男の先生でしたが、とても穏やかでにこやかな先生でした。子供にも人気がありました。私も、この先生のことは好きでした。
そんな頃、図画工作の授業で、サインペンや鉛筆で静物画を描くことを教えてもらったのです。
確か、一番初めは、自分の上靴の片方を脱いで机の上において、それを鉛筆でそっくりに描くというものでした。
それまでは、頭の中にあるイメージで絵を描く程度でした。
初めて緻密な線画を描きました。いままでよりも、はるかに楽しかったのです。
細かく、細かく、それらしく見えるように描き方を工夫したり、指でこすってぼかして靴の汚れた感じを出したり、工夫すればするほど、どんどんと本物らしくなっていく…
それが、楽しくて楽しくてたまりませんでした。
その次が、細いサインペンで自転車を描くというお題でした。
下書きなしでいきなり描くので、どきどきしました。初めに大きな車輪の輪郭を描いたのですが、ちょっと
ゆがんでしまいました。(実は、これが後にがっかりの元になってしまうのですが…)
それでも、どんどんと描きこむうちに、自転車らしくなってきました。とにかく夢中で、描き込みました。
初めに描いた車輪の形と大きさがまずかったため、少し自転車が画用紙の右側へ寄ってしまいました。
けれど、自転車そのものはとてもよく描けました。
その数日後だったと思います。
担任の先生に呼ばれました。
「この自転車の絵を、今度の参観日の校内展覧会に出そうと思うけど、いいかな?」
「はい!」
「じゃぁ、裏に組と名前を書いて。」
その場で、しっかりと「3年1組 あすぺ」と書いて渡しました。
そして、各学年から集められた子供の絵が、学校の正面入り口を入ったところに張り出されました。
クラスごとに並んでその絵や作品を見に行くことになりました。正面入り口の一番目立つ場所に私の絵やその他の子の絵が貼り出されていました。
一目見て、「あ!私の絵や!」とわかりました。
しかし…
なぜか、私の絵だけ名札には「3年」だけで、名前が書かれていなかったのです。
「あれ???なんで、私のだけ名前ないんやろ…」
ちょっとがっかりしました。
でも、そのときの私には、自分の名前が出ていようがいまいが、自分の作品がこうして選ばれて貼り出された、という事実が何よりも嬉しかったのです。だから、「ま、いっか。」と思いました。
すると、何人かの子が、「あの自転車うまいなぁー!」「3年しか書いてへんなー」という声が聞こえました。とても嬉しかったのですが、当時の私は、学校ではほとんどしゃべらない子だったので、「私のやねん!」と言えずニコニコしていました。
「でも、やっぱり、ちょっとは誰かに知って欲しいなぁ。」
そんな気持ちがわいてきました。
そして、勇気を振り絞って、私の前に並んでいた子に、
「あの3年ってかいてる自転車の絵、私のやねん」
と小さな声で言ってみました。
すると、その子がとても驚いて
「えっ!!ほんま?めっちゃうまいやん!!!すごいなぁ!」
と言ってくれたのです。
私はもうそれだけで満足でした。
ニコニコしていました。
そうして、特に名札に名前がなかったことはあまりくやしいとも思わず、ニコニコして家に帰りました。
この一部始終を母に伝えると…
母「ええっ?!名前がなかった???なんであんただけ???」
私「さぁ。なんかしらんけど、なかってん。けど、隣の子に言うたら、めっちゃびくりしてた」
母「なんで、自分のやって言わへんかったん?誰もあんたの絵やって分かれへんやんかっ!!!(怒)」
私「え…???」
実はその当時の私にとっては、その絵が自分のだと他の人にわからなくってもええやん。という感覚でした。自分の絵を見た人が口々に誉めてくれていた。つまり、自分の描いた絵がすばらしいという評価された、それだけで十分満足で嬉しかったのです。その絵を描いたのが私であるということを知ってもらうことは、特に重大なことではなかったのです。
ですから、「誰もあんたの絵やってわかれへんやんか」と言われても、今ひとつピンとこなかったのです。
母は、私の反応を見て呆れていました。
そして、その話を聞いた祖母は、「くやしぃ~!」と歯軋りしながら悔しがったそうです。(母談)
こうして、小学校生活で初の私の晴れ舞台は終わったのでした。
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後日、絵が返却されました。
それを見て、なぜ私の名前がなかったのかわかりました。
返却された私の絵は、なぜか規定の画用紙より小さくなっていました。
そう!
私の描いた絵は右側へ寄っていたため、左側に空間ができていたのです。
先生は、バランスを整えるために、絵を提出する前に左側を少し切ってくれていたのです。
もう、みなさん、お分かりですよね?
その切り取った部分の裏に、名前が書かれていたのです!
文章ではわかりにくいので、マンガで描くとこういうこと↓
そのことに先生は気がつかずに、提出してしまったのでしょう。
貼り出す作業の時点では、私の絵は名前がなかったため、名札を作った人が名前をかけなかったということだったのでしょう。
おそらく、学年ごとにまとめて出されてので、3年生であるということだけはわかったのでしょうね。
そういう理由で、私の絵には「3年」としかかかれなかったのでした。
やさしい担任のせっかくの心配りが、裏目に出てしまったのでした。
母、ひと言。
「あんた…なんか…運悪いなぁ…」
まさに、その後の「肝心なときに運が悪い」という私の人生を象徴するようなできごとだったような気がします
ちょっと残念だけど
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