戦時においては、いかなる交戦者もプロパガンダを行う。それは、損害を隠蔽し、戦果を過大に主張する形で行われる。
日本においては、ノモンハン事件における戦果と損耗の捏造が有名であるが、これは戦後、敗北であったことが明らかになった。しかし、大量の損害を出したことは、当時靖国神社に合祀された人数や、厚生省の遺族年金支給者から明らかであったが、当時の政府はこれを認めなかった。また、ミッドウェイ海戦の損害も隠蔽された。
このようなことは、日本に限って行われたことではなかった。太平洋戦争初頭のアメリカでは、相次ぐ敗北とフィリピンの失陥などで、米国内に不満が高まったほか、前線の兵士に「日本軍には勝てない」という観念が発生しつつあった。
このため、アメリカ軍は、Colin P. Kelly, Jr大尉という一人の英雄を捏造した。彼は、フィリピンに上陸する日本軍の輸送船を爆撃するためにB-17爆撃機に搭乗して出撃したが、日本海軍によって撃墜され戦死する。
アメリカ軍は、彼を「日本機動部隊を攻撃し、爆撃により戦艦1隻を撃沈し、他の戦艦に体当たり攻撃を敢行して、これを大破した。Kelly大尉は、体当たりの前に自分以外の搭乗員を脱出させて、一人で戦死した。」という話をでっちあげ、戦後もそれを訂正しなかった。
しかし、日本側の記録との学術的な照合が進み、Kelly大尉は機動部隊攻撃などしていなかったこと、彼が船団に向けて投下した爆弾は、１発も命中しなかったこと、彼を撃墜したのが日本のエースパイロット「Sakai Saburo」であったことなどが明らかになり、アメリカによるプロパガンダであることが明らかになった。現在では、アメリカもKelly大尉は作られた英雄であることを認めている。
このような、作為的なプロパガンダのほか、戦時の戦果認定は困難を極め、往々にして過大な報告数を記録する。太平洋で日米の記録した戦果を全面的に認めれば、アメリカ軍の撃墜機数は、日本が製造した全ての航空機を撃墜しても足りない数であり、日本軍の記録はそれほどではないが、アメリカ軍が作戦不能になるのに十分な数を撃墜している。このような誤差は戦闘の混乱などに起因しておきるものである。
WW2参加国の歴史家たちは、このような誤差を排除するために、相互の記録を詳細につき合わせ、ほぼ正確な戦果と損害を確認することに成功している。最近ではソ連が崩壊したため、ソ連の正確なデータが入手できるようになり、注目されている。