釣魚台/尖閣をめぐる日本の国ぐるみの排外主義に抗議します・後編(現状編)

前編(歴史編・先に読んでね)をふまえつつ、現状を見てみましょう。釣魚台/尖閣をめぐる日本の国ぐるみの排外主義については、批判すべきポイントがおもに3点あるとかんがえます。


1. 日本政府の釣魚台/尖閣への「実効支配」そのものが不当である

2010年9月の「衝突」は、けっして問題のはじまりではありません。前編(歴史編)からわかるように、いまの日本政府の「実効支配」そのものが、近代日本の琉球、台湾周辺にたいする植民地支配の延長線上にあります。今月11日の5カ国国防相会談について、産経は「北沢防衛相の「尖閣は日本の領土」に全面賛同なし」と報じましたが、そりゃあたりまえだろとしかいいようがありません。

いまの民主党政権は、ことし8月、韓国政府にだけ植民地支配の白々しい「おわび」をしていました(白々しいというのも、内容は1995年の村山談話から進歩しておらず、また元「慰安婦」などへの個人補償の責任もスルーしたままなので)。そして実際には、この新政権もまた、日本の植民地主義についてはまったく実質的な反省や改善の意志がないことが、ここでもはっきりと露呈しているわけです。むしろ、自民党時代には、海保に中国や台湾の漁民を逮捕させてはいても、すぐに送還という措置をとるのがいちおうは通例となっていましたから、この件にかんして民主党政権はより強硬派になったといえるでしょう。また、漁船拿捕(だほ)のあと、さっそく尖閣への自衛隊設置をとなえる民主党議員も出てきましたし、今後ますます民主党は批判の対象とされていくべきでしょう(「尖閣に自衛隊常駐を 民主党有志12人が声明」9月27日産経)。


2. 左右同根の言論状況・その1「中国が悪いんだ」論

media debuggerさんがいちはやく批判しているように、主要一般紙やその他の主要メディアなどは、左右問わずこの件について「中国が悪い」という見解を一致して示しています(「尖閣諸島=釣魚諸島の歴史的経緯は?」「続:尖閣諸島=釣魚諸島の歴史的経緯は?」)。右についてはいちいちあげるのもめんどくさいですが、左の代表格は日本共産党でしょう(「日本の領有は正当 尖閣諸島 問題解決の方向を考える」赤旗ウェブ版)。

しかしながら、前述の歴史的経緯をふまえれば、今回の「衝突」について「中国が日本の主権を侵害した」などとはけっしていえません。釣魚台/尖閣は近代日本が侵略したんだろという批判にたいし、日本政府はいわば「アーアーキコエナーイ」と耳をふさぎながら、ぶんどったものをいまだに抱えこみつづけているのであって、そのような状況のなかで今回の件もおこったわけです。そうした日本の侵略主義についてほおかむりしているかぎり、いかなるメディアも、左であろうが右であろうが関係なく、侵略主義の支持者にほかなりません。

もう一点、この「中国が悪いんだ」論において見のがせないのが、今回の件をきっかけに中国や台湾でおきた反日デモの参加者を、中国共産党の手先やあやつり人形であるかのようにかたる論調です。それらの反日デモには、1970年代からの保釣運動の活動家もいれば、今回あらたに参加した市民もいたことでしょうが、かれらが中国共産党の思惑とは関係なく動いていることは、陰謀論をとらないかぎりあきらかです(中国政府はむしろデモを警戒している、たとえば「漁船衝突、中国各地で抗議デモ 日本公館前で」9月18日共同)。他方、中国の「反日」デモはほんとうは「反日」ではなくて、いまの中国では表現しにくい体制への不満が、たまたま日本への批判というかたちで噴出しているだけだ、という主張もあるようです(これもmedia debuggerさんがとりあげていますが、たとえば田畑光永や丸川哲史など)。これは「中国が悪いんだ」論へのカウンターのつもりかもしれませんが、はたして実際にそうなりえているでしょうか。「悪い」といわれている「反日」が「ない」と主張しているだけで、その「反日」が批判として引き受けねばならないものだという可能性をはじめから排除しているだけだし、なによりこれは民衆の主体性の軽視です。

中国や台湾の民衆の日本にたいする怒りは、そういうものとしてきちんととらえねばなりません。日本政府は政権がかわっても、結局は侵略主義、植民地主義を改める気はないのであり、それが今回の件でも露呈しているのだから、中国や台湾の民衆が怒る理由はごく自然に推測がつくはずです。1990年代にはまだ、日本でもそうした点をある程度は配慮した報道もありましたが(たとえば前編(歴史編)で参照した山本剛士「尖閣の日中近代史」など)、もはやそうした指摘が日本の主要メディアからきこえてくることはなさそうです。



3. 左右同根の言論状況・その2「日中どっちもどっち」論

もちろん、2よりは冷静で穏健な意見も見られますが、しかしそれでもせいぜい「日中どっちもどっち」どまりの言論でしかありません。もっとも典型的なのは、1972時点での日中両政府が確認した「棚上げ」路線にもどろうという議論です。左右の中道路線はここに落ち着きそうです。ただしこうした議論もまた、けっきょくのところ日本の実効支配そのものを問うところまではいきません。あくまで問題は、領土をめぐる諸国間の国益対立ではない(少なくともそれだけではない)のであって、日本の実効支配が過去からの侵略主義に支えられていることが、なによりまず確認されるべきです。さもなくば、けっきょくはより穏健な国益主義の支持者となるにすぎないでしょう。

他方、一見してよりラディカルな主張もあります。釣魚台/尖閣を日中(or日中台)両属にしようとか、南極のように領土主権化されない領域にしようといった議論です。主唱者は、中国研究者の天児慧(早稲田大)や加々美光行(愛知大)ですが(天児「中国漁船拿捕 「脱国家主権」の新発想を」、9月25日東京新聞・加々美インタビューなど)、左派市民運動よりのブロガーや革新派の地方議員なども、こうした議論を肯定的にとりあげています(じょんのびblog「隔ての島から結びの島へ! 「無主」「両属」としての尖閣諸島(釣魚島)の構想を!」漢人明子・小金井市議の10月4日づけ「意見書」など)。

まず前提として、こうした「両属」論や「脱領土化」論は、ある土地をある国家が排他的に支配することをやめようという一般論のレベルにおいてならば、「最終的には」正しいということに同意できます。釣魚台/尖閣の近海で漁をいとなむ人びとのくらしを、領土国家の論理でふみにじるべきでないのはたしかなことです。ただしそうだとしても、この「最終的には」という留保はやはりはずせません。現状では日本の釣魚台/尖閣への侵略(いわゆる「実効支配」)がつづいているからです。この侵略行為も改め(させ)ることなしに、日本(政府であれ民衆であれ)が中国や台湾にたいして、釣魚台/尖閣を「共有物にしようよ」とか「脱領土化しようよ」とかもちかけるのは、なんともおかしな話ではないでしょうか。この釣魚台/尖閣問題について、日本と中国とは「どっちもどっち」の主体ではありえないのです。

さらにいえば、こうした「両属」論や「脱領土化」論は、それがもし「どっちもどっち」的前提を手つかずのまま残すとすれば、2の「中国が悪いんだ」論を批判できないだろうし、あるいはそれにとりこまれてしまう危険すらあります。日本による「実効支配」=継続中の侵略という点を点をすっとばした「両属」「脱領土化」論に、中国や台湾(政府であれ民衆であれ)が納得するはずがないでしょう。この点を理解しないかぎり、中国や台湾が「強硬」姿勢であるとか「自国の利益を優先している」といったバッシングには対抗できなくなるでしょう(現にできてないけど)。

他方、いわゆる東シナ海のガス田問題をとりあげて、中国の国益主義を非難する論調も、かなり以前から強くあります。また最近では、中国が同海域の海底に中国旗を立てたことがビジネス系コラムでとりあげられ、ネット右翼のバッシングのタネになっています(「海底に国旗を立てて領有権を主張する 中国に日本はこんなに無防備でいいのか」Diamond Online 9月22日)。こうした点についても、「どっちもどっち」論を温存したままでは批判的に見ていくことができないでしょう。たしかに中国政府もまた、主権国家間のパワーゲームの論理にのっとって行動しています。しかしその主権国家間のパワーゲームは、ヨーロッパが世界に広め、そして東アジアにおいては日本が強力に貫徹させた(させている)ものです。もし中国の国家主義を批判し改めさせたいなら、なによりまず日本の国家主義、侵略主義、植民地主義を徹底的に批判すべきでしょう。さもなくば、最終的には、それこそ主権国家間のパワーゲームにおいて、日本の国家主義の支持者になるしかありません。

***

さて、こうした視野をもつことによって、在日中国人への迫害を扇動する排外主義者への正しい批判も可能となります。

一例として「頑張れ日本! 全国行動委員会」(田母神俊雄や「チャンネル桜」の水島総などを中心に組織された新興の保守団体)発行の「月刊国民新聞」とやらを見てみましょう。この新聞を「頑張れなんたら」はビラとして渋谷の街頭で配っていたのですが、大筋では、中国共産党がこの釣魚台/尖閣問題を機に、民間人をあやつって、あるいは民間に政府の特殊部隊をまぎれこませて、いっきょに日本を侵略しようとしている、といったことが書いてあります。しかしだからといって、またウヨはとんでもない被害妄想をまきちらしているなと、笑ってもいられません。そのなかには、中国本土からの「侵略」にあわせて、在日中国人が「戦闘」を開始し、原発が破壊され、飲み水には毒が混入され、放火や略奪がおこるなどという、とんでもない流言がふくまれています。90年前の関東大震災において、こうした悪質な流言をつうじて朝鮮人虐殺が煽り立てられたことを、つよく連想させられます。そして、前編(歴史編)でとりあげたように、いまだ虐殺ではないにせよ、在日中国人への実際の迫害は実際に起きているのです。

こういうあからさまな排外主義の扇動者はごく一部にすぎない、まともにとりあうよりも放っておいたほうがいい、という人もいるでしょう。たしかに、こうした極右議員、言論人や在特会のような排外主義市民は、活発化したとはいえ、まだ右派の本流ではありません。しかしながら、こうした排外主義極右を日本においてのさばらせるのは、いったいなにでしょうか。それは警察や政治家だけでしょうか。むしろ、前述の2のような論調を作っている人びとこそ、こうした排外主義の土壌づくりのあきらかな共犯者であるし、またそれを3のような立場において容認あるいは軽視する人がいるとすれば、それもまた排外主義への共犯性を免れられないのではないでしょうか

***

したがって、わたしたちは、釣魚台/尖閣をめぐるこの国ぐるみの排外主義に対抗するための立場を以下の明確にするとともに、より多くの人びとが以下のような見地から日本の政府やメディアを批判することを呼びかけます。

1. 日本による釣魚台/尖閣の実効支配は、明治期に日本がはじめた東アジア侵略の延長線上にある。よって、日本政府はまずこの実効支配をやめ、海上保安庁を釣魚台/尖閣近海からひきあげさせるとともに、釣魚台/尖閣を清国からうやむやのうちに奪った事実を認めよ。釣魚台/尖閣の帰属の問題について日本の側からものをいうのは、その後のことである。

2. 2010年9月の中国漁船と海保の「衝突」を機に高まった日本の排外主義は、1の見地から全面的に批判されねばならない。「日本も中国もどっちもどっち」などの見地からあいまいな態度をとることなく、在日中国人への実際の迫害にたいして断固とした反対の立場を表明すべきである。



コメント

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No title

>たしかにあなたがたが日本の戦争犯罪を悔やみ
>真摯に反省し中国をはじめアジアとの真の友好を
>築きたいという思いは理解できる。
>しかし、だからといってさまざまな中国からの要求や
>圧力を日本側がのまないといけないというのは承服し
>かねます。

3. 左右同根の言論状況・その2「日中どっちもどっち」論をもういちど読んでください。いちおう親切にポイントだけかいつまんでいえば、日本の現在進行中の(過去の、だけじゃないよ)国家主義、侵略主義をなくさずに「中国は大国主義をやめようよ」なんていえないでしょ? ということ。

No title

早い話、戦争責任のある日本が悪いから
尖閣諸島はあきらめて中国に差し上げろって
ことがいいたいんですね?

たしかにあなたがたが日本の戦争犯罪を悔やみ
真摯に反省し中国をはじめアジアとの真の友好を
築きたいという思いは理解できる。
しかし、だからといってさまざまな中国からの要求や圧力を日本側がのまないといけないというのは承服しかねます。
「日本が過去に凶行に及び甚大な被害をもたらしたのだから、中国の言い分は基本的には聞いてあげるべきだ! 中国に対してNO!という拒否の意思表示をすることはまかりならん!」というのならばあなた方の言い分には共感できませんね。

これは領土問題にかかわる話なんですから。
漁業や資源など人々の生活や経済にも影響のある安易に譲れない問題ですよ。
尖閣が完全に中国のものと判定されてしまうと、一番マイナスの影響を受ける可能性があるのは沖縄の人々ではないですか。

あと、日本共産党ですら、憲法9条の平和的な話し合い
を前提にしたうえで、尖閣や北方領土も日本の領土であると明確に主張しています。

以上のわたしのコメントについてどう思いますか?
どうか建設的な話としての記事での反論をお待ちしています。

No title

歴史問題を語るなら、曲がりなりにも日本は謝罪している。次は中国の番だ。通化事件、引き上げる日本人を拉致したり集団強姦した事件など、中国は一切謝罪していない。

No title

米国が米墨戦争で得たニューメキシコ州は
メキシコに返還すべきですか?
米国の支配層は国家主権をインディアンに
返還すべきですか?
豪州政府は解体され、アボリジニに主権を
返還すべきですか?
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