今年はもう少しちゃんと更新しようと思ってたのに、早くもこんな状況・・・(苦笑)。なんか、忙しいという言葉では表現しきれない何か。これは忙しいんじゃないんだよねえ、きっと。以前に自分の仕事を「沢山のバスケットボールをお手玉しているジャグラー」とか「積み重ねた沢山のダンボールをヨロヨロしながら歩いている人を心配そうに見ている僕(結果、助けの手を出さざるを得ない)」みたいに表現した事がある。今の状況を敢えて例えるなら「舟底から水が染み出してくる穴を必死に塞いでいるも、次から次へと染み出しポイントが増えてくる(そして塞ぐのが間に合わない)」ってな感じか。アップアップな状況はこれまでと同じなんだけど、これまでと少し違うのは「恐怖」とか「瀕死」みたいな切迫感かしら。沈んじゃうよ〜っ!(苦笑)。
映画「アバター」を嫁さんと見て来た。ラッキーな事に観に行った映画館は3D上映だった。結論から言おう。こりゃ凄いよ!!。良いとか悪いとかじゃなくて、凄いのだ。だから観とかなくちゃダメです。映画館で。一番伝えたいのは、まずこれ。
何が凄いのか。そうだねえ、例えばテクノロジーとしてのSFXのターニングポイントってこれまで幾つあったかな?。未知との遭遇、スターウォーズ、ターミネーター、ジュラシック・パーク、マトリックス・・・などなど。CG技術で「おお、これは!」と思ったブレイクスルーは、やはりジュラシック・パークだったと思う。実在しない恐竜が群れをなして草原を駆け抜けているという映像。でも、それはどこかで「ああ、このCGは凄いな」という事を観客も了解済みでの、本物じゃない事を前提での「凄いな」だったと思うのだ、
「アバター」観て、こりゃ参ったなと思ったのは、ジュラシック・パークの時の「前提」なんか所詮インチキじゃねーか!ぐらいに、本当に宇宙のどこかにこういう世界が実際にあって、そこでこういう民族が本当にこうやって生活している、としか思えないような映像なのだ。もう何をどうひっくり返しても、この映像を観る限りそういう世界があるとしか思えないのだ。観ている最中、何度も「実際にはこんな世界は無いんだよ」と振り返らなきゃ行けない程、この世界観を形作っている映像は、存在感と説得力に満ちあふれていた。こりゃ、凄いね。陳腐な表現だけど、実写を遥かに超えている。
今まではCG技術として、テクスチャーがどうしたとか、モデリングがなんだとか、モーションキャプチャーがあれだとか、どこまでリアルに近づけるか、もっと言えばどこまでCGと分からないような映像とできるか、が一つの超えるべき目標としてずっとそこにあったと思う。個人的には、テクノロジーは日々その目標にどんどん近づいている感覚はありつつも、最後の一歩で「それがCGであること」を判別できてしまう事に、CG技術の限界を感じていた。それと同時に、まだCG映像であることが判別できる安堵感みたいなものも。
「アバター」は現段階における世界最高技術でのCGというだけでなく、それを更にブーストさせる飛び道具として「3D」を組み合わせて来た訳だ。飛び出る事よりも、奥行きを感じさせるため、慎重に且つ巧妙に適用された3Dは、これまでのCG映像だけではなし得なかった、圧倒的な説得力を獲得してしまったのだ。これが「もう、こういう世界が本当にあるとしか思えない」という感想に行き着かざるを得ない大きな理由であったと思う。
世界観の構築も非常に素晴らしい。SFファンタジーの世界観の善し悪しは、ある一定の常識ラインを踏まえつつ、どこまで突拍子も無く、しかしながらそれなりにリアリティのある想像力を発揮できるか、それを映像としてデザインに結実できるか、に依存する。飛びすぎてもダメ、センスが無くてもダメ、技術が無くてもダメ、それらが高レベルで協調し合わなければ、観客を圧倒する世界観は生まれない。その点、「アバター」は見事としか言う他無い。圧倒的な想像力。美しく、荒々しく、且つ完成度が高い。幾ら技術力を注ぎ込んでも、それを使って何を描くのかが最後は問われるのだ。聞く所によると監督のジェームス・キャメロンは、この映画の構想は何年も前からあったのだが、映像化する技術が追い付くのをずっと待ってたのだそうな。この逸話は、この映画を見終わった後に振り返ると、非常に説得力がある。正に、満を持しての待望の映画化だったのだろう。
ハッキリ言って、僕はジェームス・キャメロン作品はあまり好みじゃないし、今作だってストーリー自体は正直大した事無い(要はアラビアのロレンスだよね)。登場人物の描き方も古臭いし、オチも「おいおい、何でもアリかい!」と言う感じなんだけど、そういう細かい批評をぶっちぎるに十分な、映画史にとってメモリアルな、重要な作品であることは間違いない。良くも悪くも今年のオスカーは、今年を代表する「重要」な作品として、コレにあげるしかないだろう。そういう大きな何かを切り開いちゃった作品。言わずもがな、良い映画ってのと、観ておかなきゃいけない映画ってのは、往々にして異なるもの。なので得点としては★★★☆☆+ぐらいなんだけど、とにかくツベコベ言わずに観とけって事。それも映画館で観なくちゃダメ。そして可能な限り3Dで。映画というか「体験型アミューズメント」なんだな、これは。映画の未来が、それで良いかどうかは置いといて。
蛇足。恐らく映画中の99%ぐらいは実在しない世界=CG映像だと思うんだが、もはやアニメーションとこういう作品を区別するのはナンセンスなんじゃないだろうか。何が言いたいかというと、オスカーの長編アニメーション部門ってもう要らないんじゃないかな。いろんな意味で「アバター」はもう完全にアニメーション作品だ。