八月の濡れた砂
昭和46(1971年)、日活

監督・脚本:藤田敏八 
脚本:峰尾基三・大和屋竺 
撮影:萩原憲治 
美術:千葉和彦 
音楽:むつ・ひろし

出演:広瀬昌助・村野武範・中沢直人
    藤田みどり・テレサ野田・渡辺文雄
    地井武男・奈良あけみ

若者のやり場のないエネルギーを、独特なタッチで描いた青春映画。
時代を“気分”で見せる藤田敏八監督ならではの作品である。

夏の朝の浜辺で、町の高校生・清(広瀬昌助)は不良たちに強姦された少女・早苗(テレサ野田)に出会う。彼女は別荘に遊びに来ていたお嬢さんだった。また、清には健一郎(村野武範)という高校を退学になった元同級生の友人がいた。健一郎は父の死後、バーで働く母と関係を持っている中年男・亀井(渡辺文雄)をはじめ、偽善的で汚い大人たちすべてに憎悪を抱いていた。3人は次第に仲良くなっていく……。
突っぱっていながらも、最後の瞬間でシラケてしまう主人公たち。結局彼らの攻撃目標は、自分自身なのかも知れない。
大学闘争が後退を余儀なくされた1971年、目標を失った当時の若者たちは、シラケることしか出来なかったのだ。
名もない新人俳優たちを主役に起用して、無軌道な若者たちのひと夏の光と影≠哀感をこめて描く藤田監督の代表作。主題歌も印象的。
                      (ぴあシネマクラブ日本映画編2002〜2003より)