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軍事用無人機:拡大する需要 米コロラドで展示会

 ◇「兵士が死なない」「低コスト」の戦争を--

 無人の飛行機や車両を遠隔操作する最先端技術の開発業者らでつくる「国際無人機システム協会」(55カ国・組織、2100企業・団体)が8月24日から4日間、米西部コロラド州デンバーで無人機の展示会を開いた。会場は「兵士が死なない」「低コスト」の「未来戦争」をアピールするビジネスマンや軍人らであふれていた。【デンバー(米西部コロラド州)で大治朋子】

 ◇戦場からの要請

 「兵士を助ける『賢い犬』のイメージだ」。5万平方メートルもの巨大な展示会場。その一角で、米プログラム開発会社「SAIC」の設計士、ラルフ・コスタンティニ氏が米陸軍と共同開発中のサンプルを指さした。

 現在使われている陸軍の無人機は、搭載するカメラの映し出す映像を見ながら、兵士が遠隔操作する。だが「この『犬』は自分で映像を分析し、判断して動く」(コスタンティニ氏)。次世代兵士システムとも呼ばれ、司令役の兵士が「右45度」といえばその声に反応して方向転換。自動で標的を探し、攻撃することも可能だという。会場で講演した陸軍無人機プログラム代表のグレゴリー・ゴンザレス大佐は取材に対し「今後、無人機はアフガニスタンでさらに活躍する」と述べ、配備の拡大を示唆した。

 一方、米空軍はパイロットが米国内の基地から、イラクやアフガンで無人機を飛ばす。会場を訪れていた空軍士官学校のディーン・ブッシー大佐は「無人機同士が自動で情報を交換し合い、脅威を見つけて処理するシステムを開発中だ。完成は近い」と話した。実現すれば無人機5機がチームを作り、1機が「脅威」を認識すると、自動的に司令役となって残る4機に指示を出す。捜索や攻撃を「判断」して行うことも可能だという。

 空軍が自動化にこだわる背景には、戦場からの要請の高まりがある。無人機の訓練生は昨年、有人機のそれを空軍史上初めて上回った。無人機の新規購入数も、有人機の数を突破している。

 ◇「対北朝鮮の警備に」

 展示会場には、アジア系企業の姿もあった。台北市の航空会社は小型の無人航空機を開発。「欧米製に比べて安価だ。台湾でも上空からの警備に使われている」とアピールした。来秋、国際航空ショーが開催される韓国からは50人が参加。業界団体の一人は「北朝鮮との国境付近の警備に無人機は欠かせない」と語った。日本からは財団法人「防衛技術協会」の関係者ら15人余りが参加。その一人は「市場の現状調査のために来た」と話した。

 ◇「倫理」テーマ、催し1件のみ

 期間中、無人機の使用に伴う倫理的問題をテーマにした催しは1件だけだった。

 「武装無人機システムのための倫理」と題し、米海軍職員が司会。英シェフィールド大学のノエル・シャーキー教授は「無実の人々が無人機の爆撃で殺されている」と指摘。倫理的観点からの検証の必要性を訴えたが、それ以上の議論には至らなかった。

 国際無人機システム協会によると、4日間の日程で450余りの企業・団体が展示、6500人以上が参加した。米国防総省の無人機関連予算は今年、39億ドル(約3300億円)。米国は無人機の世界市場の65~70%を占める。同協会誌は「イラクやアフガンの戦争で、無人機市場はピークに達しようとしている」と指摘。業界は「不況知らず」(参加企業幹部)といわれ、期間中は連日、夕刻になるとパーティーが開催され、業界幹部と米軍関係者が懇談した。

毎日新聞 2010年9月27日 東京朝刊

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