Cold fusion debate heats up again
BBC News 3/23
「Cold fusion」は、日本語では「常温核融合」と表現されます。
核融合反応というものは、通常は非常に高い圧力と温度のもとで生じる反応
で、身近に存在する実例としては、「太陽」があります。
太陽には「核融合炉」という表示はされていませんが、それは現在、水素の
核融合反応によってエネルギーを生み出し、私達の惑星・地球の生命の全て
を育んでいます。(将来はもっと重い元素で核融合が起きるのだそうです)
核融合反応から非常に大きなエネルギーが取り出せる、という事は事実では
あるのですが、残念ながらまだ人間がそれを安全に制御しながら利用できる
段階には至っていません … それが実現されるかどうかも、現時点では
定かではありません。
「常温核融合」という言葉は、核融合反応がより低い温度と圧力のもとで
生じている事を示す為に使われている言葉です。その反応の成立条件が
通常の「核融合反応」とあまりに違いすぎる為、それが本物の科学的現象
なのか、それとも他の反応によって生じている現象に核融合という言葉を
かぶせただけのまやかしなのか、という事が激しい議論を引き起こしても
きました。
さて、今回は …
常温核融合についての長年の議論は、今週米国で開催されている米国化学会
の会議の場で新しい刺激を得ています
「Cold fusion(常温核融合)」というものについて初めて言及されたのは、
今から20年ほど前の月曜日の事でした。それを発表したMartin・Fleischmann
とStanley・Ponsが、それがクリーン・エネルギーの無限の源になる、と
主張したのです。
彼らの実験を追試する試みは失敗に終わっています。ですが研究者達の中には、
常温核融合が可能だ、と主張する人達が現在も存在しています。
今回の会合では、fusion power(核融合によるエネルギー)を発生させる、
と主張するいくつかのアプローチが検討される予定になっています。
American Chemical Society(米国化学学会)は、これまでも会合の場で
常温核融合に関連するセッションが設けられてきました。彼らは、自分達が
それを行わないなら、議論のための適当なフォーラムが存在しないだろうと
示唆しています。
過去において信用されなかったアプローチの否定的な響きを避けるために、
この分野の研究は、現在「low-energy nuclear reactions:LENR(低エネル
ギー核反応)」という範疇で論じられています。
2007年の会合で、LENRセッションのACS programの議長を務めたGopal・
Coimbatoreは、「エネルギー危機に直面しているこの世界では、すべての
可能性に探求するだけの価値があるのです」、と語っています。
ヒートアップする議論
常温核融合のprinciple(原理)は、核融合反応を作り出す為の他のメカニズム、
焼けつくように熱いガスを閉じこめておく為に、巨大なレーザーもしくは
磁気によって『閉鎖された空間』を用いる、というものに反しています。
PonsとFleischmannは、それをシンプルかつ室温で稼働する装置、electrolytic
cell(電解槽)と呼ばれるものを使用して、電流を取り出したのです。
彼らは、電解槽の温度が上昇した事を観測しました。それは電解槽の内部で
核融合反応が生じ、エネルギーが発生した事を示唆する、と彼らは結論づけた
のです。
しかし、その後に世界中で実験が無数に繰り返され、米国エネルギー省によって
常温核融合の研究が広範囲にチェックされ、フランスでPonsとFleischmann達が
自らそのアプローチに数年をかけて取り組んだにもかかわらず、常温核融合は
実際の現象としては証明されなかったのです。
現在「low-energy nuclear reactions:LENR(低エネルギー核反応)」の
アプローチに取り組んでいる研究者達は、初期の欠陥のある発表が災いして、
この分野の研究は無視され続け、慢性的な資金提供の不足に苦しめられて
いる、と語っています。
University of Oxford(オックスフォード大学)の理論物理学の教授である
Frank・Closeは、常温核融合の主張に関する遙かに大きな問題は、その分野
のあらゆる研究の結果が、independently verified(独立した機関による
検証を受けていない)という部分にあるのだ、と語っています … それは
最初の発表を苦しめた問題だったのですが。
「20年という時間によって、何一つ本質的な変化は生じていません。私は、
今、何が語られたとしてもまったく驚きません」、と教授はBBCに語りました。
「この話は、科学について主張で生じた「wrong results(間違った結果)」
の、非常に興味深い記録なのです」
PonsとFleischmannが20年前に行ったオリジナルの研究で用いられた電解漕の
特徴の多くが、より最近の研究でも用いられています。電解漕の電極に
用いられている電極のタイプや、水がa heavy isotope of hydrogen(水素の
重い同位元素)から作られる、といったような事が引き継がれているのです。
まったく新しいあるアプローチが、北海道大学の研究者によって説明される
予定になっています。彼は、圧縮した水素とphenanthrene(フェナントレン)
と呼ばれる化学物質で満たされた小空間で、unexplained heat(説明が出来
ない熱)が発生した事を観察したのです。
Close教授は、PonsとFleischmannが20年前に「cold fusion:常温核融合」と
名付けられた現象について発表して以来、既知の理論では説明がつかない
多くの不可解な現象が見いだされている、と語っています。
「私がweird phenomenon(怪しい現象)を拾い上げ、それを常温核融合という
名称で呼ぶなら、リポーターの興味を引くだろうという事は理解しています。
(
猫による追記 確かに「常温核融合」のインパクトは強いみたい。
この記事へのアクセス数がそれを物語っています) 科学の世界にその現象
を認めさせる、というのは明らかに完全に別の問題なのです」
猫足
「cold fusion:常温核融合」という言葉を耳にした段階で、「いんちき」が
自動的にインプットされ、思考が停止してしまうというのが一番の問題だ、と
いうClose教授の指摘は、非常に示唆に富んでいます。
「low-energy nuclear reactions:LENR(低エネルギー核反応)」という
範疇で語られている複数の現象が、「解明されていない何らかの現象」で
ある可能性が有るにも関わらず、最初から「常温核融合は、既に再現できない
事が判明している」という事で「第三者による検証が行われない」事の方が、
確かにより懸念される事なのです。
もちろん、どう話を聞いても「?」というものも含まれてはいるのですが、
実際には20年という長期間にわたって、複数の異なる現象が「常温核融合」
というラベルが災いして放置されてきたのかもしれない、と指摘されると
耳が痛い気がします。
百科事典読書をしていた小学生の頃、なぜ複数の項目の間で同じ概念に
「ニュアンスの違い」が存在するのか?、と問いかけたら、編者の方が
「概念体系と言葉」が何を意味するのか、という事を説明してくださいました。
「他者と話をする場合、意思疎通の為のベースとなる語彙が同じものを
指し示しているかどうかは、常にチェックする必要がある」、という事を
小学生に理解できるように丁寧に教えてくださった方は、「道具としての
言葉」の怖さを知っていた方だったのだと思います。
子どもの時にそれを教えてもらえた幸せに改めて感謝しつつ、この記事を
眺めています。
「
低エネルギー核反応」
「新型インフルエンザ」は、非常に事態の展開が早いです。
まず記事の日付を確かめ、必ず表紙で最新情報を見てくださいね。