2010年10月17日0時55分
中国河南省鄭州市で16日に起きた反日デモで、参加者は「日本製品はボイコットを」「日本人は中国から出て行け」などと書かれた横断幕を掲げた=AP
中国四川省成都市で16日、反日デモをする学生たち=ロイター
【北京=古谷浩一、成都=林望】中国の四川省成都など少なくとも3都市で16日、数千人規模の反日デモがあり、日系スーパーのガラスが割られるなどした。尖閣諸島問題を巡り東京の中国大使館前で同日、中国に対する抗議デモが予定されたことなどに反発し、インターネットや携帯電話を通じてデモが呼びかけられていた。
大規模な反日デモが中国各地で起きたのは2005年4月、日本の国連安保理常任理事国入りの動きや、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝に対する反発が広がった時以来となる。
尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で悪化した日中関係は、今月初めにブリュッセルで菅直人首相と温家宝(ウェン・チアパオ)首相が会談し、関係修復の動きが進んでいたが、中国での根強い反日感情が示された形だ。今月下旬のハノイでの開催に向けて調整が進んでいる日中首脳会談など、両国関係改善への動きにも影響を与えるとみられる。
北京の日本大使館や成都の日系企業駐在員らによると、16日午後2時(日本時間同3時)ごろから成都市のイトーヨーカ堂と伊勢丹の前に千人以上の若者らが集結し、「釣魚島(尖閣諸島)を返せ」などと叫び始めた。周囲の群衆も参加して数千人規模にふくれあがり、石やペットボトルも投げられた。イトーヨーカ堂は臨時休業し、客らを避難させた。窓ガラス2枚が割られ、シャッターも壊されたという。重慶の日本総領事館によると、成都市在住の日本人は300人前後で、けが人の情報などはないという。
中国の新華社通信などによると、陝西省西安市では7千人以上の学生たちが「日本製品を買うな」などと叫びながら行進。日本料理店のドアのガラスが割られたほか、一部が日系スポーツ用品店に押し入り、治安当局に排除された。河南省鄭州市でもデモがあったという。
中国のネット上では13日ごろから、東京の中国大使館前での抗議デモ計画に反発する形で、各地でデモの呼びかけが出ていた。また、尖閣諸島の問題を巡り、日本の中国大使館などに発煙筒が投げられたりする事件が相次いでいることが報じられ、市民の対日感情を刺激していた。
日本大使館は16日、中国外務省に対し、在留邦人の安全確保などを要請した。
東京ではこの日、尖閣諸島での漁船衝突事件に抗議する民間団体主催のデモがあり、主催者発表で3200人(警察発表1800人)が日の丸やプラカードを掲げ、「中国による主権侵害を許さない」などと気勢を上げた。
これに対し、中国外務省の馬朝旭報道局長は同日、日本政府に対して「重大な関心を表明した」との談話を発表した。中国大使館の人員や施設の安全を確保するよう日本側に求めたという。