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特別給付金、戦没者妻が敗訴 大阪地裁判決

2010年10月16日

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 先の戦争で夫を亡くした妻を対象に国が10年に一度支給する「特別給付金」の通知が届かず、受給できなかったとして、大阪府内の女性2人が国や大阪府、大阪市に未払い分や弁護士費用の計約1千万円の支払いを求めた訴訟の判決が15日、大阪地裁であった。揖斐(いび)潔裁判長は「すべての支給対象者に個別に通知するのは難しく、法的な義務もない」と述べ、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

 特別給付金は厚生労働省の所管で、支給のたびに法律が施行され、これまで計5回、対象者に支払われてきた。3年以内に市町村に申請しないと受給権を失う制度で、原告側弁護団によると、死亡した人も含め延べ約8万人分(計約760億円)が未払いになっているという。

 原告は、夫がミャンマー(ビルマ)で戦死した野村香苗さん(91)=大阪市=と、夫を中国で亡くした関百合子さん(89)=大阪府箕面市。

 野村さんは大阪市内で転居した後の93年以降の計380万円、関さんは三重県から大阪府内へ転居した後の73年以降の計560万円を受け取れなかった。2人は、総務省が所管する恩給法に基づく公務扶助料は申請して受け取っており「厚労省が恩給受給者名簿と照合していれば不備は生じなかった」と訴えていた。

 判決は、戦争被害は国民が等しく我慢しなければならず、憲法は補償を想定していないとする過去の最高裁判決を引用。「特別給付金は戦没者の妻を特別に慰謝するために設けられたもので、憲法で保障された権利ではない」とし、過去にさかのぼって支給しなくても違憲とはいえないと判断した。(岡本玄)

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