2010年10月15日23時44分
荒川弘さんの自画像イラスト
新聞週間(15日〜21日)にちなんだ日本新聞協会のインタビューで、漫画家の荒川弘さんに聞いた。
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■ずっと付き合う
「新聞によって、報道する立場や見解が少しずつ違うでしょう。いろいろな新聞を読みたいと思っているんです」。現在、単行本26巻で累計4500万部という大ヒットを飛ばしている漫画「鋼の錬金術師」(スクウェア・エニックス)を生んだ人だ。
「鋼の錬金術師」は、錬金術が力をもつ異世界が舞台。錬金術師のエルリック兄弟は、死んだ母親を生き返らせようと、禁じられた「人体錬成」に手を染めて失敗。その代償として失った体を取り戻すため、2人は旅に出る。「月刊少年ガンガン」で連載し、6月に最終回を迎えた。単行本最終巻の27巻は11月に刊行予定だ。
物語を作るうえで、新聞は大切な情報源だったという。例えば、主人公である兄、エドワードがなくしたのは右手と左足。彼は「機械鎧(オートメイル)」と呼ばれる義肢をつけている。「義手や義足関係の記事が役に立ちました」
「人体錬成」のほかにも、「人造人間(ホムンクルス)」「合成獣(キメラ)」など、身体を改造したキャラクターが大勢登場する。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)など、身体分野の記事は興味をもって読んでいます。研究の進化のスピードがすごいですよね」
さらに、各紙が例年8月を中心に特集する戦争をめぐる記事は、「作中で描く戦乱のヒントになった」と振り返る。
荒川さんは、北海道・十勝の酪農農家に生まれた。朝刊は、前日の夕刊とともに昼ごろ郵便局が配達していたという。中学生のころ、地元紙に1コマ漫画を投稿していた。採用されると800円の原稿料がもらえる。「毎月の小遣いがなかったから、稼ごうと思って。採用されたのは2、3回でした」