一方、これらの事業者と、事業者の遵法状況を監視する権限が付与されるのが、青少年委員会、総務大臣、経済産業大臣の3者だ。3者には、是正命令、立入検査、報告徴収など強大な監督権限が与えられる。また、青少年委員会関係者が守秘義務に反した場合や、これらの事業者が有害情報の削除義務などを怠った場合に、刑事罰を課す規定も盛り込んだ。
ただ、出席した関係者によると、内閣部会と青少年特別委員会が3月19日に開いた合同部会では、同法案に対し「有害情報の定義が困難」「現状のフィルタリングの義務化は時期尚早」「個人のウェブ管理者にまで多大な負担を負わせるもので、インターネット活動を萎縮させる」「悪意の発信者が悪意の書き込みによって、次々と(一般の)サイトを閉鎖に追い込む事態を招きかねない」「予算や人員の検討が不足している」といった問題指摘の声が相次いだらしい。
今国会での成立を目指し
法案を押し切った高市議員
しかし、萩生田光一内閣部会部会長代理が「基本的には、この法案が自民党の考え方である」「民主党の出方にもよるが、ゴールデンウィーク前までには法案を提出したい。民主党が早めに提出すれば、案が生煮えでも提出する。後塵を拝することはできない」と、野党への対抗上、法案が不備であっても、早期に国会に議員立法として提出するべきだと発言。これを引き取る形で、高市早苗青少年特別委員会委員長が「条文は直す必要がないとわかった。今国会での提出・成立を目指す」と押し切って、同法案をとりまとめてしまったという。
こうした高市委員長らの強引なとりまとめの背景には、福田康夫首相が今国会の施政方針演説の中で、「安全・安心の確保」を目玉のひとつに掲げて「安全で安心な暮らしには治安に対する信頼が欠かせません。インターネットの有害情報の排除や組織犯罪の資金の監視・取締りを強化するとともに、銃器の規制の厳格化に向けた取組を進めます」と強調したことが、「錦の御旗になっている。それゆえ、町村信孝官房長官が強く後押ししているとの噂もある」(霞が関関係者)とされる。