昭和36年1月30日がやってきた。布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)の結婚式のいよいよ当日である。茂の母・絹代(竹下景子)は、新郎となる息子の緊張感のなさに朝からかりかりしっぱなし。父・修平(風間杜夫)はマイペースでリラックスした風情で、どうにも足並みが揃わない村井家である。
いよいよ始まる結婚式。緊張する布美枝のかたわらで茂は大きな音でおならをしてしまったり、さらに飲めない酒を飲んでひっくり返る始末。なんとも型破りな茂だったが、その飄々とした雰囲気が布美枝にはどこかおかしく、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
式が終わり、布美枝と茂は境港の村井家へ。布美枝はあらためて絹代から「茂のことをよろしく」と頼まれる。夜になってようやく酔いから目をさました茂は、布美枝に幼いころの「のんのんばあ」との不思議な思い出を話して聞かせる。
茂 : 今夜は聞こえるかな
布美枝 : え?
茂 : あんた、狐が鳴くのを、聞いたことありますか?
布美枝 : 狐? いいえ。このあたりに狐がおるんですか?
茂 : (頷き)おります。ほら、あの、半島の山に棲んどるようです。昔、『のんのんばあ』から教わりました
翌朝、茂はなかなか起きてこない。布美枝は修平と絹代との朝食の席で、個性的なふたりのやりとりに圧倒される。
結婚式の翌日、ついに布美枝が故郷を旅立つ朝が来た。源兵衛(大杉漣)以外のミヤコ(古手川祐子)たち家族が布美枝を見送りに駅のホームにやってくる。ひとり家に残り、仏壇の前で万歳三唱する源兵衛。
家族との涙の別れのあと、東京へと向かう汽車のなかで、茂の旧友・浦木(杉浦太陽)があらわれ、布美枝たちにまとわりついてくる。汽車は東京駅に着き、つきまとう浦木を振り切るようにして茂は布美枝を連れ、調布の家へと向かう。憧れの大都会での暮らしを予想していた布美枝だったが、ふたりの乗った車はどんどん郊外へと向かっていく。都会の雰囲気などまったくないところに車は止まり、そこに建っていたのは、おんぼろの一軒家。
もっと瀟洒な家を想像していた布美枝だったが、実際の家は予想からかけ離れたものだった。茂は仕事部屋に閉じこもってしまい、茂の兄の雄一(大倉孝二)がやってきたり、集金人が押しかけてきたりと、布美枝は戸惑うことばかり。そして、布美枝は茂の描くおどろおどろしい漫画を初めて目にし、仰天する。