布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)の調布での新婚生活が始まった。茂の暮らしは驚くほど貧しいものだった。商店街に出かけて買い物客のテンポの早さに面食らう布美枝は、いきなりひったくりにあってしまうのだが、貸本屋の女主人・田中美智子(松坂慶子)が、犯人の原田(中本賢)を追いかけて捕まえてくれた。この美智子との出会いが、布美枝の心に残る。
布美枝のもとを赤羽に住む姉の暁子(飯沼千恵子)が訪ねてくるが、茂の兄・雄一(大倉孝二)の家族連れで風呂を借りにくるという非常識ぶりに、布美枝も暁子もあっけにとられてしまう。ある日、布美枝が買い物に出かけると商店街に一軒の貸し本屋を見つける。そこの女主人は美智子だった。驚いたことに、ひったくり犯の原田を店に雇っていた。
布美枝と茂の家に浦木(杉浦太陽)が売れない漫画家の中森(中村靖日)を連れてきた。浦木は金のない中森を安い家賃で住まわせてやってほしいという。収入の不安定な茂は、新婚家庭に見知らぬ同居人を置くというむちゃな申し出を受け入れてしまう。
布美枝は、茂と中森の近くにいることで、茂の暮らしが思った以上に厳しいものであることがわかってきた。茂は富田出版に原稿を届けに行くが、出版社の社長・富田(うじきつよし)から怪奇マンガはもう出版しないと宣告される。布美枝は散らかり放題の茂の部屋を良かれと思って掃除をするが、茂からそのことを強くしかられ、夫婦のあいだにはぎくしゃくした空気が漂う。
落ち込んだ気分のまま買い物に出かけた布美枝は、リウマチで苦しんでいる美智子の姑(しゅうとめ)・キヨ(佐々木すみ江)を助ける。キヨを背負い「こみち書房」まで来ると、美智子と出くわした。美智子はひったくり犯の原田を「こみち書房」の手伝いとして雇って、そのアルバイト代で彼の懐を暖めてやろうという優しさの持ち主であることを知る。布美枝は東京に来て初めて、ほっとできる人に出会った気がした。買い物から帰ってくると、茂が自転車を買って帰ってきた。布美枝はその突然の贈り物に感激の涙を流す。
布美枝 : これ…買いに?
茂 : ええ
布美枝 : (目に大粒の涙をたたえ)…私、びっくりして…自転車、買ってきてくれるなんて…
茂 : いや、あんた、何も自転車くらいで、そんな…
布美枝が茂に連れて行かれたのは、調布の深大寺だった。お互いのことを何も知らずに結婚したふたりにとって、それは初めてのデートだった。お見合いのときのお互いの印象を語り合うふたり。ようやく夫婦らしい雰囲気になりかける布美枝と茂だった。