第13週「初めての里帰り」
6月21日(月)〜6月26日(土)/第73回〜第78回
境港に住む茂(向井理)の両親から孫を連れて帰省するよう促す手紙が届くが、苦しい家計のため、それは無理な話だった。茂の母・絹代(竹下景子)は「孫に会いに上京する」と電話をかけてくるが、猛烈な性格の母親が家に来ることは避けたいと茂は思う。そんなとき、結核を病んでいた深沢(村上弘明)が未払いだった原稿料を手渡すために村井家を訪ねてくる。布美枝(松下奈緒)はその金で藍子を連れて安来と境港に帰省することになる。
布美枝はかつて「少年戦記の会」の騒ぎで茂を振り回した富田(うじきつよし)と、「こみち書房」で偶然に再会する。富田は茂にもういちど会いたいとの思いから、村井家を訪ねようとするところだった。経営していた出版社が倒産して以来、富田は小さな印刷会社で製本の作業員をして暮らしていた。わずかな額の金を茂に渡して去っていく冨田。数日後、布美枝は藍子ともに、初めての里帰りに出発する。
結婚から三年ぶりに、布美枝は藍子を連れて安来の実家に帰ってきた。父・源兵衛(大杉漣)をはじめ、大家族の飯田家は昔と変わらない賑やかさだった。弟の貴司(星野源)には縁談が持ち上がっていて、源兵衛が実家の酒屋のほかに新しく二件目の店を出すことを計画し、それを貴司に継がせるつもりでいることを布美枝は知る。布美枝は町内の洋食屋で貴司と見知らぬ女性が連れ立って入ってくるのに出くわす。
貴司と一緒にいた女性は、貴司の恋人だった。女性はひとり娘で、家業を継ぐことを義務付けられており、彼女と結婚するためには貴司が家を出て婿入りするしかなかった。店をもたせたいという源兵衛の思いと恋人との間で貴司は板挟みとなり悩んでいた。妹のいずみ(朝倉えりか)が安来を出て東京で仕事をしたいと思っていることが源兵衛に知られるのと同時に、貴司の恋人の存在も家族の中で明らかになってしまう。
布美枝は貴司に対して自分の本当の気持ちを大切にすべきだとアドバイスするが、貴司は恋人への思いを押し殺して、新しい店を引き受けようとしていた。布美枝は藍子を連れて境港の茂の実家を訪れる。絹代(竹下景子)と修平(風間杜夫)は布美枝と藍子を歓迎する。絹代は布美枝に、貧しい暮らしの中で夫の茂を当てにすることなく、自分自身がしっかりするようにと諭す。
布美枝が境港から安来の実家に戻ってくると、ちょうど貴司が源兵衛に対して恋人と結婚したい気持ちを打ち明け、店は継げないことを明言していた。怒りにかられた源兵衛が相手の女性の家に乗り込もうとしたその時、子供同士で遊んでいた藍子がビー玉を飲み込んでしまい、大騒ぎになる。とっさに布美枝は藍子の背中を叩き、さらに藍子の口に指を入れてビー玉吐き出させた。その様子を見ていた源兵衛は子供たちの成長を感じ取る。
(源兵衛、仏壇に向かっている。ミヤコ、源兵衛の後ろに座っている。)
源兵衛 : 布美枝のヤツ、すっかり母親らしくなっちょーな
ミヤコ : ええ
源兵衛: この家が残れば、それでえことにするか
ミヤコ : はい
源兵衛 :店は、細々とでも続いておれば、おばばも許してくれるだろう
(ミヤコ、うなずく)
源兵衛: 子供やち、いつの間にかみんな、自分でしっかり歩いちょーわ。もう、道をつけてやらんでもえーな
源兵衛: おばば。ここは、残ったもので、なんとかやっていきますわ
初めての里帰りを無事に終えて調布に戻ってきた布美枝。布美枝にとっては、オンボロでも茂や藍子と暮らせるこの場所が、今はどこよりもホッとでっきる我が家だった。