製造業、人件費減額の背景に「残業カット」
製造業の場合は、製造現場に携わる人の人件費(労務費と呼ばれる)と、販売管理部門の人件費は別立てで計上される。たとえば、わが国トップのトヨタ自動車の場合、労務費は約6000億円、販売管理部門の給料手当は1270億円規模である。
新日本製製鉄はそれぞれ、1400億円強、170億円といったところだ(いずれも単体ベース)。これら労務費や販売管理部門の給料手当の推移と、従業員平均給与は密接に連動していることはいうまでもない。とくに、各社とも製造現場部門の労務費の落ち込みが目立つ。
赤字体質からの脱出が急務の日立製作所。同社の従業員年間給与平均はこの3年間、「747万円→755万円→700万円」で推移。07年度から08年度にかけては上昇、そして09年度は前年度比で下降と、結果的に2年間でおよそ50万円のダウンになっている。
これは、「2497億円→2541億円→2195億円」という労務費のアップダウンと同様の推移。組織再編で従業員が減少、販売管理部門の人件費もマイナスになっているが、労務費の大幅な減額が平均給与を押し下げた主な要因といっていいだろう。
この2年で日立は労務費総額を約300億円減らしている。派遣社員などを除き、仮に従業員3万人として計算すれば、1人当たり100万円のダウンに相当。平均給与の減額をはるかに上回る数値である。ボーナスのダウンはもとより、製造不況による現場部門の残業カットや、休日出勤の減少が背景にあることは明白だ。
07年度の平均給与862万円が、09年度は716万円と、この2年間で150万円近いダウンになっているのはキヤノンだ。同社の場合は販売管理部門、とくに研究開発部門の人件費の減額が大きく響いているようだ。
キヤノンのように、研究開発費の内訳を明らかにする企業は例外的な存在。キヤノンは09年度の研究開発費約3000億円のうち、研究材料費534億円、給料手当766億円だったことを開示している。研究開発費総額に占める給料手当の割合はおよそ26%だった。
その研究開発部門と販売管理部門の給与手当合計は、09年度1283億円。07年度の1376億円からおよそ100億円の減額。平均給与の大幅ダウンも当然の流れだろう。
王子製紙は労務費、販売管理部門の給与手当とも右肩下がり。それにともない、平均給与も減額となっている。
ブリヂストンやコマツ、ファナックの給与推移は?
これからの日本人の給与を考える意味で、ブリヂストンやコマツ、ファナック、さらに東京電力・東京ガス・JR東日本の給与推移も見ておこう。