【コラム】北朝鮮の三代世襲、リベラル左派の試金石

 9月末に突然明らかになった北朝鮮の三代世襲は、韓国のリベラル左派の知識人を当惑させた。これまでにも北朝鮮に対する見解に相当の差があったほか、2008年には民主労働党と進歩新党の分裂を招いただけに、彼らはこれまでよりも深刻な局面を迎えた。王制国家を除けば世界に例を見ない北朝鮮の三代世襲をどう考えるのか、という質問を避けることが難しくなったからだ。

 この質問に対し真っ先に答えたリベラル左派の知識人は、孫浩哲(ソン・ホチョル)西江大教授だった。金正恩(キム・ジョンウン)氏が金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者として公に登場した直後の先月30日、「韓国のリベラルよ、北朝鮮の三代世襲を批判せよ」と題するコラムで、「恥ずべき三代世襲に対する国民の視線がリベラル陣営にまで広がることを防ぐためには、北朝鮮の政権による半歴史的行為に対し、確実に批判的な立場を表明すべきだ」と訴えた。また、民主動労働党が「北朝鮮の問題は北朝鮮が決定すべき問題だと見ることが、南北関係のために望ましい」「(北朝鮮の三代世襲について)言及しないことが我々の判断であり選択だ」と表明したことをめぐり、リベラル左派の知識人の間では批判する声と支持する声が入り乱れた。

 これまで態度表明した知識人に限って言えば、北朝鮮の三代世襲に対する批判が優勢なように見える。「三代世襲は、北朝鮮では当然のように受け入れられる可能性もある」「北朝鮮の内政に干渉すべきではない」といった主張は、「北朝鮮の人々に対する冒涜(ぼうとく)だ」「米国など他国を批判しながら、なぜ北朝鮮を批判してはならないのか」という強硬な世論に直面した。金正日総書記から金正恩氏への権力世襲をシンガポールのリー・クアンユー、リー・シェンロン父子の権力継承を比較し、「韓国が選択した指導者の中に、彼ら父子のような識見や責任者を持つ人が何人いただろうか。権力世襲体制はそれほど驚くべきことではない」という奇想天外な主張は、「幼稚園レベルの論理だ」という嘲笑(ちょうしょう)を買った。北朝鮮を支持する見解は視野が狭すぎる。

 しかし、リベラル左派陣営に影響力を持つ代表的な知識人は、まだ三代世襲に対する立場表明を留保している。特に金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で太陽政策を支え、南北交流を主導した大物や南北関係専門家は口を固く閉ざしたままだ。彼らが今後この問題について、どんな論理で主張を展開するかで、彼らが「正常な思考ができるリベラル左派」かどうかが明らかになるだろう。

 北朝鮮の三代世襲に対する批判はここでとどまらない。歴史に逆行する北朝鮮をいかにして正しい軌道に乗せるかという苦悩へとつながるからだ。このため、リベラル左派の知識人が今回の事態を契機として、新たな対北朝鮮政策について考えることは自然なことだ。孫浩哲教授は、北朝鮮の民衆が自ら民主的な力を養えるように助ける「リベラル的北朝鮮民主化運動」を提唱した。リベラル左派系新聞の中堅ジャーナリストは、「北朝鮮住民の支持を得られる太陽政策」を主張した。北朝鮮の政権との協力だけに頼ったこれまでと同じ太陽政策では、北朝鮮の改革開放も民主化もこれ以上期待できないという自覚が生まれているのだ。そうした苦悩の末、北朝鮮の真の変化を求めるリベラル左派なりの対北朝鮮政策ができてこそ、韓国社会でも「持続可能なリベラル左派」が生まれることになるはずだ。

李先敏(イ・ソンミン)文化部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事
記事リスト

このページのトップに戻る