メンズ・ナウ -men's NOW-

【三峯徹・後編】は近日更新

　いちばん最初にエロ漫画を読んだのは小学生の頃だった。はじめてはっきり自分の性欲を感じたことを覚えているし、そのためその一冊をはじめから終わりまで、それこそ広告から編集後記まで舐めるように読んだことも覚えている。けれど、もうずいぶん昔の話だし、どんな漫画を読んだのかなんてことはこれっぽちも覚えてない。私が今でもありありと思い出せるのは、読者投稿コーナーに載っていた一枚の葉書だけだ。そこそこうまいイラストの中で、その葉書ばかりに目がいってしまったのは、そのイラストが妙に稚拙な絵だったからというだけではない。オナニーしたいけどオカズがなくて、仕方ないから下手なりに女の裸体を描いてみて、でもやっぱりぜんぜん下手で自作の絵がオカズになるはずもないのだけど、描いてるうちに「女の裸を描く」という行為自体に欲情してきて２Bの鉛筆で股の間の正体不明の秘密部分をぐりぐりぐりぐり塗りつぶすような、せっぱ詰った行き場のない、妖怪が誕生しそうなおどろおどろしい欲望を感じて、そしてその欲望は初めて意識した当時の己の性欲とリンクするところがあって、私は遠巻きに、なんどもなんどもそれを見た。

　ときは流れて私も堂々とエロ漫画を買える年齢になり、早速購入したエロ漫画誌の、何気なくめくった読者投稿コーナーに昔見たあのイラストが載っていて背筋が寒くなった。何年も前に見た投稿欄の葉書を覚えていた自分に驚いたし、その人の画力がはじめて見たときとまったく変わってないことに驚いた。それから読む漫画誌読む漫画誌の読者投稿欄に例の投稿者のイラストが掲載されていることになにより驚いた。こいつは何者だ？

　彼の名前は三峯徹。２２年間にわたって日本で出版されているほとんどすべてのエロ漫画誌に個性的なイラスト送りつける、現代のヘンリー・ダーガーと謳われる葉書職人である。

—　タモリ倶楽部ご出演、おめでとうございます！

三峯　いやー、意外でしたけどねー。

—　三峯徹特集っていうのはどういう経緯でお話が来たんですか？

三峯　タモリ倶楽部の人が僕のイラストの入ってるエコバックを見て連絡をくれたんですよ。たしかゲストが水道橋博士さんとみうらじゅんさんで。今までのイラストを見ながら僕の歴史なんかを解説したみたいですね。って、水道橋博士さんのツイッターに書いてありました。

—　あれっ、三峯さんはご出演されているわけではないんですか？

三峯　僕は別の日にVTRってかたちで撮ったんですよ。自宅で俺がイラスト描いてるところを完成まで撮るのと、あとはインタビューみたいのとか。

—　三峯邸！！　見たい！

三峯　き、汚いんですけどね。

—　お片づけはしなかったんですか？

三峯　したんですけど…すごすぎて……。

—　ふふふ、そんなに汚いんですか、お部屋。

三峯　申し訳ないんですけどあんまりきれいとは言えなくて……。いちおう当日は僕とカメラマンさんとスタッフの人が３人は入れるスペースだけ作りました。

—　最初にタモリ倶楽部からお話がきたときはどう思いました？

三峯　嬉しいけど…、あとから「オレなんかでいいの？」って思ってきちゃって。あの、東京MXで『BONZO!』ていうサブカルチャーの番組やってるんですけど、そこで映画担当してる男の人が三峯徹Tシャツ着てテレビ出てるんですよ。だから投稿を知ってる友達からは「いつかは『BONZO!』から取材くるんじゃないの？」なんて冗談ぽく言われてたんだけど、うわー、先にタモリ倶楽部からきちゃったよー！　みたいな。だから最初はそんな感じで引き受けたんだけどだんだん胃が痛くなってきて……放送日が近づくと「ああー、やべー、もうすぐかー」なんて。すごいなあ、いいのかなあ、なんて感じですね。

—　タモリさんが三峯さんの絵にどんな反応をするのか楽しみですよー。

三峯　「ゲストに峰なゆかさんも来るかもしれない」って話を聞いて、峰さんも出るんだとばっかり思ってたんですけど。

—　そうそう、タモリ倶楽部の出演依頼はいちおう来てたんですけども、なんだかんだ大人の事情でだめになってしまって。

三峯　だから撮影当日、峰さんが来るんならスタジオに見学行けばよかったかなーなんて思ってたんです

—あっ、どうもすみません。

三峯　ところで峰さんって、あっ、なゆかさんって呼ぶのとどっちがいいですか？

—　どっちでもいいですよ。お好きな方で。

三峯　「峰さん」だとなー、俺の三峯のミネとかぶっちゃうからなー。アレかなー。

—　じゃあ「なゆか」の方がいいですかね。

三峯　へへへ、なゆかさん。いやあ、嬉しいなあ。

—　恐縮です。

三峯　最近俺、思うんですよ。なゆかさんとせっかく知り合ったんだから、なんか、あのー、一回ヤッてみたいなあって気持ちがあるんですよ。

—　えっ、何をですか？