郷好文の“うふふ”マーケティング:“好き”を作る2つの法則とは?――好悪の感情を科学する (1/3)
人はなぜ何かを好きになったり、嫌いになったりするのだろうか。筆者は、グラミー賞アーティスト「ディクシー・チックス」に対する自身の思いの変遷から、何かを好きになる2つの法則について考察した。
著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go。
“好き嫌い”は何からできているのだろうか?
食べ物を好きになる。人を嫌いになる。音楽を好きか嫌いか判断する。それは一体どこからやってくるのだろうか?
そんなことを考えたきっかけはコート・ヤード・ハウンズの音楽アルバム『Court Yard Hounds』を聴いたから。レディ・ガガでもsuperflyでも絢香でもない。マイナーな女性デュオだが、グラミー賞をいくつも受賞してきたカントリーグループ「ディクシー・チックス」から派生した。3人組のチックスのうち、事情があってそのうち2人(マーティ・マグワイア、エミリー・ロビソン)で作ったアルバムだ。
ディクシー・チックス≠コート・ヤード・ハウンズ
出来は良い。エミリーのボーカルはポップスで叙情性もある。スリリングなチックス・ストリングスもある。3分の2でもここまでできるならチックス・ファンも満足……のはずだが、聴きこんでいくにつれて「何か足りない」と思い出した。いったい何なのだろう?
もちろんそれは、アルバム不参加のナタリー・メインズ、パワフルでソウルフルなリードボーカルだ。彼女はカントリーというジャンルの枠を超えるチックス音楽の柱。3分の1とはいえ柱だから「足りない」のは当たり前なのである。
それでふとチックスの魅力を考えた。カントリーの郷愁とトラッドなリズム、ポップスとロックの味付け、ちょいと年はいっているけどアイドルっぽさ、女性視点の社会的なメッセージ。3人の個性、ユニークな要素が重なり結合しているところだ。
チックスを聴き出したのは1つの事件から。米国のイラク侵攻前夜、ナタリーがブッシュ大統領批判をして放送業界やファンから総スカンを食らった。だが謝らない。すごい女だと思った。しかし、それはきっかけで、聴き出すと3人の個性と要素にハマった。
どこかからきっかけがやってきて興味を抱く。情報を得てその要素が好きになる。これを“好きの構造の第一法則”と呼ぼう。
この法則は“愛”に適用できる。
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