世界のアヘンの9割を生産するアフガニスタンで麻薬組織対捜査官の戦いが続いています。
開戦から丸9年、世界のアヘンの9割以上を生産するアフガニスタンでは、もう1つの戦争が続いています。
麻薬組織対捜査官、思わぬところにまで潜む敵に脅かされる正義の現場を追跡取材しました。
アフガニスタン・カブールの軍用射撃場で、取材時に訓練をしていたのは女性たちで、イスラムの戒律が厳しいアフガニスタンでは、珍しい光景だった。
女性たちは、対麻薬警察「CNPA」で、麻薬対策を専門とする警察の捜査官。
今、アフガニスタンでは、タリバンなどとの戦闘のほか、もう1つの戦争「麻薬戦争」が戦われている。
対麻薬警察捜査官は「少ないときでも2〜3kg、多いときは50kg以上押収します」と語った。
対麻薬警察女性捜査官は「今までは、問題なく来られましたが、何かあったら勇敢に対応したいです」と話した。
今、対麻薬警察は強化される傾向にあり、麻薬取り締まりへの期待は高まりつつあるかに見える。
その一方で、アフガニスタンでは、麻薬をめぐるおそるべき疑惑が浮かび上がっていた。
今やアフガニスタンの多くの地域で見られる麻薬常用者たちの姿。
2001年以降、急増したという麻薬常用者の数は現在、100万人以上といわれている。
これは、人口の3%を超える数にあたる。
国内で深刻さを増すアフガニスタンの麻薬問題は、国家の根幹部分にも影を落としている。
アマヌラ・アマキル元カブール空港警察署長。
国境警備隊の高官だったアマキル氏は2004年、カブール空港の警察署長に抜てきされた。
署長としての間、アマキル氏が最も力を入れていたのは。
麻薬密輸犯は「(麻薬の種類は?)ヘロインです。指定の場所まで運んだら、報酬として10万カルダール(日本円でおよそ10万円)もらえます」と話した。
映像に映っている男らは、アマキル氏の指揮下で摘発された麻薬の密輸犯たちで、映像はアマキル氏自身が記録し、所持していたものだった。
映像で、男らの足元に映っているのは、胃の中から取り出されたヘロインのカプセルで、男らはこれを飲み込み、空港から持ち出そうとしていた。
不敵な笑みを浮かべる男も密輸犯で、シャツを脱ぐと現れたのは大量の麻薬の袋で、ズボンを脱ぐと、なんと足にも麻薬が巻きつけられていた。
アマキル氏は「カブール空港は、(当時)さまざまな犯罪の中心地になっていました。今まで、外国人も含めて120人の密輸犯を逮捕し、数百kgの麻薬を押収しました」と語った。
密輸犯は男女を問わず、アフリカ系の黒人やアジア人など、国際的に広がっている様子がわかる。
実はアフガニスタンでは、2007年には、ヘロインの生産量が8,200トンと、過去最高を記録した。
そして、このアフガニスタンのヘロインは、周辺諸国を通じ、ヨーロッパなど世界の闇市場に流されるという。
アマキル氏は、こうした密輸を水際で取り締まっていた。
そして、アマキル氏が見せてくれた映像の中で、捜査官が「体に隠したものを差し出してもらうだけです」と話すと、麻薬密輸犯の女が「出さないわよ。そこにあるもの(麻薬)も、そのまま全部、持って帰るからね」と返すシーンがあった。
机の上に並べられたヘロインを持っていた密輸犯の女の取り調べを続けると、女は「わたしの携帯電話を返してよ! ここより、上の組織だってあるんだからね!」、「電話をすれば、そのビデオカメラだって、使えなくできるのよ!」と言い放った。
アマキル氏は「逮捕者に『お前をクビにできるんだぞ!』とよく脅されましたが、実際にそうなってしまったんです」と語った。
任期途中、わずか1年半で、アマキル氏は突然、解任された。
麻薬組織と政府上層部とのつながりを感じたというアマキル氏は、命の危険を感じ、一時、イギリスに亡命し、帰国後の現在も潜伏生活を送っている。
はたしてアフガニスタンの麻薬組織は、どこまでこの国に広がっているのか。
麻薬対策省のアフザリ報道官は「はっきりしているのは、麻薬組織がテロリストの資金源になっているということです」と語った。
アフザリ報道官は、アメリカが戦うタリバンや反政府武装組織には、麻薬組織が深く関与していると強調した。
政府と麻薬組織の関係はどうなのか、FNNの取材班は「悪いうわさを聞いたのですが。何人かの政府高官が(麻薬組織と)...」と、疑念をぶつけた。
これに対し、アフザリ報道官は「では聞きますが、仮にわたしが『あなたが密輸犯だ』といくら言っても、あなたが裁判で有罪にでもならない限り、密輸犯だと決めつけられませんよね?」と答えた。
真相は闇の中。
しかし、麻薬組織に立ち向かったアマキル氏は、いまだに潜伏生活を余儀なくされている。
今、アフガニスタンでは、原料となるケシ栽培を取り締まったことで、麻薬が高値を呼んでいるという。
金をもたらす麻薬に再び人々が手を出す悪循環は、繰り返されるのか。
(10/15 00:52)