12日午前7時15分ごろ、福井県勝山市野向町の介護施設「野向(のむき)の舎(いえ)」で、出勤した女性看護師(56)がクマに襲われた。勝山署によると、看護師は胸や顔などを7回かまれ、3週間のけが。クマは施設外に出た形跡はなく“ろう城”しているものとみられ、県職員らが建物を封鎖して捕獲作業を進めている。クマが人を襲う背景として、猛暑や気候変動のためドングリ類が凶作になり、餌不足のために人里に下りてきたことが一因と指摘されている。
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クマを捕獲するため、県職員や猟友会メンバーら約20人が施設を囲み、玄関先に酒かすやはちみつを入れたおりを設置。作業を進めたが、日没のためいったん打ち切った。13日午前6時半ごろから再開する。
麻酔銃で眠らせることも検討されたが、施設内は幾つもの部屋があり、隠れているクマが襲いかかってくることも考えられるため中止された。
勝山市は捕獲後にクマを殺処分する方針。ツキノワグマとみられる。
「野向の舎」と廊下でつながっている併設の病院には135人が入院。廊下の防火扉を閉め、器具などでバリケードをつくり、侵入できないようにした。
同署によると、看護師が入り口の鍵を開け、利用者用の車いすを運び出そうとしたところ、玄関先に体長約160センチのクマが立っており、襲いかかってきたという。看護師は手で払いのけて外に逃れた。当時、施設内に利用者らはいなかった。
野向の舎はデイケアセンターで、看護師や職員らが高齢者らと音楽療法や陶芸、料理などの活動をし、入浴サービスなどもある。勝山市役所の北約3キロの郊外で、高尾岳(525メートル)のふもと。約300メートルの場所には小学校や保育園もある。
県によると、今年は猛暑の影響もありクマの餌であるドングリの実の付き具合が悪く、例年より人里に出没する可能性が高いとして注意を呼び掛けていた。
勝山市によると、市内でのクマ目撃情報は2009年度は10件だったが、10年度はすでに51件に達した。