松井がLAを去る? 地元紙がついに“戦犯”扱い

2010.08.11


もがく松井。2試合連続打点で試合も勝ったが、満面の笑顔とはいかない(AP)【拡大】

 エンゼルスの松井秀喜外野手(36)が10日(日本時間11日)、本拠地アナハイムで行われたロイヤルズ戦に2戦連続の「4番DH」で先発し、3打数無安打に終わった。それでも何とか犠飛で先制の1打点を挙げ、3−1の勝利につなげたが、打撃不振の松井にはこれが精いっぱい。出場機会が限定されつつある中、必死で粘り強い打撃を続けているが、まだ調子が上向く兆しはみえてこない。

 打てないながらも2日連続の先制打点は、消え入りそうなプレーオフ進出へわずかな望みをつないだことになったのか。ハンター外野手の出場停止で連続で4番に座った松井は、苦しみながらも、基本に忠実なチーム打撃でチームに貢献した。打撃不振の中でできるせめてもの打撃だった。

 1回1死二、三塁の好機。1番にアブレイユを繰り上げ、3番に移籍組のカラスポを入れたことで活性化したエンゼルスの新打線は、この日も松井の1打席目に大きなチャンスをつくりだした。松井は相手右腕バリントンの投じた甘い速球をセンターへ大きな犠飛を打ち上げた。4番打者として最低限の責任を果たしたが、本来ならばスタンドに打ち込んでほしい甘い速球だった。

 しかしそのあとが続かない。2打席目以降は二ゴロ、中飛、一ゴロで凡退。8月に入ってゴロでの凡退が10、飛球での凡退が3、三振が4。調子が悪くなると打球が上がらなくなる松井の悪い打撃傾向が顕著となっている。

 試合は先発右腕ハレンの好投で競り勝ち、アスレチックスをかわして2連勝で2位に浮上した。しかし、首位レンジャースとは8・5ゲーム差と引き離されたままだ。松井の打率は・243にまで下がっている。

 ヤンキース時代から何度となくレギュラーポジションを失う危機に瀕しながら、必ずプライドを奪い返してきた。今回もまた逆襲してくれることを信じるだけだが…。

 低迷するエンゼルスに対し、地元紙ロサンゼルス・タイムズはついに「激辛コラム」を登場させた。エンゼルス担当のT・J・シマーズ記者は「エンゼルスは墓穴を掘り、なお穴を深く深く掘り続けている」という見出しで過激な論調を展開。そのなかで、松井も“戦犯”の一人に。今春、温かく迎えてくれたロサンゼルスの風は今や強烈な逆風だ。

 「今年のチームには生気が全くない。その戦犯であるホアン・リベラ、ボビー・アブレイユ、ヒデキ・マツイに関しては(本拠地アナハイムのある)オレンジカウンティーの財産を盗んだ罪で逮捕されるべきだ」

 確かに10日現在、打率・243、14本塁打の松井が期待に応えたとはいいがたい。

 しかし、メジャーでは、ニューヨーク(ヤンキース)とボストン(レッドソックス)以外の新聞は地元チームに優しいのが特徴。地元意識の強いエンゼルスの地元紙が「泥棒」呼ばわりして論じるのは異例だ。今のアナハイムのファンの偽らざる心境とイライラぶりを率直に代弁しているともいえる。

 今季、年俸600万ドル(約5億1000万円)でエンゼルスに移籍した松井。球団は表向き、打者としての実力を評価して獲得したが、営業面でのメリットも織り込み済みだった。

 古巣のニューヨークよりも、日本から近い西海岸アナハイムのエンゼルスタジアムは、“マツイ効果”で、日本人観光客であふれ、Tシャツなどの「ゴジラグッズ」が飛ぶように売れ、日系企業の広告看板が掲げられる−。年間1億ドル(約85億円)の経済効果を見込んでいたとされる。確かに日系企業10社ほどが契約料年間1億円といわれる広告看板を掲げるなど、シーズン当初は効果が表れた。

 しかし、松井の打撃低下とともにチームも低迷。9日現在の1試合平均の観客動員では、メジャー30球団中5位の3万9897人だが、実はエンゼルスからしてみれば、昨季の同4万4人から減少。2004年以降では、初めて4万人を割り込んだ。

 4万5281人収容のエンゼルスタジアムは赤ゴジラの大活躍で沸き返るはずだったが、打撃不振とともに“マツイ効果”は薄れてきた。

 「(前出3選手の中で)特にマツイは去年ニューヨークで打率・292をマークし、ワールドシリーズのMVPにもなった。だが今は2割4分台でベンチ暮らし。ソーシア監督に『マツイにはとてつもなく失望させられたのでは?』と質問しても、即座に『ノー』という返事がかえってくる。彼の口から出てくる他の言葉を信じろと言われても不可能だ」

 厳しい指摘をエンゼルスのオーナー、GMはどう受け止めるか?

 結果を残せなければバッシングを受けるのはメジャーリーガーの宿命。今季で契約が切れる松井はブーイングに追われるようにロスを後にすることになってしまうのか。それとも再び爆発して、雑音をシャットアウトできるのか。

 

注目サイト