9月5日
特集「激安テレビ 実現の秘密」
18.5インチの液晶テレビが、店頭価格でなんと2万9800円!わずか2日で1万台が売り切れました。この格安テレビを作っているのが、ダイナコネクティブ社です。いかにしてコストを抑えたのか?新たなビジネスモデルでテレビ作りに取り組む、キム・ボンホ社長の戦略に迫りました。
<ゲスト>
キム・ボンホさん(ダイナコネクティブ 社長)
<コメンテーター>
熊野英生さん(第一生命経済研究所主席エコノミスト)
藤沢久美さん(シンクタンク・ソフィアバンク副代表)
新浪剛史さん(ローソン社長)
●格安テレビ作りの舞台裏
【野田】ずばりこの価格ですけど、どうやって決めているんですか?
【キム】この価格を安いと判断するのは、我々ではなくてお客様なんです。どのタイミングでどの金額であれば安いのか。結果的にお客さんに決めていただく形になると思います。
【野田】ということは、社長はとにかくできるだけコストを抑えることに努力をしただけだと、そんな感じですか?
【キム】そうですね。売値を決めてからの下げ方じゃなくて、我々のコストを積み上げた形で売値を決めていくと。
【野田】新浪さん、販売する側としては、こういうメーカーの存在をどう思いますか。
【新浪】コンビニで販売するには非常に金額的に手頃だと思います。私自身これだけお客様が買っておられるのを見るとね、やはり一度提案してみたいという感じがしますね。
【野田】こうしたビジネスは、経済の活性化にもつながりますね?
【熊野】スモールビジネスが大活躍するのはすごくいいことなんです。中長期の経済成長の担い手を考えると、やはりスモールビジネスが、大手にできないことをチャレンジしていく。こういうことが続けば、経済が変わるんじゃないかと思いますね。
●安さのカギ 部品は”汎用品”
ダイナコネクティブの特徴は、「工場を持たずにテレビを作る」こと。
注文を受けると、国内外の部品メーカーから部品を買い付け、海外の工場に組み立てを委託します。例えば8月に発売した液晶テレビは、液晶パネルが韓国、端子は中国、チューナーは日本のメーカーのもの。そして部品の組み立ては韓国の工場に委託しました。使う部品のほとんどは、すぐに手に入る汎用品。これが安くて早いテレビ作りのカギなのです
【藤沢】汎用品を使って価格を下げるということですが、ほかのメーカーより劣ったりはしないんですか?
【キム】汎用品というと、そういう話になってしまいがちですが、私の場合、一番に気にしているのは、この電源元の部品なんです。長寿命のものを使わない限りは、テレビの寿命が短くなってしまう。そしてあとはチップ、ただ、これを動かすのは、このチップが動くんじゃなくて、我々がソフトを使ってチップを動かします。そのOSは我々が作らなくてはいけない。
【野田】ソフトウェアのところですね。そこはやはり作らなくてはならない。
【新浪】お客さんにとっては「ここはいらないんじゃないか」という機能もありますよね。たくさん機能がなくてもコストを下げたい、そんな考えもあるんじゃないですか?
例えばリモコン。本当に使っている機能はせいぜい2つか3つじゃないかと。
【キム】それはおっしゃるとおりですね。例えばテレビの端子ですが、基本的に最小限、DVDプレイヤーやビデオデッキをつなぐ端子だけを設ける。パソコン用の端子も付いているんですが、それ以外の用途は外したりする、とかね。
●安さのカギ 工場を持たない
【関口】工場を持たないことが、価格を下げる最大の手立てだということですが、どの工場が空いているのか、どのようにして分かるんですか?
【キム】そこが私どもの一番の生命線かもしれないです。空いている工場を探すために、情報を得るためのアンテナを数千個、数万個も立てているんです。それが中国であり、台湾であり、韓国であり。今回たまたま韓国になったのは、物流の時間を短くするためというのもありますね。
【野田】テレビを作るというのは、技術屋さんが設計図ひいて・・などと思っていましたが、それだけではなくて、今の製造業は“情報戦”になってきた感じですね?
【キム】極端に言うと、パネルの金額とか、為替がどうなっているとか、この部品はすぐ手に入るかだとか、そういうものすべてが情報ですね。
【小林】こうしたビジネスモデルを今後どうしていきたいとお考えですか?
【キム】大手メーカーがやっているようなネットワーク家電をやりたいとか、いろいろあります。ネットワーク家電をつくるにあたっては、付加価値をつけるわけですから、当然、値段が高くなるんですね。ごく普通の家庭で使える機能を入れ込んで、しかも手軽に手に入るネットワーク家電を作りたいと思います。