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発信箱:真の「脱小沢」とは=倉重篤郎(論説室)

 いくつかのパワーシフト(権力移動)が同時進行中だ。

 第一に小沢一郎劇場の幕引きである。この20年間、永田町の権力闘争のど真ん中にいた氏のパワーは静かに落ちていくだろう。政権取りを理念・政策に優先し過ぎた手法に無理が生じた。出たくなかった代表選にいぶり出されたうえ、検察審で検察不祥事の出る前に断罪され、不運が重なった。怨念(おんねん)は残るだろうが、実権は反小沢の一点で団結した菅民主執行部にシフトする。

 第二に、「普天間」「尖閣」によって浮き彫りになった安全保障環境の変化である。戦後六十有余年続いた日米同盟が2度クローズアップされた。最初は、その存在意義を巡る議論にも発展しかけたが、2度目はその存在が安堵(あんど)感をもたらした。背景には、中国海洋パワーの台頭という厳然たる事実と、それをけん制しながらも経済、グローバル政治では中国と手を結ばざるを得ない米国パワーの軌道修正が垣間見られた。

 第三に、聖域視されていた特捜検察がその権威を失墜させた。「国策捜査」批判など前兆はあったが、シナリオ捜査の行き過ぎが自己破綻(はたん)を招いた。霞が関パワーの最後のとりでが崩れた観がある。シフト先はまだ見えないが、若手検事の内部告発が端緒だったことを考えると、検察審同様、常識に基づいた市民的価値観がキーになろう。

 菅政権はこの権力移動をどう耐え抜くのか。小沢氏排除という人気政策は使えなくなる。同盟の空隙(くうげき)を自らの外交・自衛力で埋めなくてはならない。自壊する霞が関と脱官僚政策の整合性も取る必要がある。中長期をにらんだ新しい国の形とそれを実現するための理念・政策論争こそ望まれる。政策コンテストもいいが、小沢氏の「日本改造計画」(93年)を超える政権構想のコンペを実現できないか。

毎日新聞 2010年10月14日 0時05分

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