あいまいだった国家戦略室と国家戦略担当相の役割が固まりつつある。官房長官が担う政策の総合調整の一部を戦略相に分担させ、事実上の「第2官房長官」とすることで、長官の過重な職務を軽減させる。玄葉光一郎戦略担当相は12日の衆院予算委員会で自身の任務について「新成長戦略の実現、EPA(経済連携協定)への対応の調整」と説明した。戦略室も現行の約30人態勢から50人規模に増強し、戦略相を補佐する政策調整部門と、中長期的な政策を首相に直接提言するシンクタンク部門に分ける。【小山由宇】
これまでの調整で、玄葉氏はEPAや新成長戦略のほか、▽来年度予算の「特別枠」の内容を決める政策コンテスト▽予算の骨格作り▽環境税など地球温暖化問題--など、仙谷由人官房長官は▽米軍普天間飛行場の移設問題▽口蹄疫(こうていえき)対策▽「税と社会保障の抜本改革」--などを受け持つことが固まった。
また、戦略室には局長級に近い審議官級の官僚を配置して態勢を強化する。官房副長官補室との連携を深め、併任スタッフを置くことで情報を共有する。
官房長官は首相の補佐役や政府側の国会運営担当を務め、1日2回の記者会見もこなす。これに政策の総合調整が加わり「オーバーワークになりがち」(民主党政調幹部)だった。役割分担論が浮上した背景には、こうした事情がある。ただ、12日の予算委で自民党の河野太郎氏は「誰が大臣になるかで権限が違うようではいけない」と指摘。閣僚交代のたびに役割が変わる戦略相の担当分野を、政治主導確立法案で明確にするよう求めた。
戦略室は同法案で設置を定める国家戦略局の前身として発足した。鳩山政権では官房長官との役割分担が不十分なまま推移。菅直人首相は7月の参院選敗北後、いったん「助言機関」に格下げすると表明したものの、与野党から「政治主導の後退」と批判され、内閣改造を機に玄葉氏が「元々の案に戻す」と首相発言を修正していた。
毎日新聞 2010年10月13日 東京朝刊