2010-10-13
ハートキャッチあから?!
女流プロ棋士とコンピューターの対局イベントのレポートをマイコミジャーナル様に書かせていただきました。
【レポート】プロ棋士vsコンピューター - 「あから2010」の威力を目撃してきた | マイコミジャーナル
普段将棋を指したり見たりしない人にも面白がって貰えるように頑張ったつもりです。良かったら読んでください。
このブログの方では連動企画として、レポートとは違った視点でこの対局を制したコンピューター将棋「あから2010」について書きたいと思います。
「あから2010」は、4つのプログラムが合議して指し手を決めるというシステムなんですが、対局後に情報処理学会がこの合議のログを公開しました。
http://www.ipsj.or.jp/50anv/shogi/20101012-2.html
生データまんまなんですが、読み方が分かるとプログラム同士のやりとりを想像できてなかなか面白いんですね。
てなわけで、このログを元に罪山主観でざっくり擬人化して、コンピューターがどんな合議をしていたか紹介いたします。
合議する4つのプログラムの個性はそれぞれこんな感じです。(罪山の主観ですからね!)
新人。将棋を始めたのは最近だが、ポテンシャルは計り知れない。300台のクラスターマシンを乗りこなしたことがある。
危険人物。強いことは強いんだが、ときどき暴走する。
YSS将棋
先輩。長いキャリアを持つベテラン。実は気分屋。
まず、紹介したいのは、一部で話題になっているこの局面。
今、清水女流王将に歩を突かれたところで、放っておくとAのマスにいる角が取られちゃいますから、これをどうするか、というところです。
プログラムたちは、決められた時間の中で計算して、候補手を挙げます。
ここは5三角の一手でしょう。
優等生の激指は5三角という手を提案しました。
この手は、とりあえず角を逃がして、後に飛び出す手を狙うというもの。優等生の激指らしいとても常識的な手で、人間ならまずこう指すところです。
(まさかこの手に反対する人はいないよね)
と、思っていた激指ですが……
堪忍袋の緒が切れました!4五同桂です!
GPSは別の手を示したのです。
この手は、歩を桂馬で取る手ですが、この桂馬がすぐに相手の桂に取られて損をしてしまいます。このあとの展開により、桂を取り返し攻めることができるのですが、相手にも攻めのチャンスを与える、やや過激な手です。
ええっ? 切れなくていいよ。無難に指そうよ
と、激指は反対しますが……
クスッ 4五同桂。面白いじゃない。やってみましょう
と、YSSもGPSに同意。
えーっ 先輩まで?!
さらにここで危険人物登場。
もうさー、めんどくさいから、7七角成でガンガン攻めようよー。
7七角成は、思い切って角を切って相手の守りの金を取って攻めようという手です。
それはない!
あうあう
まあアマチュアならともかく、さすがにプロレベルの対局で7七角成は無理なんじゃないかと思われます。
プログラムの合議は多数決で行われるのですが、意見が割れた場合は1回で決めるのではなく、時間をかけて考え直し投票を繰り返し最終的な手を決めます。*1
結局ここでは、2回投票が行われGPSとYSSが推した4五同桂が選ばれました。人間の感覚からすれば激指推奨の5三角の一手に思える場面ですから、「コンピューターらしい意外な手」と話題になったのです。*2
もう一つ興味深い合議の様子を紹介しましょう。罪山がマイコミのレポートで「勝負を決めた一手」として紹介した66手目の5七角です。(どんな手かは是非レポートをどうぞ!)
この5七角を提案したのは激指です。
スゴい手を見つけたんだ、5七角! お兄様もきっとこう指すよ!
なるほど、良さそうね
これにYSSが同意しますが
すみません! 私、反対です!
あたしもはんたーい。5七角って意味分かんないよー
小娘2人が不同意。
意見が割れたので、2回目の投票が行われます。
すると……
やっぱり、大した手じゃないわね
ええっ??? ちょ、先輩っ?
YSSがまさかの裏切りっ!
窮地に立たされる激指。多数決で5七角は消えかけます。
しかし、まだ合議は続行。激指は、他の3人をひたすら説得します。
もう一度よく考えてよ、5七角は絶対いい手だって!
遠くの角が利いてるからすぐには取られないし、飛車走りを受けてるし、この角を馬にして攻めれば必勝だよ?
5七角の良さが分かないなんて、君たちは豚だ! 豚なら養われなくてはならないんだよ、この僕に!
こうして投票を繰り返すこと9回!
もー。めんどくさいなあ。じゃあいいよ、それで
根負けした(?)BONANZAを味方につけ、5七角を通したのでした。
激指、良かったね!
コンピューターというと、計算で「正解」を導く印象がありますが、実は個性があって判断もゆれるんですねー。
あの勝負を決めた驚愕の一手・5七角が指された舞台裏に、プログラム同士のこんなやりとりがあったと思うと、プログラムのキャラ化も面白いものです。
「あから2010」公式キャラ
………
チェンジで
CM
将棋関係ないけど、こんな企画やってます。ヨロシク
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*1:実際は各プログラムに単体で動いてる版とクラスターで動いてる版があって、多数決のとき持ってる票がちがったりして色々複雑です。
*2:なお対局していた清水さんは事前にコンピューター将棋を研究しており、この手は予想の範囲だったとのこと。これもスゴい話ですね
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