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2010年9月29日 (水)

『舞-HiME』は魔女っ子ものとしてはどうなの?(後編)

質問

周りの友人にいわせると『舞-HiME』は「魔女っ子ものの相対・再構築化」であり、あのジャンルを彩る基本形を徹底的におちょくっているのだとか。私自身は正直『舞-HiME』はあまり観ていなくて、魔女っ子もので通し視聴したことがある作品もあまりないのですが、正直どこまでこの説が正しいのか疑問です。ジョンのお考えは。

回答

前編から続く)『舞-HiME』はもっとテーマ性が高くて従来の魔女っ子ものの基本形をあまり踏襲していない点で今までとは違う路線ではありますが、こうした違いが生まれた理由はなにより対象視聴者が異なっているからです。魔女っ子ものは普通、女子児童を視聴者に想定し作られるのですが、『舞-HiME』は中学から大学生年齢までの男子を対象にしています。それであの番組はダークさやハードアクション度が高く、かなり深刻な物語になったわけです。魔女っ子ものの基本である陽気さやほがらかさは女子視聴者向けだからです。が『舞-HiME』はダークさで深刻なところがあるとはいうものの、魔女っ子ものの基本に背を向けたり逸脱したりしているわけではありません。『舞-HiME』の登場人物はどれも女子高生で、『どれみ』や『赤ずきんチャチャ』に較べて年齢が高いのですが、それでも『プリキュア』や『セラムン』系の魔女っ子ものに較べれば同じくらいです。『舞-HiME』では変身はありませんが『魔女っ子チックル』や『魔法使いチャッピー』でも変身はありません。『舞-HiME』ではお供の小動物の類はでてきませんがそれは『アッコちゃん』『チックル』『メルモ』『メグちゃん』でもそうです。最後にもうひとつ指摘すると、魔女っ子ものの基本形から外れて『舞-HiME』の面々は悪の手から地球を守るために魔法を使うのではなく互いに戦う手段として魔法を使う設定です。もっとも女の子が魔法の力を自分の好きな相手を守るために使う行為が、自分の満足のためや自分の暮らす街や世界を守るために魔法を使うという従来の基本形と根本的にどれだけの違いがあるのか、そんな風にも思うわけです。『舞-HiME』は『リリカルなのは』や『プリキュア』とともに魔女っ子ものに激しいアクション性をいろいろ導入した点で新しかったのはほんとうですが、魔女っ子ものの基本からとことん逸脱して従来のパターンを相対化・再構成する域に達したのかというと、それは違うような気がします。

むしろ自分としては河森正治こそが評価されるべきだと思います。魔女っ子ものの基本形をとことん打ち壊し再解釈を迫る作品を世に送ったのは彼の功績です。2001年放映の『地球少女アルジュナ』では仏教思想をさりげなく魔女っ子ものに導入し、悪を滅ぼすのではなくむしろ悪とされる存在の理解を得て共生する道を歩む魔女っ子主人公が設定されています。よくある魔女っ子ANIMEなら主人公はだんだん強くなって何か新たな能力に目覚めるとか新アイテムを手に入れるとかするのですが、『アルジュナ』の主人公は能力を放棄して、一見敵対する相手からの影響にもっと受容的になっていきます。このあいだ完結した河森の『あにゃまる探偵 キルミンずぅ』も魔女っ子ものの基本構造を転覆させてみせた作品でした。魔法の力を魔法ではなく遺伝子科学的に根拠づけたのは新趣向でした。それから物語の初期の段階で『キルミンずぅ』は、魔女っ子は自分の力をまわりに明かしてはいけないという基本から意図的に逸脱して行きます。この番組では主人公のまわりの人間はほぼ全員がこの子の変身能力に気がついており、さらに最終回に近づくにつれてこの変身能力は主人公のまわりの人間以外にも普通の存在になっていくのです。(訳注 この番組は未見。主人公チーム以外の人間が変身能力を手に入れるの意?) 魔女っ子は変身能力をまわりに明かしてはいけないという基本形もこの番組ではあえて外されました。変身能力を知らないうちに会得してしまった人間が何人も出てくるわけです。(訳注 この訳であってますか) 『舞-HiME』は魔女っ子ANIMEとしてはハードアクション性が高いのですが、魔女っ子ANIMEの従来の基本パターンを覆すような新機軸をどっさり投入した作品なのかというと、そうではないわけです。『アルジュナ』と『キルミンずぅ』はここ米国のOTAKUのあいだでの人気は『舞-HiME』に劣りますが、どちらも魔女っ子ものの基本パターンを意識的・意図的に否定、おちょくり、逸脱している点では『舞-Hime』より徹底していると思います。

Is My Hime Really A Deconstruction of the Magical Girl Genre?

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コメント

>こうした違いが生まれた理由はなにより対象視聴者が異なっているからです。魔女っ子ものは普通、女子児童を視聴者に想定し作られるのですが、『舞-HiME』は女子児童にくわえ大学生年齢の男子までも対象にしています。

魔女っ子の典型であるプリキュアは大きいお友達も対象にいれて作っているのでは。某イベントのパネルでは対象と書いていたはず。監督だったかは、子供のみを対象にしていると後に(新聞だったか)発言してたけど。

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 08時19分

アルジュナを魔女っ子だと思ってる日本人は皆無だろうな

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 11時29分

>『舞-HiME』は女子児童にくわえ大学生年齢の男子までも対象にしています。

女子児童なんて対象にしてないだろ。

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 14時51分

オタクなんていうのはアニメを見るのが使命みたいなものなんだから、対象年齢や性別から逸脱してたって勝手に見てくれる。

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 16時28分

キルミンは変身する主役5人中2人が男子だから魔女っ子じゃないわなあ。
翻訳は合ってますよ。

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 23時18分

>『舞-HiME』は女子児童にくわえ

女子児童がアレを見るだと…(ガクブル

投稿: | 2010年10月 7日 (木) 23時26分

これも日米で言葉の意味が違う例かなー。
「魔女っ子もの」と訳す事が変じゃない?

投稿: g.a | 2010年10月 8日 (金) 10時04分

主人公の女の子が超能力使ったら全部魔女っ子扱いか
この分だとストウィやパンストも魔女っ子なんだろうな
ジョンの中では

投稿: | 2010年10月 8日 (金) 11時22分

舞-HiMEは100%女児は対象にしてないね

投稿: | 2010年10月 8日 (金) 12時56分

相変わらずサラッと有り得ないウソをつきますねwww

投稿: | 2010年10月 8日 (金) 18時20分

Unlike typical magical girls shows targeted at preadolescent girl viewers, My Hime is a series targeted at adolescent and young adult male viewers.

投稿: | 2010年10月14日 (木) 05時38分

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