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9月1日から11日まで開催された「第67回ベネチア国際映画祭」。日本からは「十三人の刺客」(三池崇史監督)と「ノルウェイの森」(トラン・アン・ユン監督)がコンペティション部門に出品された。ヨーロッパで人気の高い三池監督、グランプリの獲得実績があるトラン監督とあって、賞取りに期待が高まったが、結果は受賞なし。その理由を分析するとともに、同時期に行われた「第34回モントリオール世界映画祭」でヒロインの深津絵里(37)が最優秀女優賞を獲得した「悪人」(李相日監督)の“勝因”にも迫った。
現地の映画情報誌の評価も上々、1997年の北野武監督作品「HANA―BI」以来、13年ぶりとなる金獅子賞(グランプリ)への期待も高まった日本作品。だが、表彰式のふたが開いてみれば「無冠」の2文字に終わった。
ベネチアはもちろん、世界各国で行われる映画祭の賞の行方は「審査員の趣味」で大きく左右される。ただ、今回に限っていえば、それだけが理由でなかったような気がする。ベネチアに到着したときから、その空気は漂っていた。
今回の審査委員長は「パルプ・フィクション」や「キル・ビル」などで知られるクエンティン・タランティーノ監督(47)。映画ファンなら知っている人も多いだろうが、大の日本びいき、しかも三池監督の大ファンである。07年の三池監督作品「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」には、俳優として出演しているほどだ。
それだけに、周囲には「タランティーノが自らの好みで『十三人―』をゴリ推しするのでは」というフィルターがかかった目があったことは確か。実際、映画祭の序盤でタランティーノ監督が「三池監督とは親交が深いけれど、彼の作品を特別視することはない」と発言したことが報じられた。また、三池監督自身も、海外メディアの取材で「タランティーノ監督と友人だけど、何か賞はもらえそうなのか?」と聞かれたという。この時点で「十三人―」が“普通の”ベスト・ムービーではグランプリを獲得できないことは決まっていたといえる。
加えて、作品そのものにも“敗因”があったと思う。映画祭で上映されたのは「海外版」。外国に向けてセールスする際、2時間21分の上映時間はやや長過ぎることから、現在日本で公開中のものを15分間短縮している。このカットした部分に、かなり疑問を感じた。
具体的なシーンまで説明するとネタバレになってしまうので詳細は避けるが、カットされているのは伊勢谷友介(34)、稲垣吾郎(36)、岸部一徳(63)の出演場面。そのいずれもが「いかにも三池作品!!」と呼べるシーンなのだ。残虐さの中にひと握りの笑いが同居していながら、それに違和感を感じさせないところが三池作品の醍醐(だいご)味なのだが、その「らしさ」が海外版では、かなり薄まっているような気がした。
三池監督は「物語と関係のないところを中心に、より凝縮していく形で短くした。(切った)内容には納得している」と話したが、両方を見ている日本の映画ライターからも疑問を投げかける声が聞こえた。世の中に“タラレバ”は禁物だが、もし審査員が日本で公開されているバージョンを見ていたら…と思うと、残念でならない。
◆理解難しいノルウェイの森
もう1作品の「ノルウェイ―」も、世界中にファンを持つ村上春樹氏の代表作の初映画化ということに加え、95年に「シクロ」で金獅子賞を獲得しているトラン監督がメガホンを執ったことで注目度は高かった。ただ、公式上映後になると、ややトーンがダウンしていた。
現地の新聞などの感想、批評で、ひと言目に必ず書かれていた言葉は「映像は非常に美しかった」。確かに、長期にわたる撮影で日本の四季を取り込んだ映像は見事だったと思う。ただ、ほかのトラン監督作品にも言えることだが、メッセージが非常に抽象的な点は、心に直接訴えるものが欲しい観客にとっては物足りない。というよりも、原作を読んでいなければ何を言いたいのかよく分からない。現地紙では「理解しがたい難しさ」と記しているところもあった。
とはいえ、賞を取ることだけがすべてではないのが映画。先月末に公開された「十三人―」は、時代劇としては大成功といえる興行収入20億円突破が見えている。評価を決めるのは、あくまでも観賞した人それぞれ。まずは自らの目で作品を確かめてほしいと思う。
◆「悪人」は最高責任者がベタ惚れ…モントリオール世界映画祭
「第34回モントリオール世界映画祭」では、「悪人」で深津が最優秀女優賞を受賞した。83年に「天城越え」で受賞した田中裕子(55)以来、27年ぶり2人目の快挙だった。
「悪人」は映画祭の創設者で最高責任者のセルジュ・ロジーク氏が、自らコンペ部門選出にかかわった。公式上映日も配給側が指定するという“特別待遇”。有利な状況に日本での作品の評判も加え、映画祭前から「何らか受賞するのでは」という期待が高かった。
授賞式前日の公式上映後、プロデューサーの元には審査員たちから連絡が相次いだ。グランプリも期待されたが、魅力のひとつだった九州の方言が字幕では伝わらないこともあり、不利な部分があった。審査員の興味は深津だった。濃厚なベッドシーンにも挑んだ深津の体当たりの演技に言語は関係ない。外国人から見ると幼く見える深津の印象が、さらに審査員の驚きを大きくさせたことも受賞の要因となった。
(2010年10月13日12時00分 スポーツ報知)
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