◆郵便不正事件関連
川内博史氏 検察当局による冤罪(えんざい)事件と認めるか。
西川克行法務省刑事局長 冤罪が、無実と知りながら起訴したという(意味)ならば、そのようなことはなかったと承知する。結果として無実の人を起訴した場合も含むというならば、この事件はこれにあたると考える。
川内氏 厚生労働省の村木厚子元局長を逮捕・監禁したことは特別公務員の職権乱用罪にあたるのでは。
仙谷由人官房長官 他の事情も調べてみないと分からない。最高検が調査しており、冤罪かどうか、もう少し評価できる事実が出てくるだろう。ただ四十数年の法律家としての経験から、現時点でも極めて冤罪のにおいが濃い事件と思う。
◆検察審査会
川内氏 (検察審査会の)会議録を公開しないという規定がない以上、一定の条件のもとでの公開は可能だ。
柳田稔法相 会議自体を非公開としても、会議録が公開されると、審査会の非公開の趣旨が損なわれると解しているが、個人的にはしっかり考えたい。
◆普天間移設問題
下地幹郎氏 11月にオバマ米大統領が来日する時に新しいスキームで対話することを提案する。
菅直人首相 沖縄の皆さんが必ずしも日米合意に賛同していないことも承知している。沖縄政策協議会を再開し、米軍の基地負担についても議論を進めることを仲井真(弘多)知事と合意した。沖縄の皆さんの声を無視した形での強引なやり方は念頭にまったくない。
石破茂氏 沖縄訪問の予定はないか。
首相 現時点では、日米合意の原則にのっとり進めるという基本を説明することにならざるを得ない。いつ、どうしようか考えている状況だ。
◆大風呂敷発言
石原伸晃氏 首相は参院本会議で「民主党は大風呂敷を広げた」と言った。広辞苑ではほらを吹く、できもしないことを言うことだと書いてある。
首相 私が初当選した直後に、ある新聞が「永田町乗っ取り作戦」と書いた。当時、私は5人の政党に属しており、永田町を乗っ取るなんてことはまさに大風呂敷を広げたことになる。しかし30年後に実現できた。そう簡単にはできないが、やりたい、やらなきゃ駄目だと思うことを広げるのが大風呂敷だ。
◆政治とカネ
石原氏 民主党の小沢一郎元代表を証人喚問し、疑惑を国会で解明すべきだ。
首相 小沢氏本人が、国会で決めた決定にはいつでも従うと記者会見で言っている。国会の手続きもあるし、本人の意向もある。正式な提案があれば、本人の意向も確認し、対応を協議したい。
石原氏 首相はかつて自身の著書で、「自分の党の議員が疑惑を持たれているなら、党首として何らかの措置を取るべきだ」と書いている。
首相 首相の立場になり、一つ一つの言葉や行動が従来よりも非常に大きな影響、時には自分が考えることとは違った影響を与えることもありうる。私が消費税のことで、議論しようと言ったつもりが引き上げようと言ったように表現されてしまうとか、いろいろあるので、若干慎重な表現にとどめているかもしれないが、基本的考えで特に変わったつもりはない。
◆緊急総合経済対策
石原氏 子ども手当、高速道路無料化、農業の戸別所得補償制度をはじめとするばらまきをやめるべきだ。
首相 景気、経済成長、財政健全化など全部で五つの項目があると提起している。誰が、どの党が政権を取ろうと避けて通れない問題だ。議論して、熟議の中から方向性を、合意を目指す。私たちも努力するが、野党の皆さんにも改めて努力をお願いしたい。
◆中国漁船衝突問題
山口壮氏 中国をどうとらえるか。
首相 経済的に新興国代表のような形で大きくなりつつあることは認識している。同時に、国際社会でも国際的なルールを踏まえ行動してほしい。大きな国は国際的な責任も大きなものになる。
石原氏 尖閣列島固有の種である尖閣モグラが絶滅に瀕(ひん)している。調査のために上陸を許可すべきだ。
仙谷氏 02年に小泉内閣で、原則として何人も上陸を認めないとの方針を決めた。安倍内閣でも答弁書として閣議決定している。菅内閣もこの方針を踏襲している。
石原氏 「弱腰外交」「軟弱外交」と思われかねない。
仙谷氏 柳腰というしたたかで強い腰の入れ方もある。大国として台頭しつつある中国と、戦略的な互恵関係という中身を豊富にしつつ、付き合っていかざるを得ない関係だ。しなやかに、したたかに対応していく。
石原氏 処分保留のまま船長を釈放した決定は、検察の判断だと信じる国民は一人もいない。
首相 釈放は、検察当局が諸般の事情等を、総合的に考慮したうえで国内法に基づき粛々と判断したものと理解している。
石原氏 那覇地検の検事正と検事総長の話を聞かざるを得ない。
中井洽予算委員長 国会でそういう例がなかった。実例も含めて十分調べて議論させてほしい。
石破氏 なぜ首相は、ASEM(アジア欧州会議)に中国語の通訳を同行させなかったのか。中国の温家宝首相は日本語の通訳を連れてきていた。
首相 最初から温首相との会談を何としてもセットするようにと指示はしていない。ワーキングディナーの会場から出た折に、温首相と同じ方向に歩いていて、目と目が合い、「ニーハオ」ぐらい私も言えるので話をして、廊下のそばの椅子に座った。双方に何人かのスタッフがついていた。英語の通訳2人を挟んで基本的な話をし、しっかりとコミュニケーションできた。
石破氏 船長逮捕が重大な外交問題に発展するとの認識はあったか。
仙谷氏 外交問題になるということは、当然予測していた。
石破氏 船長釈放は、公判を開けないと決定したに等しい。
仙谷氏 事実上、そういうことになるだろうと思う。
石破氏 実効支配を強める努力をすべきだ。
前原誠司外相 我が国固有の領土との前提で、これからも実効支配を続ける。どういう体制が必要かは、政府内でも当然検討していく。
◆雑誌の撮影問題
河野太郎氏 高価な服を着て、商業雑誌のカメラの前でポーズをとれば、商業目的と言われても仕方ない。撮影でギャラや着ていた衣装をもらったことはないか。
蓮舫行政刷新担当相 苦言は真摯(しんし)に受け止める。撮影の場所が不適切との指摘があれば、おわび申し上げる。ギャラ、洋服はいただいていない。
◆天下り
河野氏 民主党政権発足から全省庁1590人に早期退職勧奨が行われたが拒否したのは2人だけだ。
片山善博総務相 私自身が公務員をしていた時の印象から言うと、何らかの以心伝心、問わず語りはあったのではないかと推測はされる。
河野氏 国家公務員法改正案が出るのは来年の通常国会だ。半年間の空白があるが人事案を出さないのか?
蓮舫氏 現段階で人事案を提出することは考えていない。ただ、再就職あっせん規制に違反する行為を監視する中立の第三者機関を立ち上げる必要がある。3代以上天下りが続いていると思われるところは総務省で調査している。
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◆質問者 敬称略、質問順
■民主党
城島光力
山口壮
川内博史
■国民新党
下地幹郎
■自民党
石原伸晃
石破茂
河野太郎
毎日新聞 2010年10月13日 東京朝刊