「失望した」「プラハ演説は何だったのか」--。「核兵器のない世界」を目標に掲げたはずの米オバマ政権下で実施された核実験に、被爆地・長崎、広島では13日、落胆と怒りの声が上がった。午後には被爆者らが長崎市の平和祈念像前で抗議の座り込みをした。
5月に米ニューヨーク市で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて渡米し、核廃絶を訴えた長崎原爆被災者協議会会長の谷口稜曄(すみてる)さん(81)は「核兵器廃絶運動をしてきた被爆地や被爆者に対する裏切りで、ノーベル平和賞まで受賞して、あれはいったい何だったのか。米国は被爆者に対し、どう謝罪するのか」と怒りをあらわにした。
一緒に渡米した長崎原爆遺族会顧問の下平作江さん(75)も「オバマ大統領は核のない世界を実現してくれると信じていたのに」と落胆した様子。「核兵器に遭遇すると息絶えるまで苦しまなければならない。私たちが次世代に被爆の実相を伝えなければ」などと語った。
「オバマ大統領のプラハ演説を無にし、ノーベル平和賞に反するもの。ノーベル賞を返還すべきではないか」。ヒロシマ・ナガサキの被爆証言を収集している「長崎の証言の会」代表委員、浜崎均さん(79)は厳しく批判する。「大統領は『核兵器のない世界』は国益のため、テロ根絶のためとしていたが、核兵器は非人道的なものとして廃絶に取り組んでほしい」と訴えた。
一方、核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ実行委の平野妙子さん(56)は「軍部や軍事産業をすぐに導けるものではなく、大統領も厳しい状況。しかし『核兵器のない世界を目指す』という大統領の発言はやはり意味がある。矛盾をはらみながらも理想に向かっていることは確か」とわずかな希望に託した。
2010年10月13日