「どうしてくれる!?」クレーム担当者の奮闘日記

○月△日 午前
詐欺師たちの攻撃パターン

 「お知らせした通り、詐欺による被害が発生しました」。私の第一声に、店長たちはみんな緊張した表情だ。「悪質なクレーマーもそうですが、いわゆる詐欺師は、あるパターンでクレームを付けてきます」。私はそう言って詐欺師の手口は5つの段階に分かれていると説明した。その手口は以下のようなものだ。

第1段階:ミスを指摘する(=でっち上げる)
 「料理に髪の毛が入っていた」「イスにソースが付いていたので服が汚れた」などと、クレームの口実を作って相手を非難する。でっち上げの場合がほとんどだが、この時点で普通のクレームと見分けるのは難しい。

第2段階:脅す
 「世間に知れたら店が潰れるぞ」「上司にバレたらお前はクビになるぞ」などと「ミス」が重大なもので、このままだと取り返しの付かない事態になると強調する。相手に罪悪感を感じさせることで、正常な判断ができないパニック状態に追い込む。

第3段階:慌てさせる
 すぐに店を出ないと出張に間に合わないから「今決めろ」など、上司と相談させず、その場で1人で考えるように追い込んでくる。冷静な判断ができないパニック状態を継続させるのが狙い。

第4段階:「今なら許す」と言う
 さんざん店側を非難していたのに、「今ここで誠意を示せば、許してやる」と、それとなく金品を要求してくる。詐欺師が要求する金額は、すぐに支払えるポケットマネー程度のケースが多い。

第5段階:安心感を与える
 その場を逃れたい一心で、詐欺師の言いなりになってしまった被害者を「お前の決断で店は救われた。お前は立派だ」などと、今度は持ち上げる。被害者側(=飲食店スタッフ)には「許してもらえてよかった」とだまされたことにさえ気が付かない人も多い。

 この5段階はA君の先日の事件にも、ほぼそのまま当てはまる。「普通のクレーム客と詐欺師を瞬時に見分ける方法はありません。ただし、詐欺師たちはほぼ間違いなく、今お話しした5つの段階を踏んで、みなさんを追い詰めてきます。そこが普通のクレームとは違う点です」と私。

 「でも、どうすれば?」とA君。

 「違和感を感じたら、『上司と相談させてください』『原因をきちんと究明する時間をください』と言うなど、とにかくその場でクレームを解決しようとはしないことです。詐欺師は、連絡先や氏名を聞いても本当のことは言えないですからね。万が一、連絡先を言ってきても、納得がいかないクレームなら毅然とした態度で臨んでください」。そう言って私は話を終えた。

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